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オバマ大統領の広島訪問について、まずアメリカ人が考えたこと

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オバマ大統領が広島を訪問する。日本では割と好意的な見解を持っている人が多い。一方でアメリカ人はオバマは謝るべきかという問題で揺れているらしい。ワシントンポストの記事についているコメントを読むと、原爆投下を正当化し、日本に謝るべきではないと言う声が多い。
簡単に要約すると日本人はこの件を「水に流したい」と考える一方で、アメリカ人は行為の意味と行動の責任について考えるようだ。物事の捉え方が全く異なるのである。
日本人はこのコメント欄を読むことはないだろうし、謝罪を要求する人も少数派である。にも関わらずアメリカ人は「謝罪すべきか」どうかで議論している。
もっともこの議論は内向きな側面が大きいのかもしれない。共和党はオバマ大統領の外交を弱腰と非難している。この文脈で「謝罪に行くのだろう」と非難しているのだ。大統領選挙を控えて、被爆者への鎮魂を「弱腰だ」として政治利用しようとしている。
「日本の大統領も天皇も真珠湾で謝罪していない」という興味深いコメントがあった。確かに日本の首相は戦後真珠湾を訪れていないようだ。アメリカは過去2度しか本土を攻撃されていない。真珠湾とワールドトレードセンターである。真珠湾はアメリカ人にとって特別な場所だ。
安倍首相が真珠湾を訪れるという計画がある(あった)そうだが、ここで謝罪しないと「なにしに来たんだ」と言われる可能性はある。だが、謝れば謝ったで「どうしてアメリカは謝罪しないのに日本だけが謝るんだ」という声が起るだろう。天皇が南京に行って謝罪せよという声も出かねない。その意味ではオバマ大統領に謝罪を要求しないというのは賢い選択といえるだろうし、真珠湾を訪れるのはやめた方がよさそうだ。「日本の首相が」というより、オバマ大統領が謝罪を要求しなかったと非難される可能性があるのではないかと思う。いずれにせよアメリカ人は真珠湾を「水に流しては」くれないだろう。「真珠湾で謝らないということは、かつての行為を正当化し、アメリカはそれを容認した」ということになってしまいかねない。この意味では日本人は異常に寛容であえる。
なぜ、日本人は「アメリカ人が原爆投下について謝罪しなければならない」と考えないのだろうか。合理的な説明は難しそうだ。ある人は天災のように捉えているのかもしれないし、日本人が無謀な戦争を仕掛けたから報復されたのだと考える人もいるだろう。あるいは、遠い過去の歴史として忘れ去っているひともいるかもしれない。理由は様々だが、日本人はこの件をうやむやにしたがっている。
いずれにせよアメリカ人は「あんな酷いことをされたのだから、当然日本人は猛烈に怒っているだろう」と考えているらしい。また「訪れても謝らないのは、自己の行動を正当化することになる」と捉えるのだ。異文化間の相互理解は実に難しい。


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