まだ国会は開幕していないため石破氏は総理大臣ではないのだが石破政権と内閣の陣容が決まったそうだ。高市早苗氏は政権から距離を置いており一部には「高市早苗氏は離党して「自分たちのための」自民党を作るべきだという声がある。メリットとデメリットを考えた。
メリット
まずメリットだが「都市に住んでいる人たちと現役層」を代表する明確な政党ができる。この2つが重なるのは彼らが「仕送りをする立場」だからである。つまり日本には仕送りを受ける人達と仕送りをする人たちの分断がある。仕送りをする側は社会全体で仕送りを負担する。それはやがて相続という形で戻って来るのだから相続する財産がない人たちは「送り損」である。この構造的欠陥が現役層の不満の原因となっている。
また彼らは「バブル期以前の日本は輝いていた」という自慢混じりの神話を聞かされて育っている。そもそも彼らは昭和・平成前期に何があったかを知らない。このため「かつての輝いていた日本を取り戻したい」という神話めいた願望を持つ。ただし「どうすればかつての日本を取り戻せるか」はわからない。そもそも輝いていた日本が実在していたのかも含めて何も知らないからだ。
つまり高市早苗氏が新しい政党を作り、総裁選で高市早苗氏に投票していた人たちが追随すれば「取られる側・盗られる側」の人たちが「かつての栄光」を取り戻すための戦いに着手できることになる。自分たちにアイディアがなくてもアイディアを持ったリーダーさえいれば運動が始められるのである。
デメリット
ではデメリットはなにか。
国会議員は「自分が選挙に受かるかどうか」と「当選後にいい地位が得られるか」を総裁選びの基準にするだろう。高市氏が自民党を割って出てもその政党が政権政党になることはない。立憲民主党などの野党が存在するからだ。つまり、石破自民党・高市自民党・野党という三極構造になる。仮に野党が連合した場合、単独過半数を持つ政党がなくなってしまう。だから自民党の国会議員たちには高市自民党を作るインセンティブがない。
「ネット保守」が安倍自民党を支援したのは自民党が政権政党だったからである。政策を元に政権が入れ替わる欧米とは異なる特徴が日本にある。そしてこれは「錦の御旗」という非科学的な概念を導入しないと説明ができない。憲法は「主権者は国民である」と宣言しているが実際には「誰が錦の御旗を持っているか」が重要になる。
伝統的な日本の序列は天皇が作っている。そしてその序列を申請できる主体が江戸幕府しかない。つまり日本の政治は大掛かりな「垂簾政治」だった。天皇は御簾(みす=すだれ)の裏に隠され幾重にも隠蔽されておりほとんどの国民はその存在を知らなかったとされる。これを表に引っ張り出して「江戸幕府に正当性がなくなった」と宣伝したのが明治維新の始まりだ。このときに象徴として使われたのが天皇を象徴する菊紋をあしらった錦の御旗だ。
こうした事情を考え合わせると高市早苗氏が仮に外に政党を作ったとしても何らかの錦の御旗を作らない限り追従する人はさほど多くなく国民からも支持されないだろうということになる。
支持者が離反するか・内側から変質するか
もっとも危惧されるのが内部での錦の御旗争奪戦だろう。つまり「自民党の中で自民党を取り戻せ」運動が起きる可能性がある。アメリカの共和党でも似たような動きがあった。もともとティーパーティと呼ばれる草の根運動があったがメインストリームとはみなされてこなかった。ところがトランプ氏の「偉大だったアメリカを取り戻せ!」運動が起きると共和党はトランプ氏に席巻されてしまう。
日本ではアメリカの様な極端なことは起こらないと感じる人も多いのだろうが、地方の人口はやがて減って行き「仕送りをする側」の人たちが増えてゆく。さらに言えば日本の資本は企業を通じて海外に流れて行きそこで蓄積している。これが「内部留保」で厳密には海外で稼いで海外で投資されている。
石破政権は高市早苗氏から距離を置かれた。その後、森山裕氏の意見を聞き入れ「高市さんを支援した麻生太郎氏を最高顧問として迎えます」ということになった。つまりこれを通じて「高市さん(とその支持者)を繋ぎ止めよう」としているのである。だが、そもそも麻生太郎氏と高市早苗氏の結びつきはそれほど強いものではない。今後ネット保守の人たちが石破新体制の人事にどう反応し、石破政権に対してどの様な反応を示すのかに注目したい。
つまり、
- 自民党支持者の一部が離反する
- 自民党が内側から変質し乗っ取ってしまう
- このまま黙って取られる側であり続けるか
という選択肢があるということになる。
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