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アメリカ合衆国が連邦政府閉鎖を土壇場で回避 何が決まり何が決まらなかったのか

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事前の予想では「政府閉鎖は避けられない」だったが、土壇場で回避された。なにが決まり何が決まらなかったのかだけを簡単にまとめておきたい。今回決まったのは45日の暫定予算なので、次の争点は下院議長の解任と11月中旬以降の本予算編成ということになる。

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合意内容

  • 事前予想では「つなぎ予算の成立はほぼ絶望的」だった。影響を受けるはずだった連邦職員はBBCによると「一部」の数万人程度。一方でロイターは400万人程度のほとんどと書いており情報が異なる。
  • 下院の案を採用。
  • 反対派はいずれも共和党の議員。
  • 45日間の暫定予算のため11月中旬に同じようなことが起きる可能性も。
  • ウクライナ関連(240億ドル:3兆5900億円)は別途協議。与野党は基本的に「協力」の意向。
  • バイデン大統領は約束を反故にした共和党強硬派を批判。
  • 今後、共和党強硬派が議長を解任するかどうかが焦点。メディアはゲーツ氏の動向に注目。

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経済への影響だが「経済統計が出なくなるかもしれない」という恐れはひとまずなくなった。また現在絶好調で一人勝ちと言われる米ドルの勢いも当面は維持されそうだ。


今後の展開

下院議長の解任動議

外信の翻訳は「つなぎ予算可決」で終わっているが、共同通信によると解任要求が行われる模様だ。

POLITICOによるとそのロジックは複雑怪奇だ。ゲーツ氏はマッカーシー議長を「民主党の議長」と呼んでいる。つまり本来の共和党員は自分達のようなMAGA共和党員でありその象徴がトランプ大統領ということになる。つまりマッカーシー議長を生かしたうえで攻撃すればするほどMAGA共和党の支持が伸びトランプ大統領の再選に有利に働くだろうという目論見があるのだろう。

そもそもMAGA共和党が独自の議長を選出することはできない。同盟者は5名から10名の間だと言われているという。それよりも抵抗勢力として議会内部から「選挙運動」をした方がトクだということになる。

しかしながらゲーツ氏は民主党の中にいる「マッカーシー氏を恨んでいる」人を味方につけたいとも考えているようである。


ウクライナ支援の継続の是非

ウクライナについては別途協議される。アメリカはウクライナに対してすでに439億ドル(約6兆5千億円)以上を拠出しているが、現在はこれに加えて240億ドル(3兆5900億円)の支出が行われるかどうかが争点になっているそうだ。

共和党と民主党の間では(上院レベルで)基本的な合意はできているそうだがマッカーシー議長が民主党との「協力関係」を深めれば深めるほど共和党の強硬派を刺激することになる。つまりウクライナ支援が完全に共和党内の「政局議論」に組み入れられてしまったことになる。逆にCNNは「ウクライナは別途協議される」という合意を聞いてつなぎ予算案に賛成した議員を紹介している。

上院の与野党指導部は、数週間以内にウクライナ支援の法案を採決にかけると約束する声明を発表した。支援の除外に異議を唱えていた民主党のマイケル・ベネット上院議員は、これを受けて賛成票を投じたことを明らかにした。

報道をざっと読んだ限りでは「国境警備」と「ウクライナ支援」が同列で語られている点に違和感を感じる。本来は比べられるべきものではないと思うがトランプ氏はこの点を有権者に対して感覚的に訴え続けている。国民の一部が確実に持っている危機感を煽る手法である。一方でウクライナ問題は厳密にはアメリカの安全保障ではなく「価値観防衛」である。継続的にアメリカの民主主義が守られているという成果を提示し続けなければ巨額の支援を続ける意味を有権者に説明できなくなってしまうのである。

アメリカの治安の悪化を「移民のせいだ」と考える人が大勢いる。しかし、実際の問題は経済格差と人種による子供の数の相違だ。このため国境を閉めて移民を追い返しても国内問題が解決するかどうかはわからない。

だが国内問題とウクライナ支援の「天秤の傾き」はヨーロッパでも問題になり始めており今後大きく議論されることになるのかもしれない。このままアメリカが手を引いてしまうのではないかとの懸念を打ち消すためにウクライナ側は「支援確保のために当局と協議している」と強調している。

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