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ペンシルヴェニア大学の学長と理事長が議会の吊し上げ後に解任 「言論の国アメリカ」で今起きていること

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ペンシルヴェニア大学の学長と理事長が辞任した。学内に蔓延る「反ユダヤ主義」を放任したというのが理由だった。日本ではあまり伝えられないニュースだがアメリカの政治がどんな状況に置かれているのかがわかる。選挙に資金を出す人たちを惹きつけるために言論の自由が脅かされているのだ。言論の訓練機関であるべき大学でさえも自由な言論が許されなくなりつつある。次のターゲットはハーヴァード大学の学長なのだそうだ。

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アメリカではトランプ大統領時代からバイデン大統領時代にかけて人種差別問題が大きな課題になっている。黒人が警官から不当な差別を受けているとして問題になった。この黒人とイスラエルのパレスチナ人の境遇を重ね合わせネタニヤフ政権に対する反発も強まっている。

本来ならネタニヤフ政権とイスラエルとユダヤ系・ユダヤ人はそれぞれ別々に語られる必要がある。だが実際には一つのものとして語られることが増えている。「政権批判は反ユダヤ主義を助長しかねない」と問題視した議会共和党がペンシルヴェニア大学・ハーバード大学・MITの学長らを呼びつけて公聴会で証言をさせている。かなり激しい吊し上げが行われたようだ。

学校側は「言論の自由」を理由にして学生たちの抗議運動を抑圧することに抵抗していた。言論の自由は健全な民主主義を維持するうえで極めて重要だ。だが、適切な訓練が必要なことも確かであり、大学はそれを学ぶための機関であるべきだ。ある程度の配慮は必要だろうが、学長が「文脈」を考慮するのは極めて自然のことである。だがマギル学長の「文脈による」という発言が炎上した。

本来なら議会は穏健な議論のために何ができるのかを考えるべきなのだろうがそうはなっていない。吊し上げはおそらく政治的な動機に基づいている。舞台になったのは共和党が支配する下院教育労働委員会だ。学長らに向けられた質問はもはや尋問と言って良いほど激しいものだったという。

吊し上げに参加した共和党議員たちの気持ちは完全に固まっていた。イスラエルを支援しないことは絶対的な悪であると示すためにマギル学長は粛清されなければならなかった。ある意味いじめの対象になっていると言って良い。

CNNによると学長の証言を受けて共和党のエリス・ステファニク議員は「学校が失敗した責任を追求する」と息巻いた。またバージニア・フォックス教育労働委員長は証言は絶対に受け入れられないと宣言した。

エリス・ステファニク氏とはどんな人だろうか。もともと穏健保守だったようだが議会共和党での地位を確立するためにトランプ氏を熱心に支持するようになった。現在はリズ・チェイニー氏に代わって下院共和党のナンバースリーの地位についている。党内でトランプ氏の影響が強まる中「過激な極左社会主義のアジェンダ」を覆すには、トランプ氏とその主張が依然として不可欠だ」などと過激な主張を繰り返すようになったのだという。

さらに、ペンシルヴェニア大学の大口寄付者のロス・スティーブン氏は「学長が辞任しなければ1億ドルの寄付を取り消す」と宣言し学長に圧力をかけた。結局スポンサーたちが離れたことが決め手となり学長が辞任。さらに理事長も辞任を余儀なくされた。

アメリカの政治言論はSNSに飛び交う陰謀論の影響でかなり不健全な状態になりつつある。これを防ぐためには健全で穏健な言論空間を維持し高等教育機関で「正しい政治討論」のやり方を教える必要があるだろう。

一方でユダヤ系の豊富な資金援助に期待する政治家も多い。このため「民主主義の根幹である」議論よりも政治的パフォーマンスの方が優先されてしまうという現実がある。

こうしたさまざまな事情があり学生たちが議論をする場が奪われつつある。

ペンシルヴェニア大学の学長と理事長の解任という政治的成果を挙げた人たちは、今度はハーヴァード大学の学長を解任せよと要求しているそうだ。これに対抗するために570名の大学教授たちが嘆願書を大学理事会に提出しているというのが現在の状況だ。

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