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フロリダの銃乱射事件とその反応

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フロリダのオーランドで同性愛者が集まるナイトクラブが襲撃された。死者は50名以上で、アメリカの銃犯罪としては最大のものになった。犯人はアフガン系のアメリカ人だ。使われたのはピストルではなく機関銃のようなものである。ISとの関与が疑われており、アメリカでは「テロ事件」として報道された。
これを聞いてアメリカはどのような反応をしていると考えるだろうか。常識的に考えられるのは以下のようなものではないだろうか。

  • 死者のために祈り、憎悪によるテロが起らないように暴力に反対する意思表明する。
  • 護身用とは言えない機関銃の規制に賛成する。

実際に「これはテロではなく、ヘイト犯罪だ」という主張が散見される。オバマ大統領はそのように定義付けようとした。だが、それとは異なった反応もある。トランブ大統領候補は次のようにツイートした。


イスラム過激テロに対する考えが正しかったということに対する賛意には感謝する。私が欲しいのは賛意ではなく強さと警戒心だ。私たちは賢くあるべきだ。
賛意と訳したが原文は日本でおめでとうと訳されることが多い「congrats」だ。「トランプ氏が言っていたことが正しいことが証明された。おめでとう」ということだ。もちろん表立ってこんなことは言えない。
オバマ大統領は国民が分断されるのを恐れてイスラム過激派について言及しなかったのだが、これを非難して「オバマは辞任すべき」と主張している。そして従来の見解である「イスラム教徒の入国禁止」を訴えた。テロの死者を政治的に利用しているのだ。犯人(現時点では容疑者なのだろうが)はアメリカ生まれなので、アメリカ人だ。つまりトランプ氏が主張しているのは、アメリカ人を思想によって選別するというもので、とても受け入れられそうにない。
イアン・ブレマー氏は、これまでの銃犯罪を取り上げ、イスラム過激派によるテロは例外的だと訴えた。もちろん、トランプ候補の呟きにも非難の声が寄せられる。
そもそもイスラム教徒が実行すれば「テロ」で、キリスト教徒(もしくは無宗教)であれば犯罪というのでは筋が通らない。CNNが伝えるところによると、犯人には離婚歴があるそうだ。表面上は穏やかな正確なのだが、両極端なところがあり、元妻は「虐待によって人格が歪んだのでは」と語っているとのことである。で、あればこれは人格が歪んだ人による大量殺人ということになる。
だが、いくら合理的な検証を試みても「イスラム=悪い奴」という一度付いてしまった図式は拭いがたい。彼らは政治的に正しくないと言われることを恐れて発言しないのだが、実際には「イスラム教徒などいなくなるべきだ」と考えている。と同時に、既得権になっている重火器を手放そうとはしない。冷静に考えれば何十人も殺せる兵器が町中で手に入ることの方が大きな問題なのだが、それよりも「なんだかわけのわからない」イスラム教徒がいなくなった方が安全になれると考えてしまうわけである。
トランプ氏は「我々は賢くならなければ」と訴える。これが比較的批判能力がない人たちに受けるのだろう。
この銃乱射はトランプ候補の躍進のきっかけになるかもしれない。民主党側が国民融和を訴えれば訴えるほど「弱腰だ」と非難することができる。トランプ氏の支持者たちは、公共の場で堂々と「議論」できるような人たちではないのだろう。議論できないということは、歪んだ自分の考えを修復できないということでもあるだろうし、「賢くない」ことで普段から馬鹿にされていることも考えられる。トランプ氏はそうした劣等感をうまく利用しているのだ。
現在展開しているのはポピュリズムによる大衆煽動で、きわめて危険だ。日本人はポピュリズムに国防と安全保障をゆだねているわけでこれはさらに危険なことのように思えるのだが、それよりも尖閣諸島を航行する中国艦船の方が重大な問題だと考えている。