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計画された岸田の乱ではなく「殿のご乱心」だった可能性

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先日は岸田総理が用済みになった派閥を焼き捨てたというラインで記事を書いた。その後TBSの情報番組で田崎史郎氏と伊藤惇夫氏の情報を聞いたので答え「合わせ」を兼ねておさらいしておきたい。

番組が朝日新聞の記事を読むまで他人ごとだと考えていた岸田さんが慌てて派閥の切り捨てを図ったというラインで整理されていた。昼間に幹部たちと会談しドタバタと派閥閉鎖を決めてしまったという。TBSは岸田の乱と表現しているがどちらかといえば殿が一人で騒いでいたということになる。

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昨日のエントリーと最も大きく違っていた点は二つあった。

「岸田総理が事前に知っていたのではないか」というのは間違いだったようだ。取材によると朝日新聞の記事を知った岸田さんが慌てて岸田派幹部を呼び出して話し合いをしたようだ。安倍政権は検察の動きを探らせていたそうなのだが、田崎史郎氏によると岸田総理はそのようなことはしていなかったという。

仮に自分達の政党の問題だと認識していたのであれば検察の動きは気になっていたはずなので「しょせんは他人ごと」と感じていたのかもしれない。

朝日新聞の記事が出るまでは「あれは安倍派の問題であって自分には関係がない」と思いながらのほほんと政治刷新本部を仕切っていたことになる。だが、突然「我がこと」になったことでパニックに陥り「派閥をなくします」と宣言しまった。これでは政治刷新本部に参加していたメンバーが「今までの議論はなんだったんだ」「これでは岸田の乱だ」と思っても仕方ない。

次に違ったのは「もう国民に説明をするつもりなどないんだろう」という点だ。どうやら二人によると「国民世論を味方につけようとして」思い切ったことをやったという認識が広がっているようである。

これも冷静に考えるとおかしな話だ。誰が見ても岸田さんが自分の保身のために派閥を焼き捨てようとしたとしか思えずこれが国民の支持アップにつながると思う人はほとんどいないのではないか。ただこれでは「個人の思い込み」になる可能性が高いのでNHKの調査でリファレンスしてみよう。国民は次のように言っている。

  • 政治刷新本部では大したことはできないだろうと思っている(78%が信頼回復にはつながらないと言っている)
  • 政治資金規正法は厳罰化すべきだと考えている(83%が厳罰化を望んでいる)
  • 派閥に関しては「改革は必要だが潰す必要はない」と考える人が40%いて、解消すべきという人は49%である。なんらかの改革は必要だが、かといって「何がなんでもなくすべきだ」と考える人は実はそれほど多くない。

そもそも岸田内閣が取り組むべき問題が政治改革だと答えた人は13%しかおらず国民はこの問題にたいして興味がない。

悪いことをやったやつは徹底的に懲らしめるべきだろうという他人に対する強烈な懲罰感情はあるが、自分達で手を汚して悪い奴らを懲らしめるつもりもないのではないかと感じる。検察が悪い奴を叩く姿をテレビで見たい。その程度の懲罰感情だ。

スタジオの大方のコンセンサスは岸田総理は慣れないこと(国民にアピールして支持を得る)をやろうとしているが大丈夫なんだろうかというものだった。さらに「自民党は問題を派閥問題にすり替えようとしているが重要なのは政治と金の問題である」とも指摘されており岸田総理が自派閥を焼き捨てたことはそもそも一発逆転の賭けとも認識されていない。

TBSは「“岸田派解散”に反発相次ぐも岸田総理は「博打を打たないと逆転はできない」」という記事を出している。だが、そもそも博打とも見做されなかった上に、何と戦って何を逆転しようとしたのかもよくわからない。単に一人で舞い上がっていただけだ。

特に麻生さんはかなり怒っているのではないかと思う。岸田総理を支えるためにバイデン政権との会談をセットアップし(4月10日の線で調整が行われているそうだ)トランプ氏とのパイプ作りもやろうとしていた。アメリカとの強いパイプを維持すれば国民の支持が戻ると考えているのだろう。だが留守の間に「宏池会は潰します、後の人たちのことは知りません!」と一方的に宣言されてしまったわけで「めちゃくちゃ怒っている」としても何の不思議もない。

田崎史郎氏と伊藤惇夫氏の説を合わせると「ああ安倍派が燃えとるなあ」として検察の動きを把握しようともせず朝日新聞の朝刊を見て「なんじゃそら!」と慌て出し、岸田派の幹部とだけ話し合い、所属議員たちにも周りの政策集団にも話をせず「宏池会は終わりです」と記者に口走ったことになる。

めちゃくちゃな危機管理(リスクマネジメント)だ。あと半年もこの人の元で政府が運営されるわけで「何も有事が起きませんように」という気持ちになる。

すでに派閥に変わるグループの立ち上げ話がちらほらと出てきており、結局のところ派閥は解消されないようだ。単に岸田総理が一人でパニックに陥っただけで周りは「なかったこと」にして粛々と総裁選を迎えるというのが既定路線になりつつある。派閥はなくなるが議員同士の集まりは残る。結果的に岸田さんが投げ捨てた宏池会の看板は今誰が拾ってもいい状態になっている。

となると今回の件は単に岸田総理が自民党の中で勝手にレームダック化しただけということなのかもしれない。あとは何か突発的な有事が起こらないことを祈るばかりだ。

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