ざっくり解説 時々深掘り

岸田総理が自ら安倍派とアベノミクスの粛清に乗り出す

経済の面から見ると金融緩和政策の終わりは「時間稼ぎ」の終わりとなった。増税議論も始まりこのまま生産性向上が行われなければ国民生活は悪性インフレに苦しめられ困窮することになるだろう。

政治的に見ればこれはアベノミクスと安倍派の終わりでもあった。岸田総理は自ら先頭に立って安倍派幹部を審査し非公認を申し渡す考えだ。自らの処分は行わず二階俊博元幹事長の処分も「慎重に」検討される。岸田総理は読売新聞の主筆と40分に渡る会談をおこなっており広報体制も万全に整えられている。

これまでリベラル叩きに熱心だった安倍派支持者たちはすっかりネットから消えてしまったようだ。

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今回の日銀のゼロ金利政策解除は掟破りとも言えるリークによって状況を整えるという手段がとられた。4月になれば中小企業や地方に賃上げ効果が波及していないことが明らかになる可能性があるため大企業の賃上げが行われる3月のほうが都合が良かった。一方で政府や自民党から目立った反論は出なかった。

財務省をウォッチしている人たちは「政府の月例経済報告の中からもアベノミクスへの言及が削除された」と指摘していた。つまり日銀がリークにより状況を整える中、政府もアベノミクスの葬送に動いていたことになる。この報道は読売新聞から出ている。冒頭に持ってきたことから読売新聞が何らかの理由で強調したかったということになるだろう。

政治的にも非常に好都合なタイミングだった。野党は予算審議を盾に政倫審の開催を求めている。これを利用し「安倍派は全く反省していない」という様子を世間に知らしめる。茂木幹事長がこの問題から距離を置いていることも好都合だった。仮に茂木幹事長がこの問題を適切に処理していれば、おそらく岸田総理の出る幕はなかっただろう。

結果的にまず「安倍派幹部に公認停止などの重い処分が降りる」という報道が出された。最初に読売新聞がオンラインで報道したのは土曜日の朝5時だった。朝刊配布に合わせたものと思われる。

SNSのXはこれを歓迎する。その後で「岸田総理が自ら最終聴取をして処分を下す方針だ」との報道が出ている。全く反省のない安倍派幹部たちに対して最後の鉄槌を下すのは自分であるという印象がつけられると踏んだのだろう。野党の追求と国民の懲罰感情を利用した劇場型政治に踏み込んだのである。

今回の一連の空気作りに協力しているのが読売新聞だ。今回の読売の「取材」では「安倍派幹部は処断されるものの岸田総理は処分の対象外となり二階俊博氏の処分も慎重に判断される」となっている。まるで岸田総理周辺に太いパイプを持ち取材ができているようだ。実は報道が出る前に岸田総理が自ら読売新聞本社を訪れ渡邉恒雄主筆と40分「会談」している。これが事実上の取材だったのだろう。日本の政治世論を主導すると自負する渡邉恒雄氏は大いに張り切っているのではないだろうか。

当初、アベノミクス修正に関しては世耕弘成参院幹事長などが強烈に反対していた。結果論ではあるものの政治とカネの問題や秘書の「チップを不適切なダンサーに口移しした問題」などが重なり、安倍派の発言力は封じられてゆく。

その背後では財務省と日銀の間でアベノミクス終了に向けた準備が進んでいた。その後鈴木財務大臣は「安定財源の確保の議論が必要だ」と発言しており、いよいよ増税に向けた方向づくりが行われることになりそうだ。

安倍政権時代のネットには熱心な安倍政権支持者たちが盛んにリベラル攻撃を行なっていた。

彼らは上下関係に非常に敏感で「下」を見つけて叩くことで自分の社会的地位を上げる傾向がある。だが上にはあまり強く出られないという傾向も持っている。今回彼らが安倍派の積極擁護に回ることはなかった。やはり彼らは「おかみ」には強く出られない。

「なる」指向が非常に強い日本人は自ら動く「する」政治には参加できない。つまり自民党が増税路線になっても抵抗する手段はない。今後彼らが今後も下を叩いて多幸感を得るためには結果的に彼らに負担を求める自民党政権を応援し続けるしかない。

一方の岸田総理も「安倍派の粛清」という権力闘争に関しては「する政治」が行える。だが、資本主義・自由経済には限定的な知見しかないため経済と国民生活を上向かせることはできない。こちらは「なるようにしかならない」と岸田総理は考えている。

日本においてはこの「する政治」の欠如が今の閉塞した状態を生み出していると言えるだろう。

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