2024年6月6日に連合国はノルマンディ上陸作戦から80年の節目を迎えた。バイデン大統領はこの節目を利用して「民主主義を守るために戦うアメリカ」を強調したい。フランスもまた2024年7月26日からパリオリンピックが始まる。ところがフランスではこのところテロ未遂が相次いで報告されている。マクロン大統領は若者に犠牲を求めているがこれが過大なものにならないことを祈るばかりである。
バイデン大統領は国賓としてフランスを訪問した。2024年6月6日はノルマンディ上陸作戦のD-Dayから80周年という節目にあたる。
BCニュースは普通の兵士たちが死闘の末に民主主義を勝ち取ったとして退役軍人の特集を組んでいた。アメリカ市民の間に「普通の国民がコストを支払って守った」民主主義を大切に思っているということがよくわかる。バイデン大統領はアメリカ人が大切に守ってきた民主主義の擁護者として次期再選を目指すという戦略をとっている。ウクライナ支援継続はナチスドイツをロシアに置き換えたものでバイデン大統領にとっては象徴的な意味合いがあるといえる。
そのフランスで相次いでテロ未遂が起きている。まずチェチェン系の男がオリンピックを狙ったテロを計画したとして逮捕されている。反移民感情を背景にした極右が台頭するフランスでは対抗策としてイスラム教徒の伝統的な衣装に対する風当たりがありイスラム系移民とヨーロッパ系住民の間の経済格差も残っている。このテロ未遂はこうした反イスラムに対するカウンターといえそうである。
次にエッフェル塔の近くに「棺」が持ち込まれた。マクロン大統領はウクライナへの派兵の可能性を否定していない。フランスの派兵を警戒するロシアは「フランスが介入すればタダでは済まされない」と警告を発しており、それに関連する動きと見られる。逮捕されたのはブルガリア、ドイツ、ウクライナの国籍を持つ3名だ。このうちの一人はイスラエル軍のガザ戦争に反感を持った反ユダヤ活動家と関係を持っていたと見られている。つまり特定の何かに反対しているというよりはマクロン政権の外交政策そのものに敵意を持っているものとみられる。状況は複雑だ。
さらに今度は爆発物を準備していた男が捕まった。処理に失敗しホテルの一室で爆発させてしまったそうである。ロシアとウクライナの二重国籍者でウクライナのドンバスでロシア側で戦っていたという情報もあるがバックグラウンドはよくわかっていないようだ。
フランスのマクロン大統領も「犠牲の精神」を賞賛しD-Day80周年を祝った。大統領は「今日の若者も先人同様の犠牲の精神を発揮してくれるものと確信していると述べた」と報道されている。フランスで国威発揚のためのオリンピックが行われている間もウクライナやガザ地区では戦闘が行われ国内の格差も温存されたままである。「先人同様の犠牲」が何を意味しているかはわからないが過大なものにならないことを祈るばかりだ。