テレ東BIZが独自ネタとして「【独自】全国35カ所の国立公園に高級リゾートホテル誘致、岸田総理が表明へ」という記事を配信した。周囲は「何を唐突な」と感じるだろうが、官邸は「なんて素敵な思いつきなんだ」と考えているかもしれない。まさにホラーである。
なんとなく思考回路はわかる。
岸田総理が総裁選で再選されるには地方の支持が必要だ。とはいえ地方にすぐに新しい産業が誘致できるわけではない。なにか良い手はないか。円安によって日本には大勢の観光客が押し寄せている。だがそれは京都・東京・富士山などの特定の地域に集中している。これを全国展開すれば良い。だったらニセコなんかを模倣した観光施設を全国に展開すれば良い。では国立公園に高級リゾートを誘致しよう。でも政府にはお金がない。ここは民間活力を利用しよう。
2つのマインドセットが見える。
- 政府はもはは10年先のことは考えていない。総裁選までにインパクトが出る「見出し」がほしい。
- とはいえ政府にはお金がないので民間に頼ろうとする。
つまり税金や民間資金を使って明日の票を買うということしか考えられなくなっている。
もう一つ心配なことがある。それは官邸の政策に一貫性がないという点だ。新しい資本主義で所得を倍増する、いやいやそれは投資のことでした、賃金が上がれば経済の好循環が作られる、いやいやどうやらそれは実現しなかったらしい、海外からの観光客が押し寄せている、そうだリゾートだ。
岸田官邸の思いつきの根幹は安倍総理もとで始まった内閣人事局制度だろう。菅官房長官は極めて優秀で人事を掌握して官僚から主導権を奪った。菅総理には菅官房長官がおらず、岸田政権でもこの問題は引き継がれた。
おそらく政府にはそれぞれの知見を蓄えた官僚がいるはずだがそうした人たちの意見が取り入れられているという兆候はない。主導権を奪われた官僚たちは国家運営を自分ごととして考えなくなった。当然有益な情報は上に上がらなくなる。
岸田政権は、安倍派、麻生派。、茂木派、岸田派からなる連合政権だった。しかし安倍派の政治と金の問題により派閥は中途半端に瓦解した。この間をかろうじて取りまとめてきたのが岸田総理の個人的な側近である木原誠二官房副長官だったが自身のスキャンダルがあり内閣官房を離れている。
結果的に官邸は孤立し外の動きが全くわからないなかで「場当たり的なアイディア」がばかりが検討される。内輪では「いや今回はイケるのではないか」という楽観的な空気が満ち溢れているのかもしれないがいちいち発表されるアイディアには連関がなく毎回「え、今度はなに?」と国民を当惑させることになる。
岸田総理は「自分はなんかすごいアイディアを出しているのにマスコミが取り上げてくれない」とご不満なようだ。意外と官邸の中では「今回は画期的だ」という空気が充満しているのかもしれない。
「最近、マスコミから聞かれるのは政治日程ばかりだ」。岸田文雄首相は19日、長野県軽井沢町で講演した際にこう発言し、聴衆の笑いを誘った。報道各社の関心が9月に想定される自民党総裁選や、衆院解散・総選挙の時期に集中する中、思わず「愚痴」をこぼした格好だ
岸田首相、マスコミに愚痴 「質問は日程ばかり」(時事通信)
情報バブルの恐ろしさを感じる。周りから隔絶された官邸では様々な思いつきが「先送りできない課題」と認識されているのだろう。おそらく最も「先送りできない優先課題」は岸田総理の後継問題と官邸の情報バブルの解決だろう。
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