アメリカ合衆国は感謝祭の移動シーズンに入った。感謝祭は11月第4木曜日なので今年は23日が感謝祭当日に当たる。コロナ明けの本格旅行シーズンということもあり数百万人が移動したものと見られている。そんな中、突然SNSで「空飛ぶ車が爆発」するという俄かには信じ難い動画が飛び交った。ニューヨーク州知事はまず「AI動画であろう」と考えたそうだが、その後本物であることがわかり一時は大きな騒動に発展した。
バイデン大統領とトルドー首相が懸念を表明したことから大騒ぎになったがニューヨーク州知事が「テロの可能性は低い」と発表し事態を鎮静化させた。一部報道によるとテロリストの仕業ではなくKISSのコンサートを楽しみにしていた夫婦が起こした事故だったのではないかという見方が広がっているようだ。
アメリカ合衆国は感謝祭の移動シーズンにあたる。今年は数百万人が移動したが去年のクリスマスシーズンに見られたような悪天候による混乱はなかった。そんななか、アメリカのメディアは一時騒然とした。例えばBloombergは「米・カナダの国境結ぶ橋で車両が爆発、バイデン氏は動向注視」と書いている。この報道では「FOXはテロの可能性を伝えた」などと書かれており情報が錯綜していたことがわかる。
日本ではあまり考えにくいことだがアメリカ合衆国の国境問題は安全保障上の懸念とみなされている。特に米墨国境の移民と不法薬物は大きな脅威とみなされている。さらにガザ問題でイスラム教徒からの反発が高まっている。このような背景から「テロの可能性も否定できない」という当局の見解が「テロなのではないか」として広まった可能性もある。
事故映像もかなり衝撃的なものだった。第一検問を通過し第二検問に向けて車が猛スピードで走り始める。何かにぶつかったせいなのか飛び上がった車の映像がSNS上では出回っていた。メディアではairborne(空中を飛び上がる)という言葉が盛んに飛び交っていた。
事故は現地時間22日のお昼11時ごろに起きたのだがレインボーブリッジなどの4つの国境の橋が封鎖され空港でも手荷物検査の厳重化などが行われた。旅行のハイシーズンのため、このままでは全米の旅客に影響が出かねない。そこでホークル知事が会見を開き「専門家の見立てによるとテロの可能性は否定できないものの極めて低い」と強調した。ホリデーシーズンの旅行客への影響を懸念したものと見られるが、特に証拠がなかったため記者たちの中には「何が根拠なのか」と疑う人たちもいたようだ。早めの判断で状況の混乱を防いだが「100%安全」と言える状況ではなかった。
結局のところ、国境を狙ったテロ事件などは起きておらず車中に爆発物などもなかったことからテロではなく単独の事故だったという見方が定着しつつある。
結果的に車に乗っていた2名が死亡しブースにいた1名が負傷した。それなりに交通量があり巻き添えが増えても不思議ではない状態だったそうだ。ドライバーの身元の特定などは難航していて単なる突発的な事故だったのかあるはなんらかの犯罪行為だったのかなど詳しいことはわかっていない。
現在はカナダのコンサートを目指す夫婦が事故を起こしたのではないかなどという報道が出ているという。コンサートがキャンセルされたために代わりにカジノに行きその後事故を起こしたという説明だ。CNNを引用すると次のとおり。つまり二人はテロリストではなく単にロックバンドKISSのファンだったということになる。
Investigators believe the man who died had plans to attend a KISS concert in Canada, but when it was canceled, he went to a casino in the US instead. The crash occurred sometime after the couple left the casino, the sources said.
その他日本語で読める記事は次のとおりとなっている。
- 米・カナダ国境の車爆発、テロとは無関係 NY州知事(CNN)
- 米・カナダ国境で車炎上し2人死亡、テロ攻撃の兆候なしと当局(Reuters)
- 米加国境の橋で車爆発、2人死亡 当局は「テロ」否定(AFP)