ハリス副大統領の大統領キャンペーンが始まった。ハリス氏の作戦は2つある。まず重罪人トランプ氏に対する検察官になると宣言した。蓮舫氏が「小池都政の行政レビューを行う」と宣言したのに似ている。次にJDバンス副大統領候補の「ハリス氏は子供を産んだことがない」発言を宣伝している。これは小池百合子氏が「厚化粧だ」と揶揄されたことで人気を集めたのに似ている。日米とも女性政治家の状況は似てくるのだなと感じる。東京都知事選挙は直接「組織のトップ」を選ぶため、アメリカの大統領選挙と状況が似るのかもしれない。
カマラ・ハリス副大統領はもともとカリフォルニアの地区検事から州の司法長官になった経歴を持っている。この経歴を活かしてトランプ氏の告発人の役割を果たすとしている。民主党支持者たちはトランプ氏への懲罰感情を募らせている。この声に応えて「私がトランプ氏を成敗します」と宣言した。
これは行政組織の運営経験に乏しい蓮舫参議院議員(当時)が行政仕分けの経験を頼りに都知事選に切り込んでいったのに似ている。この戦略は都知事選挙では不発だったが、ハリス氏には追い風になっているようだ。世論調査では軒並みトランプ氏を上回る支持を獲得している。副大統領時代の支持率はあまり高くなかったようだが「対トランプ」で支持率の向上に成功しているのだ。民主党が持っているトランプ氏に対する懲罰感情の高さがわかる。
もう一つがJDバンス副大統領候補の過去の発言である。2021年のFoxニュースのインタビューだそうだ。同性愛者に対しても「生産性がない」という発言を行っている。これは女性や同性愛者たちの被害者感情に訴えハリス氏への支持に繋がる可能性がある。特に接戦州近郊に住んでいる女性たちの掘り起こしにつなげることができればハリス氏に有利になる。
ヴァンス氏はFoxニュースのインタビューで、「自らの人生と選択に惨めな思いをしている、子どもを持たずに猫ばかり飼う女性たち」によってアメリカが運営されていると語り、そうした女性たちが「この国の他の人々をも惨めにしようとしている」と持論を展開した。
「子なく惨め」J.D.ヴァンス氏の過去の性差別発言、再び批判の的に。「出産した米大統領はいない」の声も(ハフポスト)
続けて、ヴァンス氏はカマラ・ハリス副大統領や、同性愛者であることを公表しているピート・ブティジェッジ運輸長官、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員の名前を挙げて、「民主党の未来は全て、子どものいない人々によってコントロールされている。私たちの国を、直接利害関係のない人たちに委ねて良いのでしょうか」と発言した。
「子なく惨め」J.D.ヴァンス氏の過去の性差別発言、再び批判の的に。「出産した米大統領はいない」の声も(ハフポスト)
都知事選の場合、被害者意識を高めていた女性や若者たちの感情は選挙後に拡大した。だが選挙後にいくら被害者意識を高めても「後の祭り」である。大統領選挙はこれから行われる。実は選挙戦を通じて被害者感情を掘り起こすのは有効な対策なのかもしれない。
ただしこの戦略にはもちろん副作用もある。本来話し合われるべき行政経験と政策の議論がおざなりでいい加減なものになる。
実はハリス氏には十分な政治的実績がない。一時はバイデン大統領は中継ぎに過ぎずハリス氏に禅定するのではないかと言われていた。バイデン氏が考えを変えたのか、あるいはハリス氏では不安だと感じたのか、単に外交問題が積み上がりその時間がなかったのかなどはわからないが、結果的にハリス氏が表舞台に出ることはなく、したがって行政組織の運営経験をアピールすることはなかった。
2021年にハリス氏の行政組織経験を疑問視する記事が出ている。スタッフの辞任が続いたという内容でハリス氏の行政官としての能力に疑問を投げかける内容だ。
今回バイデン大統領は「急に」大統領候補を降りたがその後の選挙運動とき不厚めの立て直しは迅速だった。裏では着々と名義書換の準備が進んでいたのではと指摘する声もある。つまり随分前からハリス氏は民主党のプランBだったわけだ。そしてその本戦略は「政策ではなく懲罰感情と被害者感情に訴える」ものだった。
仮にハリス氏が民主党支持者のトランプ氏に対する懲罰感情とバンス氏に対する被害者感情によって新しい大統領になってしまうと、政策の中身がよくわからず行政府の管理能力が乏しい人が大統領になってしまう可能性があるということになる。
だがそれでも「子供を産まない女は惨めだ」というメッセージが持つインパクトは極めて大きい。この発言は今後何度も引き合いに出されるだろう。
神格化が進んでいたトランプ氏だが暗殺未遂事件から1週間後には元の「悪口トランプ」に戻ってしまっている。さらに一部では共和党が勝てばアメリカは「トラス化が進むのではないか」などと囁かれ始めた。
どちらが勝っても何らかの困難に直面する可能性がありそうだが、とりあえず大統領選の図式はハリス氏が誰を副大統領候補に指名するかで固まり11月の本選に向けて走り抜けることになりそうだ。
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