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ある意味では予想通り 岸田総理の政治改革案は麻生太郎氏らに配慮して骨抜きに

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「岸田総理のリーダーシップの元に」という触れ込みで始まった自民党の政治改革案が発表された。もう少しやったふりをするのかなと思ったのだが、かなりわかりやすく骨抜きにされた提案となった。自民党の人たちが食べやすいように調理したらお子様用に特に柔らかくしたハンバーグが出てきましたという噛み応えがない内容だ。

ただし各世論調査によると「そもそも改革できると思っている」人はそれほど多くないため政党・政権支持率にはさほど影響はないものと思われる。おそらく国民は今の政治にパンとサーカスを求めている。こうなると改革がどのような内容であれさほど興味を持つ人はいないのではないか。

その意味では茂木幹事長の「安倍派幹部処分の可能性」のニュースの方が潜在的なインパクトは強いかもしれない。茂木氏がどこまで踏み込むのかは未知数だが政治的に終わった旧安倍派を利用した政治的吊し上げに喝采する人は多いだろう。

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岸田氏の決意は半日で萎む

岸田総理が岸田派の解散を決めた時には「国民からの支持率向上を狙っているのだろう」という見込みが盛んに語られていた。個人的には派閥の解消を通じて長老支配からの脱却を試みたのだろうと感じている。だが首相の決意は半日程度しかもたず分析そのものの意味が失われている。麻生氏の抵抗を受けた岸田総理は早々と麻生氏に謝罪した。抵抗と言っても単に「麻生氏はものすごく怒っている」と伝わっただけである。

結果的に麻生派と茂木はは派閥を維持する見通しとなった。このままで行くと麻生氏が麻生派の力をバックに茂木氏を首相に担ぐという構図も想定される。まさに焼け太りだ。

なんだ派閥の解消はしないのか

そんな中で改革案がまとまった。予想通りに骨抜きされた内容だった。時事通信は「自民、派閥全廃見送り 「本来の政策集団に」―パーティー禁止・政治改革案」とまとめている。つまり「なんだ派閥の廃止はしないのか」ということだ。

岸田総理は「派閥ではなく政策集団になる」から改革は成就したと主張している。だが岸田氏はこの議論が始まった時にも「自民党には派閥はなく政策集団があるだけだ」と主張していた。そもそも自身の一存で脱会したはずの岸田派の廃止を決めておりその発言には何ら整合性はない。おそらくこの誰も納得しないことが最初から分かりきっている線で国会論戦を乗り切ろうとするのだろう。何も変えられないのだから「自分は何かを成し遂げた」と自らに言い聞かせるしかない。

派閥の領袖が派閥を見張る体制

岸田氏の根拠は人事とお金からの決別なのだが「罰則はない」と時事通信は指摘している。単に指針(ガバナンスコード)に従ってくださいねというだけである。遵守状況を「注視」するという内容だが、森山派が解散に傾いており派閥として存続するのは麻生派と茂木派だけだ。党の事実上のトップは茂木幹事長なので「自分の派閥を自分で管理する」という内容でになる。騙されたという人さえ出てこないだろう。

外部監査は義務付けられたが、現金の廃止も盛り込まれないようだ。銀行振込や収支報告書のインライン提出を「進める」考えとしている。

政治資金規正法の改正もやりませんと言う決意表明

ここまでの記事を読むと「そもそも改革をやったふりもしないのだな」と感じる。さらに共同通信の「会計責任者が立件されれば議員を党で処分」という記事を読むと連座制も骨抜きになっていることがわかる。党則で処分するといっている。つまり政治資金規正法の改正はやりませんよと宣言してしまった。

このためすでに党内からはさまざまな声が出ているようだ。石破氏は「何が変わるのかよくわからない」といっている。党の中の人がわからないのだから国民に理解されるはずもない。小泉進次郎氏は「派閥解消が看板の掛け替えに終わるのでは」といっている。現在すでに清和政策研究会、宏池政策研究会というようにすでに「自民党には派閥がない状況」だったので看板の掛け替えすら行われない。菅義偉氏は「実際に行動できるかが注目ポイント」といっている。だがこれも派閥の領袖が見つからチェックするということになりそうなので実効性を期待するのは難しいのかもしれない。

上からの「吊し上げ」に高まる期待

今回の議論に「裏金についての調査」の話は出てこない。岸田総理は「未来志向」というのだろうが、おそらく過去の問題について調査するつもりはないのだろう。誰も処分されないと言うモヤモヤ感が解消されるのは誰かが分かりやすく懲罰を受けた時だけだ。

今回執行部は安倍派幹部の政治責任については党で別途処分を検討するといっている。

「安倍派幹部は政治的責任をとっていない」という懲罰感情が国民の間に高まっている。このため次期総理大臣を狙う茂木氏が安倍派幹部を厳しく成敗すれば国民的人気は高まるかもしれない。仮に処分が甘いものにとどまれば「茂木氏は仲間を庇っている」と見做されるだろう。

次世代の総理候補と見做された面々が次世代のニューリーダーを狙う茂木氏に政治的に利用される「踏み台」になるのかもしれない。人々が求めるのはパンとサーカスだが政治と金の問題が解決されても国民のパンは増えない。すると残るのはサーカスだけということになる。あるいは大したことはしないのかもしれないが茂木氏がどのような処分を下すのかに注目が集まる。

麻生氏に骨抜きにされた岸田氏の制止を振り切って茂木さんが「英断した」となればそれなりに注目は高まるのかもしれない。あとは報道を利用した演出次第ということになる。

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