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やっとガザ地区に平和が訪れるのか ネタニヤフ首相のトーンに変化

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ネタニヤフ首相のトーンに変化が見られる。ガザ地区の作戦を段階的に縮小すると宣言した。ただし時期は明言しなかった。ガザ地区の人々にとっては朗報の可能性はあるが専門家たちはさほど喜んでいないようだ。実はイスラエル北部の状況が悪化しており、アイアンドームでも防ぎきれない可能性が出てきた。またイスラエルがいなくなったからといってガザ地区に安定的な政府が作られる保証もない。むしろかつてあったハマスとファタハの紛争が再燃する可能性がある。

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これまでネタニヤフ首相は閣内の極右閣僚に配慮してガザ地区での戦闘を継続させるものと見られてきた。そのネタニヤフ首相がハマスの脅威は取り除かれたから作戦は間も無く終了できると宣言したのだから「これでガザ地区が平和になる」と考える人がいても不思議ではない。日本人は「戦争はいけないこと」「戦争は嫌なこと」という教育を受けている。このため戦争について深く知ることはなく「とにかく嫌なことは終わってほしい」と考える傾向がある。日本は反戦国家ではなく厭戦国家なのだ。

経緯を簡単に説明する。イスラエルは戦争のエスカレーションを望んでいた。アメリカ合衆国を引き入れることができるからである。しかしバイデン政権はそれに応じなかった。

エスカレーションを望んでいたイスラエルがレバノンのヒズボラの司令官2名を殺害したことで報復が激化した。ヒズボラの背景にはイランがいると見られている。アメリカは支援のためにイスラエルの高官を呼ぼうとした。ところがここでなぜかネタニヤフ首相が「バイデン大統領が支援を渋っている」とビデオ声明を出した。ホワイトハウスはこれに当惑し支援会談をキャンセルしている。ネタニヤフ首相は後に「支援の遅れに苛立っただけ」と弁明した。関係者は「アイアンドームはイスラエル北部で脆弱性がある」と懸念を表明している。イスラエルの北部からは避難民も出ている。

ネタニヤフ首相は「管理が難しい状況状態で自分の「ニーズ」を作り政治的な延命やってきた。これがいよいよ制御不能な状態に入っていてイスラエルの国民生活に大きな被害が生じている。

ネタニヤフ首相は限られた兵力をガザ地区と北部イスラエルに同時に展開できない。とはいえ「余裕がなくなったのでガザ地区から撤退しました」とも言えない。そこで「作戦は成功しているからもう必要なくなった」と説明することにしたのではないかと思う。軍もこれに同調している。

ただし行き詰まっているのはネタニヤフ首相と戦争経験のない極右閣僚だけである。ガラント国防大臣がホワイトハウスを訪問しブリンケン国務長官と会談している。ガラント国防大臣がネタニヤフ首相の忠実な特使としてアメリカを訪れているのかあるいは自分の生き残りのために話し合っているのかはよくわからない。

ここまでの資料をまとめる。

さて、こうなるといよいよ「ガザ地区の統治」をどうするかについての議論が出てくる。ハマスは既にファタハと話し合いを始めているが「ファタハのやり方が気に入らない」として話し合いを延期した。イスラエルはハマスの統治関与に反対しているがガラント国防大臣が「軍は戦後統治に関与しない」と表明しており閣内にも意見の相違がある。

ハマス・ファタハの和平協議が延期、双方が非難の応酬(Reuters)

ハマスはもともと福祉団体、軍事部門、政治部門などの混成部隊だ。古くからファタハとハマスは政治的に対立する関係だそうだ。ファタハ腐敗の結果としてハマスが選挙で大勝する。一時は「挙国一致内閣」のためにハニヤ氏がハマスを脱退(幅広い支持を受けるために無所属になった)するが内部抗争は収まらなかった。

ハニヤ氏はガザの独立統治に動くがガザへの入境を阻止された。だが、この措置によりハマスは却って政治や統治には興味を持たなくなり対イスラエル強行路線を歩み始める。ガザ地区で反発が強まると起死回生のためにイスラエルに攻撃を試みた。

イスラエルが撤退すると今度はパレスチナの昔のいざこざが復活するということになる。ハニヤ氏は外国からの支援を支援を受けながら安全地帯であるカタールにいるため「ガザ地区で命がいくら失われてもとにかく自分の政治的名誉を挽回したい」と考えているようだ。時事通信は次のように書いている。民生には興味がないので「(そういう面倒なことは)ファタハが勝手にやればいい」と言い放っている。

ハニヤ氏は約2週間前、カタールの首都ドーハで、ハマスと対立するアッバス・パレスチナ自治政府議長率いる主流派ファタハのメンバーと会談。その際、ガザ統治で民生分野はファタハが担っても良いとする一方、治安分野はハマス軍事部門「カッサム旅団」が引き受けるべきだと強硬に主張したという。

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