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トランプ氏にキリストの再来を見る共和党支持者

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バイデン大統領が大統領選挙を撤退した。これについて記事を3つ書いている。民主党は今後トランプ氏に代わる候補者を8月の党大会間までに見つけなければならない。このためにはトランプ氏に対抗できるような合理的な政策を提示する候補者を見つけるべきだ。だがトランプ氏の支持者たちが望んでいるのは合理性に欠ける「より強いアメリカ経済」だ。だから、合理的な説得ができない。

つまりこのまま宗教的多幸感に包まれたアメリカ合衆国は「一度その路線を試してみる」しか道がないということになる。わかりやすく言えば一度痛い思いをするしかないということだ。

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トランプ陣営は今や合理性を遥かに超えた「宗教的多幸感」に包まれている。トランプ氏と共和党議員たちが人工的に作った危機はもう間もなく解決する。神の恩寵に護られたトランプ氏がここに再降臨したからである。

トランプ氏が選挙戦を再開した。「「民主主義の身代わりに撃たれた」とトランプ氏 銃撃後初の集会」とCNNが伝えている。明らかに、キリストの死と再生がモチーフになっている。自分は一度殺された人間だが神の恩寵によって蘇ったと主張しているのだ。聖書のこの話を聞いたことがないというアメリカ人はいないだろう。

確かに、ここまでは極めてキリスト教的である。

だが、トランプ氏の主張は「世界には正と邪がある」という極めて二元論的な世界観で構成されている。民主党批判をJDバンス副大統領候補に任せて自分は偉大な大統領を目指すのかと思われたのだが、暗殺未遂事件から1週間も経たないうちに地金が露呈した。民主党の悪口を言い、習近平国家主席からの「美しい手紙」をもらったと発言している。トランプ氏は中国を敵視しているが自分を思いやる手紙だけは「善いものである」と考えている。極めて自己愛の強い性格なのである。

アメリカを支配する根深い二元論は「自分たちは特別な存在だ」という二元論に支配されている。

だが、本来のキリスト教にはこのような二元論的な性質はない。むしろユダヤ教のラビたちから蔑まれている人々の中にこそ本当の神の存在を見たなどと考える傾向が強い。すべての中に神を見るのが本来のキリスト教である。善によって世界を統合するというのがキリスト教の教義だ。

ではなぜこのようなことになったのか。

Quoraで議論になった。理由は2つあるように思える。まずトランプ氏は教会に通う習慣がない。大統領に就任していたときに教会に行った回数を数えた人がいる。14回だったそうだがそのうちの1回は写真撮影だった。キリスト教も自己演出の手段に過ぎないのである。

キリスト教はもともと厳密に教義を管理していた。何度も「公会議」を開き異端を排除し教皇のみが教義を決めることができるという中央集権的な教会組織を作り上げる。これが現在はカトリックと呼ばれている。

しかしながらアメリカの福音派は教皇権威を否定し「信徒が民主的に」教義を定めることができるとしている。もともと迫害から逃れてきた人たちの子孫が作った国なので次第に邪なものからアメリカを護るという「正邪」という考え方が紛れ込んでしまったのかもしれない。さらにアメリカは神に護られた国であるという自己像が肥大化し自己愛性の国家が作られた。

日本では創価学会が同じような経路をたどっている。もともと日蓮宗は折伏を行う戦う仏教だった。だが、ついにある信徒集団が日蓮正宗から破門された。しかし派もされた創価学会は公明党という政治組織を作り今では与党の一員となっている。今でも公明党に警戒心を持つ人がいるのはかつて彼らが強引に信徒獲得と党勢拡大に邁進していた頃の記憶を持っている人が多いからだろう。

厳密に考えるならばアメリカの福音派は教会ではなく信徒集団であり過激化する可能性があるということだ。

いずれにせよ現在の共和党党大会は宗教的な多幸感に満たされている。

では彼らは一体何を目指しているのか。

アメリカの経済は絶好調なのだがニュースを見ると国境から移民が押し寄せていて民主党の支持者たちは自分の権利ばかり主張しキリスト教的伝統を破壊しつつある。このままでは自分たちの暮らしが破壊されるかもしれないと考えたとき、共和党支持者たちは「アメリカの経済をもっと強くすればよいのだ」と考えた。合理的に考えるとこれは単にドル高とインフレをもたらすのだが「普通のアメリカ人」にはそれが理解できない。

と、考えると民主党は8月の大統領候補指名から11月の本選挙に向けて(全米ではなく)スウィングステート(接戦州)で「この考えは間違っている」と証明できる候補者を選ばなければならない。おそらくそんなことは不可能なのだから、共和党支持者たちは一度実際に彼らが何を望んでいるのか身にしみてわかるまでやってみるしかないということになるのかもしれない。

善による統合を主張しつつ「世界は美しいものと邪なものに分かれている」と考える二元論的志向はついに「誰か有名人を撃ち殺してやろう」と考える20歳の若者を生み出した。トーマス。マシュー・クルックス容疑者のスマホにはバイデン大統領、司法長官、FBI長官を検索した跡が見つかっているそうだが、政治的な一貫性がなく捜査当局はその動機を掴みかねているそうだ。

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Comments

“トランプ氏にキリストの再来を見る共和党支持者” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    「汝の敵を愛せよ」という有名な言葉があったはずですが、こういうのがアメリカのキリスト教から失われてしまったのでしょうかね。そもそも今の時代には、アメリカに限らず「汝の敵を愛せよ」を実行できる人は少ないかもしれないですね(私自身もこれが出来るとは思えません)。
    「世界には正と邪がある」という二元論を聞くと、日本でも旧統一教会がこういう考え方だったなと思いました(他の新興宗教にも似たような傾向はありますが)。そういえば、トランプ氏は旧統一教会と関係していたなと思い出しました。

    1. 「汝の敵を愛せよ」がすなわち「統合」なんですが、今のアメリカでそんな事を言っても笑われるだけかもしれないですね。