ざっくり解説 時々深掘り

オリンピック前にフランスの政治が流動化 極右が退潮し急進左派が台頭

Xで投稿をシェア

フランス政治を見ている人たちはこの数週間かなり動揺していたようだ。

フランスの議会選挙の選挙結果が確定し当初懸念があった極右の台頭が防がれた。だが決定的な勝者が出ず三すくみになった上に過激な急進左派も台頭した。

急進左派のメランション氏にとってはまさに棚からぼた餅の状態だ。マクロン大統領はメランション氏との対話を拒否しておりメランション氏もマクロン氏との対話を拒否している。

パリオリンピックまであと3週間弱といったところだがフランスの政治はしばらく落ち着かない状態が続くだろう。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






フランスの議会選挙プロセスはかなり特殊だ。第一回投票で選ばれた候補者3名ないし4名が1週間後に本選を行う。一度選挙をやると1年間は再選挙ができない。一回目の投票では反EU極右の国民連合(以下ルペン党)が躍進した。

ルペン党の躍進に驚いた左派は、メランション氏率いる「不服従のフランス」を巻き込んだ新国民戦線を立ち上げる。ファシズムの台頭に対抗する国民戦線にあやかったものである。

フランスは社会党が政権を担っていた時代があり左派は政権とは無縁ではないが近年では過激な主張を強めるメランション氏に支持者を奪われている。穏健左派は市場主義のもとで社会主義的な政策を実行したいと考えるが急進左派は資本主義そのものに懐疑的なのだ。

結果的に極右ルペン党は単独過半数を維持できず首相を出せなくなった。ルペン党支持者たちはかなり怒っていて暴動も起きているようである。

とはいえマクロン党も左派も過半数を獲得できていない。ルモンドの英語版を引用すると新しい勢力図は次のようになる。左派連合が第一党でそのうちの94議席がメランション氏の「不服従のフランス」によるものだそうだ。つまり左派も一枚岩ではない。

  • NFP Left-Wing-Aliance(新人民戦線・左派連合) 182
  • Macron’s Coalitions(マクロンの同盟) 168
  • RN and Allience(国民戦線とその同盟) 143
  • LR Concervatives(共和党(サルコジ氏が作った政党)) 46
  • Ind. Right(独立系右派)14
  • Inf Left(独立系左派) 13
  • Ind. Center(独立系中道) 6
  • Regionalists(地域主義者) 4
  • Misc(その他) 1

フランスの有権者は極右ルペン党を拒絶する代わりに急進左派メランション氏に大きな発言力を与えたことになる。単独では94議席でありルペン党よりも劣るが「左派連合」としては第一党になる。

マクロン大統領はマクロン党の影響力を維持したうえで左派の一部だけを取り込みたい。だが左派の1/2はマクロン氏を敵視するメランション氏が貢献した議席であり排除は容易ではなさそうだ。

結果的に議会は宙吊りとなり、新しい政権がどのような形になるか、作られるとしたらいつ頃になるかも全くわからない。

パリ・オリンピックを3週間後に控えたフランスの政治はしばらくは混乱が続きそうだ。イギリスの大衆紙SUNは暴動の様子を伝えている。

左派はウクライナ支援継続では一致している。またマクロン氏の退職年齢引き上げの中止や食料・エネルギー価格などの安定、最低賃金のアップなどを求めている。マクロン大統領の財政均衡に真っ向から反対する政策が多く妥協は容易ではなさそうだ。また急進左派は「親パレスチナ」であり「反ユダヤだ」という批判があるそうだ。つまりフランスの対イスラエル政策やパレスチナ国家の認定などにも影響が及ぶ可能性がある。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です