朝起きて、今年の夏の参議院選挙では安倍自民党が勝つべきなのではないかと思った。何なら衆議院選挙も同時にやってもらいたい。日本は良くなるだろう。理由はいくつかある。
第一に安倍自民党が勝てば憲法改正が議論になるだろう。どの条文が争点になるかはわからないのだが、国民は一度改憲派の本音を聞く必要がある。彼らに悪気があるかどうかはわからないのだが、基本的に民主主義のプロセスや価値について理解していないことをしっかりと見る必要があるだろう。「民主主義は戦勝国が正当化のために作り上げた理屈に過ぎない」という発言が堂々と飛び交うことになる。
次に景気が悪くなりそうだ。中国が失速しているとかいろいろ理由はあるだろうが、この状況にしっかり直面していただく必要がある。年金などで株価を支えることはできるかもしれないが、実質賃金は下がり、非正規雇用も増えている。一方、エコノミストや経済評論家という人たちは「お金をたくさん印刷しろ」「増税はするな」「もっと派手にばら撒け」くらいのことしかいわなくなった。経済を好転させることはできないと多くの人が暗に認めているのだ。
第三の理由は少し複雑だ。野党は安倍政権の不満の受け皿になっている。左派にインテリ層が多いことは無視され「下層階級だ」とみなされることが多い。左派が福祉の充実に熱心だからだろう。そこで中流階級の人たちは左派を見下すことで溜飲を下げているのである。ところが不思議なことに左派が退潮してしまうとこの見下し感が政権政党に向かうのだ。
社会党が政権に取り込まれて信者から見放されたあと、中流階層は叩く政党がなくなり、自民党が叩かれた時代があった。皮肉なことだが、左派・中道系の政党はあまり自民党を攻撃しないほうがいいのだ。攻撃すればするほど不満の受け口になってしまうからである。逆に民主・維新が退潮すれば、政権運営の不満は自民党に向かうのだ。
第四の理由はアメリカである。現在、民主党はクリントン、共和党はトランプかクルーズが有力候補だと考えられている。候補者の資質はともかく、アメリカの経済が比較的うまく行っているにもかかわらず、アメリカ人が不満を抱えている実態が露になりつつある。その不満の捌け口になっているのが外国と不法移民・難民などらしい。ヒスパニック系ですら「不法移民と俺たちは違う」と思ってトランプ氏を応援しているらしい。2017年以降政権を担う政権はこのアメリカからの圧力を受けるわけだ。
例えばクリントン氏はTPPを推進していたにもかかわらず現在は「私がいなくなってから、期待はずれにまとまってしまった」と言い出した。日本は為替操作をしているので、関税で報復しろなど言っている。オバマ大統領時代に批准してしまうから反対してもいいと考えているという話もあるのだが、一度反対を表明した以上は「私の水準(ゴールデンスタンダードと言っている)にあうように仕組みを変えろ」などと言い出すに決まっている。
アメリカ人は「自分たちの国は特別だから世界中で優遇されて当たり前」だと思っている。悪気があるわけではなく「要求があったら主張する」文化なのである。だが、思いつきで何か提案しても責任を取ることはない。
安倍政権はアメリカに寄り添っていれば安全と主張しつつ、経済の不調はすべて民主党のせいだと言っている。現在はこの主張がほぼ受け入れられている。まあ、それは良いだろう。
だが、今後はアメリカから過大な要求を突きつけられ、当てこすりをする野党もなく、経済不調への対策を求められることになっても同じことを言い続ける必要がある。日銀が始めた戦争に出口もない。消費税増税するかしないかは別にしていつかはやらざるを得ないわけだし、他の負担増も決めざるをえなくなるだろう。
一度大勝すると次の選挙がやりにくくなる。議席を失うことが確実になるからだ。すると内部で動揺が始まるだろう。また大勝した議員さんたちは「なんとかチルドレン」と呼ばれることになり、不規則発言を繰り返す。
それでも支持者たちに約束した手前、他の問題をすべて無視して「憲法改正議論」をやらざるを得ない。支持者たちは「できるのになぜやらない」などと騒ぎ出すはずだ。こうしてはじまった憲法改正議論は国論を二分する大騒ぎに発展するだろう。
今の執行部のもとでは、自民党の中にいる改革に燃える若手は退潮するだろう。口利きは政治の仕事だと思っているわけだから、倫理観のないスタッフが跋扈することになる。野党は淘汰されてより優秀な人たちかより過激な人たちだけが生き残ることになる。
これだけ状況が揃うと、ぜひダブル選挙をやって大勝していただきたいと思う。少なくとも中途半端に野党が勝って政権も取れず建設的な提案もできないという状態が続くよりはよっぽど面白い。