高市氏の離反と実現しそうにないアジア版NATOについて書いたので、そこからこぼれたものをアップデートする。
何を軸にまとめようかなと考えたが「結局古い体制に飲み込まれてしまったなあ」と感じたのでそれを軸に人事をご紹介することにした。
麻生氏の影響力が削がれ菅氏が副総裁に就任する。財務大臣も麻生派から引き剥がす。「選挙って怖いですね」とまとめても良さそうだ。林官房長官の留任から岸田派も影の勝者となっていることがわかる。
結局「改革」風が吹いていたのは総裁選までと言うことになった。あとは小泉選挙対策本部長のもとで「改革風味」を匂わせつつこれまで通りのドロドロした自民党政治が続くことになりそうだ。
まず選挙対策本部長に小泉進次郎氏が就任する可能性がある。これまでも選挙の応援隊長的な役割を果たしていたが引き続き同じ役割が期待されているのだろう。地方巡業の日々が続きそうだ。総裁選を通じて小泉進次郎氏の商品価値は大きく下がっているはずで小泉氏にとっては過酷な役割になるのではないかと思う。
本来、選挙対策本部長は公認調整の要になっている。政治とカネに付随する「裏金議員の処遇」に小泉氏が影響力を持つとは思えない。そもそも各地で保守分裂が起きておりこれを事実上誰がまとめるのかがよくわからない。
幹事長は森山裕（ひろし）氏の起用が噂されている。人間関係の構築が苦手な石破茂氏を補完する人選といえそうだが党内野党（皮肉なことにこれまで石破茂氏が担っていた役割）になりそうな高市早苗氏との仲はおそらく険悪。そして高市氏は多くの党員票を獲得しており「次の総理」の有力候補だ。却って火種になりそうな気もする。
政調会長には防衛問題で石破氏と意見が近い小野寺五典氏の名前が出ているそうだ。予算委員長もつとめており取りまとめ力は期待できそうだ。と同時に石破氏が自身の防衛・安全保障政策に本気だと言うこともわかってきた。
意外だったのが「副総裁」人事である。菅義偉氏の名前が挙がっているそうだ。麻生氏が副総理から副総裁になったときには実権がないと言われていた。つまり菅氏に実権がないポストをあてがったことになる。となると意味するところは明白だ。副総裁が2名にならない限り「麻生氏から菅氏に後見人が変わった」と示す意味合いが感じられる。選挙とは残酷なものだ。ただし、現在の報道は「打診」であり菅義偉氏が受けるかどうかは伝わってきていない。あくまでも石破氏の意思を示したというところなのだろう。産経新聞は「菅氏も前向きだ」と報道している。
今回の石破総裁の誕生には岸田派が大きく貢献したと言われている。林芳正氏が「官房長官として再雇用」されることになりそうだ。今後の組閣でどの程度岸田派が処遇されるかが注目ポイントとなる。
もう一つ意外だったのが財務大臣ポストである。官房長官と財務大臣は総理大臣が決める。つまり石破さんにはまだ権限がない。にも関わらず旧茂木派の加藤勝信氏の名前が出ている。加藤氏は菅義偉氏のもとに参集し「岸田おろし」に参加したメンバーの一人だ。また旧茂木派にも関わらず茂木氏を支援せず自分が立候補した。これまで財務大臣は麻生氏と鈴木氏が勤めており「麻生派」の定席だった。ここまで露骨なことをするのだなあと感じた。
このように人事を見る限り「かなり露骨な麻生派おろし」が行なわれている。刷新感を演出し「自民党は挙党態勢で生まれ変わります」と言ったのはわずか１日だけだったことになる。
気になるのは福岡県で麻生氏と争ってきた武田良太氏の処遇である。二階派の動向が全く伝わってきていない。武田氏は菅氏主導で岸田おろしのきっかけになった会食に萩生田氏（こちらも動向が伝わってきていない）とともに呼ばれている。このあたりは「10月１日以降のお楽しみ」なのかもしれない。
石破氏は麻生氏だけを孤立させたかったのだろうが、高市氏とその周りにいる人達を囲い込むことはできなかった。高市氏には大勢の支持者が付いており「本来の自民党を取り戻す」動きが起きるかもしれない。また自民党の外にいて女性の人権の象徴となりそうな「夫婦別姓」が議論されなかったことに憤りと苛立ちを感じる人達もいる。
こうした勢力は直近の総選挙にそれほど影響を与えることはないのかもしれない。だが、内向きの権力闘争とはまた違ったところで別の化学変化が起きているのが今回の総裁選挙の特徴といえる。
党内基盤がほとんどない石破氏にこれらの勢力について考える余裕はなさそうだが今後の政権運営に少なくない影響を与えるのではないかと思う。
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