ざっくり解説 時々深掘り

「ハリス氏は含み益に課税しようとしているらしい」の真偽

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

SNSのXに「ハリス氏は金融資産含み益に課税しようとしている、けしからん」という投稿を目にすることが増えた。これは事実だがほとんどの人には関係のない話だ。日本の一部にトランプ陣営の主張を鵜呑みにしている人たちがいることがわかるが原典にあたる人はごく少数なのだろう。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






ハリス氏が金融資産の含み益に課税しようとしているらしいという噂が流れている。日本語で記事を確認したところ暗号資産系のメディアなどで取り上げられていた。

アクシオスが「確かにそのような話はあるが適用されるのはごく一部である」と言う内容の記事を書いている。「含み益」ではなく「実現していないキャピタルゲイン」と表現されているために検索するのが難しいのかもしれないし、そもそも「オリジナルを確認してみよう」という人が少ないのかもしれない。

The bottom line: In the unlikely event this becomes law, it’s a much smaller deal than the likes and retweets would have you believe.

The reality of Kamala Harris’ plan to tax unrealized capital gains

この話には色々と興味深い点もある。

そもそもこれはアメリカの話であって日本には関係がない。だが日本にはインテリや進歩派に反発心を持った守旧派が大勢いる。彼ら守旧派は潜在的に反民主党・親トランプである。潜在的にポピュリストが蔓延しやすい土壌はあるが、自分たちから進んで行動を起こすことはないという受動的サイレントマジョリティが多いのも特徴だ。これが民主党系の大統領候補に対する反発につながるのだろう。

また、英語が苦手という人が日本の新興ネットメディアを通じて断片的な知識を得ていることがわかる。株価はいつまでもどこまでも上がり続けると信じ8月の株価ショックで振り落とされたような「信用買い」の人も多かったが反省の色は見えない。

こうした環境は、これから投資を始めようと言う人にとっては難しい状況をもたらす。

自分が接しているメディアがあまり信頼できないメディアなのか信頼できる伝統的なメディアなのかが区別できない。また、伝統的なメディアとされる日経新聞が実は積極投資の機運を作るキャンペーンを行っていたり、地上波や大手メディアがアメリカの伝聞報道に終始するという事情もある。つまり伝統的なメディアだから何でも額面道りに受け取って良いということにはならない。

アクシオスは進歩派色が強いのでハリス陣営に都合の良い内容しか流さないのではないかと懸念する人もいるだろう。それはそのとおりだ。おそらくこの記事にはネットに流れている共和党のキャンペーンに対抗するという意味あいが含まれているのかもしれない。

ハリス氏の経済政策にはいくつかの問題があるとBloombergは指摘している。

  • ハリス氏の政策は連邦政府に新しい負担をもたらす。
  • ハリス氏はこれを富裕層や大企業への課税で賄おうとしているが議会承認が必要なため民主党が議会選挙で大勝しなければ実現が難しい。
  • また、連邦政府による価格抑制は「共産主義的だ」という感情的な批判にさらされる上にエコノミストたちも評価していない。

つまり民主党がすべての選挙で大勝しなければ財政赤字が増えるかそもそも何もできない可能性が高いということになる。またハリス氏の価格抑制策はアメリカの伝統的な自由主義の価値観にそぐわないうえに価格や需要に連邦政府が介入すると市場原理が歪められ副作用が生じる可能性がある。

そもそも「ハリス氏の経済政策よりもトランプ氏の経済政策のほうが信頼できる」と考える人も多い。新型コロナ禍対応のための政府の財政政策は過度なインフレを招いた。バイデン大統領は「インフレなどない」と否定し続けたためFRBの対応も遅れた。FRBが利上げを検討し始めたところ投資家たちは「嵐が来る」と大騒ぎしパウエル議長を批判していた。

このため、アメリカ人の中には「インフレはバイデン大統領によってもたらされたがバイデン大統領はインフレ対応に失敗した」と考える人が多い。ハリス氏はバイデン大統領の副大統領なのだから当然「ハリス氏にも一定の責任がある」と考える人が多いのだ。ハリス氏は残りの期間でこうした疑念に対応してゆかなければならない。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで