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「なぜ奴隷に金を配るのか」で麻生太郎氏が岸田総理から離反

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国会が終了し岸田おろしの動きが出てきた。主役は2名の総理大臣経験者の麻生太郎・菅義偉両氏である。このうちなぜ麻生太郎氏が岸田総理から離反したのかがわかってきた。おそらく国民を「租庸調(そようちょう)」を黙って収める存在だと思っている。

国家は天皇のものであり臣民は黙ってそれを支えなければならないという考え方なのだろう。非常に伝統的ではあるが古びた考え方である。ただ働いて国家を支えるだけの存在を現代的に表現するならば「奴隷」ということになる。

麻生太郎氏は自民党の中に存在する2つの極端な国家観の一つを代表している。言い換えれば岸田総理はこの2つの国家観の間で揺れていたと言えるだろう。また次の総裁候補も「この2つの国家観」のどちらを選ぶかの選択を迫られることになるのかもしれない。

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岸田おろしの主役として麻生太郎氏の存在が取り上げられることが増えた。マスコミでは安倍総理もできなかったことを岸田氏は軽々と成し遂げたと評価していたが最近では実力に疑問を感じているようだと説明されることが多い。

そもそも麻生氏は岸田さんの何に注目したのか。それは「防衛増税」である。

麻生太郎は初等科から大学までを学習院で過ごした。一度はアメリカに憧れスタンフォード大学に留学するが「汚い英語を覚える」と諭されロンドン大学政治経済学院に留学先を変えている。妹は寬仁親王妃信子は聖心初等科・中等科を経てイギリスに留学経験がある。留学後は松濤幼稚園で英語の先生をなさっていたそうだ。祖父は吉田茂という名家の出身であり「戦前のエスタブリッシュ意識」が非常に高いことがわかる。

そんな麻生氏が「国民は黙って租庸調を収める存在だ」と考えたとしてもなんの不思議もない。子供の時からそう躾けられているのだ。

彼が徴税管理人として見込んだ岸田総理は次第に彼の期待に応えなくなった。麻生氏が怒ったのは岸田総理が派閥を破壊し「政治と金の流れ」を透明化しようとしたからである。

おそらくエスタブリッシュメントの麻生氏は公明党と創価学会を「貧しいポピュリストだ」と考えている。創価学会は農村から都市に流れてきた信徒による互助組織だ。東京や大阪の都市部で比較的貧しい人たちの問題を解決するために政治力をつけていった。気位の高い麻生氏にとってみれば「貧乏なおねだり集団」くらいの位置づけだろう。公明党は今でも「お困りごと相談」を行なっている。イスラム圏で見られる宗教福祉集団に非常に似たことを日本でやっている政党なのだ。

実際に彼が何に怒っているかをNHKがまとめている。岸田総理は麻生太郎氏が期待する「税の取り立て屋」という地位を手放し、あろうことか自民党の集金システムにまで手をつけた。取り立て屋が自民党の特権を破壊するなどあってはならないことだ。

麻生総理はリーマンショック対策として給付金を配ったことがあるが政権浮揚には役に立たなかった。麻生氏としては政権維持のための苦肉の策であり彼の国家観には全くそぐわないものだったことだろう。このため麻生氏はその後一貫して給付金に反対し続けている。

特権を破壊しつつダル岸田総理はあろうことか「票を金で買う」動きまで加速させている。党内からは場当たり的だという批判が出ているそうだが、官邸関係者は「政権不要対策だ」とほぼその意図を認めているそうだ。

ただ酷暑対策と掲げた割に、対策時期が夏季とずれるなど取って付けた印象は否めない。派閥裏金事件への批判が根強い中、今月からの定額減税に続く「物価高対策」で政権浮揚につなげる思惑がありそうだ。官邸幹部は「補助を再開すれば皆うれしいだろう」とあけすけに話した。

麻生氏からしてみれば国民は黙って租庸調を収めて国家を支える奴隷のような存在に過ぎない。彼らは生まれながらに高貴な存在で選別されて育てられたはずなのに薄汚い信徒集団に迎合し金を配って票を買うという卑しい行動に出ている。

麻生氏がこれを許せないのは当然なのかもしれない。

マスコミの関心は次第に次の総裁候補に移っている。そんな中で麻生派に属する河野太郎氏が麻生氏に「総裁選出馬の意欲を伝えた」と報道されている。河野太郎氏は世襲で麻生派に所属していながら菅氏に近いという極めて特殊な政治家だ。元は保守の名家だが父親はそのヘリテージを嫌い「リベラル右派」の政治家になった。河野氏が必ずしも次の総理ということにはならないだろうが、少なくとも麻生氏の新しい徴税取立て人になるかあるいはまた別の道を選ぶのかに注目が集まる。

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