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マイク・ジョンソン下院議長は「アメリカ合衆国は宗教的な信仰表明に基づいて建国された世界唯一の国」と主張

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アメリカ合衆国で新しい下院議長が生まれた。あまり経験がないために「敵が少ないトランプ派」などと説明されている。次第にこの人の人となりがわかっていた。南部出身で福音派(エバンジェリスト)と呼ばれるキリスト教一派の信仰を大きく押し出した人なのだそうだ。彼が表向き穏健に見えるのは当たり前だ。伝統的なキリスト教徒として慎ましく振る舞っている。だがかえってこういう人の方が怖いのかもしれない。トランプ氏やゲイツ氏など前に出たがる人が「偉大な国を再建するためのコマ」とみなされてしまう可能性があるからだ。

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アメリカ合衆国では現在有色人種の数が増えている。移民が中南米から上がってくるという事情もあるのだが実は有色人種の方が出生率が高い。このままで行くと近いうちにヨーロッパ系(以下白人)はマジョリティではなくなるため過去に対する郷愁が高まっている。ルイジアナのような南部ではその傾向は顕著であろう。そうなると新しい価値観の変化を受け入れて前に進もうという気概は失われる。

今のところ、新議長のマイク・ジョンソン氏は「穏やかな保守派」と紹介されている。BBCを見ると「穏やかな物腰の保守派の元弁護士で、ラジオの司会者も務める。」との説明されている。BBCはラジオと言っているが彼のメッセージは主にポッドキャストで顕著であるとPOLITICOは指摘している。

夫妻は「アメリカは宗教的な信仰表明」に基づいた唯一の国家であると説明しているそうだ。

原文は次の通り。A creedは「信条」でありその言い換えが「宗教的な信義のステートメント(宗教的信仰表明)」ということになる。アメリカ合衆国は宗教的に選ばれた約束の地でありそこに集う人たちは神の祝福を受けているということだ。このメッセージを聞いた人は「自分達はむしろ神の意志を守ろうとしている」と気持ちを強くするだろう。自分達は変化から取り残されているかもしれないと感じている人ほどその「信念」は強くなるはずだ。

Mike responds by explaining that America is the only country in the world founded upon a creed, or a “religious statement of faith” and says on the episode that “we’ll review current events through the lens of eternal truth. … The word of God is, of course, the ultimate source of all truth.”

伝統を守るためには中南米からくる移民は制限されなければならず、これまでなかったような中絶や離婚などは制限されなければならない。また同性愛は神様が作った原理ではないのだから厳しく罰せられるべきだという組立だ。

アメリカにいる人たちは神に選ばれた特別な人たちということになるのだがそこから除外されるべき人たちもいる。こうしたメッセージは聞き手に心地よく響くようにどこかに「工夫」が施されているものである。

バイデン大統領や支持者・スタッフが推進する「多様化政策」は変化を拒絶する人たちの心情とは相容れない。彼らにとってみればいわゆる「邪」ということになる。危機にある人々が「邪」と戦うためにはそれなりの武器が必要だ。そのために遣わされた道具がトランプ氏やゲーツ氏のような目立ちたがり屋の人々なのかもしれないということだ。

しかしながらこれは単なる疑念に過ぎず確たる証拠はない。

マイク・ジョンソン氏は2020年の選挙結果を覆すために先頭に立って戦った人の一人である。このため民主党支持者からは極めて評判が悪い。APはこの人が議長になったことで2024年の大統領選挙の結果に影響が出るのではないかと心配している。下院が大統領選挙の結果を認定しなければ大統領は決まらないそうだ。単に「本人が目立ちたい」という理由で認定を遅らせているならば交渉によって取り除くのも難しくないだろう。だが仮に「信念」によって動いているならば話は全く別である。

新議長の方針は次第に明らかになってきている。まずウクライナ問題をイスラエル問題と切り離そうとしている。「約束の地」に集うイスラエルの民を救うのは当然だと考えるのだろうし、選挙戦略としてもユダヤ系の支持を取り付けておきたい。一方でバイデン大統領がいう「民主主義の価値観」にはあまり興味がない。それは多様性や変化と結びついているからだ。この組立でゆけばウクライナへの支援は先細ることになる。

さらに本予算は成立させないつもりのようだ。つなぎと言われる暫定予算の成立を目指す。その度に政府閉鎖が問題になりバイデン政権の政策が議論の対象となるだろう。また配下の目立ちたがり屋の共和党議員にも活躍のチャンスがある。政府は混乱し政府職員は不安に感じるだろうが「聖を邪から守る戦い」なのだから多少の犠牲は必要だということになる。これはバイデン大統領が「戦争なんだから多少の犠牲は仕方がない」と発言したのと同じメンタリティである。彼らはお互いに何かのために戦っておりそのために犠牲者が出るのは止むを得ないと感じ始めているようだ。

新たに下院議長に就任した同党保守派マイク・ジョンソン氏は2024会計年度(23年10月─24年9月)の12本の歳出法案に関する交渉時間を稼ぐために、1月中旬か4月中旬までのつなぎ予算で引き延ばすことを提案している。

米下院共和党、次のつなぎ予算へ調整 政府閉鎖回避目指す(Reuters)

時事通信は

バイデン氏については「敬意は払うが、政策で一致する点はほとんどない」と語り、対決姿勢を示した。

と書いている。これまでの共和党の人たちと違ってバイデン大統領を声高に批判することはない。ある種の寛容さを見せつつも配下の人たちに思う存分語らせるのであろう。

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