トランプ氏陣営が国営アーリントン墓地で職員を突き飛ばし罵声を浴びせたそうだ。アーリントン墓地は日本で言う「千鳥ヶ淵」にあたる。中には「いや、魂の眠る場所と言えば靖国神社だ」と主張する人もいるかも知れない。日本人の感覚的には選挙キャンペーン映像を本来は神聖であるべき場所で撮影したという事案だが、アメリカ人有権者の中にはそれでもトランプ氏を応援する人が大勢いる。
トランプ氏の狙いはアフガニスタン撤退の失敗を強調しバイデン大統領を貶めることだったようだ。
トランプ氏はハリス副大統領に追い込まれて焦っている。自己愛の強いトランプ氏は「自分こそが本来大統領であるべき」と考えると同時に「そうならないのはすべて民主党のせい」と恨みを募らせる。自己愛性が強い人は「では本来はこう有るべきだと言う姿勢を顕示しよう」と考える。
SNSには攻撃的な投稿が連投されているが、トランプ氏はこれを「自分の正当な権利」と主張している。
今月、自身が所有するニュージャージー州のゴルフクラブで開いた記者会見では、「私には個人攻撃をする資格があると思う」「彼女(ハリス氏)をそれほど尊敬していない。彼女の知性にあまり敬意を持っていない。最悪の大統領になるだろう」と述べていた。
トランプ氏、政敵とみなす人物への報復呼び掛け SNSに相次ぎ投稿(CNN)
トランプ氏はそんな「キャンペーン」の一環としてアーリントン墓地を訪れた。バイデン大統領のアフガニスタン撤退によりアフガニスタンの治安は総崩れしタリバンの台頭を招いた。空港はパニックになり大勢が逃げ遅れて亡くなっており怪我人も出ている。バイデン政権下最初期に起きたつまづきはやがてプーチン大統領に刺激を与えウクライナ侵攻の意思決定に影響を与えたと言う人もいる。
トランプ前米大統領の選挙陣営が今週アーリントン国立墓地を訪れた際に、新たな論争を巻き起こした。墓地訪問は大きな混乱を招いた2021年のアフガニスタン駐留米軍撤退に注目を集める意図で行われた。
トランプ氏のアーリントン国立墓地訪問、新たな論争に 墓地職員が撮影制止か(CNN)
アーリントンではSNSに投稿するためのプロモーション撮影のようなことが行なわれたようだ。「国営施設を使ったお騒がせYouTuber」みたいなものだが、大量の寄付金が用いられている。
花輪の贈呈は一般的に大統領の仕事と考えられており共和党の候補者とはいえ私人に過ぎないトランプ氏がこれを行うのは不適切である。また軍の墓地での政治活動はもちろん禁止されている。トランプ氏はあえて「本来は自分こそが大統領であるべきなのだ」と考えているのではないか。
アメリカ国民はすでに冷静さを失っており、トランプ氏の大統領ごっこを支持する人が大勢いる。大統領選挙では継続的に民主・共和両陣営の敵意が増幅され続けており収まる気配がない。
ハリス陣営は共和党からの「外交的に弱腰」批判に敏感になっており「アメリカは世界一強い国であり続ける」と支援者に約束している。
仮にこの主張が事実であれば良いのだが「アメリカの国際的立場は変化した」と国民に訴えかけることができなくなっており現在の外交政策の行き詰まりを有権者に説明する機会が失われている。このため結果的にイスラエルは暴走している。さらに最近ではウクライナも「ロシアを攻撃するのは正当な権利である」と主張し始めた。
これはアメリカ合衆国の納税者にとっては法外なコストを支払ってもこれらの同盟国の暴走にコミットすることを意味している。結果的に冷静さを欠いた相互攻撃はアメリカ国民に本来は支払う必要がないコストを押し付けていると言えるのではないだろうか。