AFPにオランダのルッテ前首相がシューフ新首相に見送られて官邸を去る様子が出ていた。オランダは激しい選挙戦で政権交代がおきたがその後長い間新しい首相が決まらなかったという経緯がある。にも関わらず交代劇はいかにものどかなものだった。ルッテ氏の乗っていた自転車は1300ユーロもするKOGA社製の高級品だそうだ。以前はKOGA・MIYATAとして知られていた。もともと日本製のパーツを使って自転車を組み立てるメーカーだったそうである。意外なところで日本製品が評価されているのだなと感じた。
反移民感情が広がるオランダでは11月に総選挙が行われた。この結果ネットを中心に反移民政策で支持を集めた「極右」のウィルダース党首が率いる自由党が第一党となった。しかし単独で政権を取る事はできず、連立パートナーはウィルダース党首の首相就任は拒否していた。結果的に連立交渉はまとまらず7月になってようやく情報機関(つまりはスパイ組織だ)のシューフ氏が新しい首相となった。諜報機関のトップとして最も国から厳しくチェックされているうえにウィルダース氏の言いなりにならないところが評価されたのだろう。ウクライナの支援についての懸念があったが継続してウクライナを支えると約束し周囲をほっとさせた。
記事だけではよくわからないので自転車で立ち去る様子の動画を探した。周囲をメディアと市民に囲まれているが和やかな形で官邸を去っていったようである。厳密には一週間前の出来事だったようだ。
きちんと鍵を外して自転車に乗っているがそれほど厳重な鍵ではなくごく普通の自転車の鍵をポケットから取り出している。ルッテ氏の新しい職場はNATOになる。事務総長に就任する。次の職場で自転車通勤をするかが注目されているという話も聞く。
ルッテ氏の自転車について言及している日本語の記事があった。KOGAという聞き慣れないオランダブランドの自転車で価格は1300ユーロだそうだ。いっけんかなり質素な自転車のように見えるが意外と高級品といった価格である。
WikipediaによるとKOGAはもともとKOGA・MIYATAというブランドで日本の宮田自転車との合弁企業だったという。提携はすでに解除されており現在はKOGAというブランドで自転車を売っている。KOGAという名前もなんとなく日本風だが創業者夫婦の名字を両方いれたものなのだそうだ。
KOGAのウェブサイトによればKOGA F3は街乗りと長距離ツーリングの双方に最適なシティバイクでケーブルを統合しシンプルなデザインを実現している。なんとなく簡素な自転車に見えるがデザインとメンテナンス性を考慮した考え抜かれた自転車であるとメーカーは宣伝している。
ヨーロッパのすべての国であっさりと政権交代が起きるとは思わないが、イギリスの政権交代も実にあっさりとしたものだった。スナク首相は潔く敗北を認め労働党の勝利をたたえたうえで「陛下の野党として政権監視の役割を果たしてゆく」と野党としての決意を新たにしていた。単に気持ちの問題ではなく毎日新聞によると党首には歳費も支払われるという。毎日新聞は次のように書いている。
「女王陛下の野党」は英国議会の最大野党をいう。党首は次期首相という含みの礼遇を受け、議員歳費と別に報酬もある。
ヨーロッパの選挙戦は熾烈なものだが政権として選択されなかった・選挙で負けたからといって人格や存在まで否定されることはない。課題(政策)と人格は完全に分離されておりそれなりの待遇も受けることができる。長年の激しい権力闘争によって積み重ねられた知恵なのだろう。日本も選挙結果に一喜一憂しその後もいがみ合うような不毛な精神的消耗から脱却すべきではないか。
負けたからと言っていちいち消耗していたのでは政治に関心を持ち続けることは難しくなるだろう。