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人種差別により戦場化しつつあるアメリカ

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またアメリカで黒人が撃ち殺された。今回はセントポールだ。警官が、テールランプが壊れた車を運転している黒人カップルを呼び止めた。「手を挙げろ」と言ったのに「ダッシュボードに手を入れた」のを拳銃を取り出そうとしていると疑われたのだろう。そのまま撃ち殺されてしまったのだ。
予断だがアメリカで車を運転中に警官に呼び止められても、自分で何かしようとしてはいけない。手を動かさずにID(パスポートや国債免許証など)のある場所を警官に告げるべきだ。でないと撃ち殺される可能性がある。これは昔から言われていることだ。
さて、この事件がショッキングだったのは恋人が一部始終をライブ配信していたところだ。恋人はまるでナレーションを入れるように状況を説明している。自分が警官に尋問され、同乗者が撃たれたところを想像してみるとよいと思うのだが、恐くてカメラなど回せないはずだ。最初からソーシャルメディアにアップするつもりで大衆に向かって状況を説明しているのだ。
これは黒人が潜在的に危険を知っているということを意味しているのではないかと思う。その後、ようやく状況が飲み込めたのか、激しく慟哭する。その後パトカーに乗せられそこでまた冷静に戻り解説を始める。撃ったのは「チャイニーズ(つまりアジア系ということだろう)」と言っている。数十分前には普通にドライブしていたのに、警察に拘束されてしまった上に恋人を殺されてしまったのだ。ビデオを見ていると「冷静さ」と「慟哭」の間を何度か行き来する様子が分かる。
さて、この事件は悲劇の序章に過ぎなかった。各地で黒人の抗議運動(多くは平和裏に行われた)が展開されるのだが、ダラスで警官が殺されたのだ。今のところ5人(交通局の職員一名を含む)と言われている。9.11以降最大人数の警官が殺された事件になってしまった。当初は組織的な犯行だと考えられていたようだが、ロボットに殺された容疑者ミカ・ジョンソンは「自分は単独犯だ」と主張している。予備役軍人でアフガニスタンにツアーで訪れたことがあるというが、実戦経験はないようだ。
組織犯罪であったかどうかは分からないものの、アメリカは各都市で争乱が起っている。そこを戦場に見立てて「刈り」をするテロリストが表れた。そしてテロリストは戦場で使うことを想定したロボットによって殺されてしまったのだ。
この話が悲惨なのは、これが抜本的に解決される見込みがないということだ。大統領選挙ではクリントン候補がマイノリティの視点に立って「差別を解消すべきだ」と主張するだろうが、トランプ候補は「白人が狙われている」というメッセージを流す可能性がある。人種差別がポピュリズムに利用される可能性が高いわけだ。
アメリカは民主主義のモデルだと考えられており、各地に民主主義をプロモートする立場にある。だが足下では黒人やイスラム教徒が公権力に怯える日常を送っており、混乱を利用しようとする政治家が民衆を煽動するという状況になっている。いわゆる普通の市民も疑心暗鬼になっている。このところ銃の売り上げも伸びているようだ。
アメリカは国家や外国に対抗するために銃武装する権利が憲法で保証されている。しかし、いくら銃を持っても平和を手にすることはできないのである。

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