朝日、毎日、共同などが麻生太郎副総裁の「公明党はがん」発言を後追い報道している。SNS上にこれを広めたのはおそらくゲンダイだが元ネタはテレビ朝日だったそうだ。
自民党を支援する保守系勢力の中には公明党との連立を面白く思っていない人がいる。表面上は選挙協力に向けて関係修復が進むが公明党の山口代表は苛立ちを募らせているようだ。内閣改造は所詮内向きであり岸田総理は説明が足りないと訴えた。こうなると単に選挙のために夫婦生活を続けている宅内別居夫婦という趣（おもむき）さえ漂う。
麻生氏の発言には今回あまり報道されていない別の問題もある。岸田総理はおとなしそうに見えるので利用価値があると評価している。岸田総理が安保や増税推進に都合がいい「顔」だとみなされていることがわかる。長老とその支持者たちにとって総理大臣は所詮使い捨ての駒でありフィクサー気分で政治を楽しんでいることがわかる。岸田総理は財務省と財界の言いなりだと言われることが多い裏には岸田総理に対するある種の侮りがあるのかもしれない。
元々の記事は日刊ゲンダイの「麻生太郎副総裁が公明党を「がん」呼ばわりの大暴言！ 自公関係は再び決裂か？」と題された記事だった。面白おかしく麻生太郎氏の発言を取り上げて自公連立の危機を煽っている。
日刊ゲンダイは実はテレビ朝日を引用している。
テレビ朝日が「「岸田さんのような誠実でリベラルそうに見える顔が受ける」総理を“麻生節”で評価」で問題にしているのはむしろ「リベラルで誠実そうな顔が利用価値が高い」と言うパートだった。
何かと反発が多かった安倍さんよりもおとなしそうな岸田さんの方が大胆なことをやりやすいと言う意味だ。テーマは「安全保障」なのだがおそらく増税のように国民に人気のない政策についても岸田総理の方が都合がいいということなのだろう。「評価」とは書いているが実質的には使い捨てである。
自民党の麻生副総裁は、福岡市で講演し、防衛費増額や反撃能力の保有を決めた岸田総理大臣について、「誠実そうに、リベラルそうに見える顔が世のなかに受けている」と述べ、評価しました。
これらの一連の報道を踏まえて共同通信は「がん」のパートを切り取り再配信している。リベラルそうな顔が受けると言う発言の持つ毒々しさは少し考えないと伝わらない。一方で「がん」と言う直接的な表現はいかにもSNS受けをする。いずれにせよ麻生副総裁が岸田総理を道具だとみなしており、なおかつ公明党との選挙協力に気が進まないことはわかる。
公明党の山口代表も苛立ちを募らせている。BS朝日の報道をNHKが言いふらしている。官邸ではなかよくやっているがご近所ではお互いに悪口を言い合っているという状態である。お互い選挙のためと違いを我慢してきたが言いたいことを言ってこなかったためにお互いに爆発寸前だ。だが、今後のことを考えると安易に別れましょうとも言い出せない。疲れ切った夫婦のように見える。
麻生太郎氏の「公明党はがん」発言をうけて「心の中では賛成だ」と考える自民党支持者は実は多いのかもしれない。自民党支持の保守派は宗教を全面に押し出したリベラル政党を快く思っていないだろう。自公の関係が悪化していた時にいくつか調査が出ているが、例えば日経新聞は連立解消を望む人が多かったと書いている。支持者がある種の不自然さを感じていることがわかる。
その代替として麻生副総理が熱心に取り組んでいるのが連合の取り込みだ。電機連合出身で元国民民主党の矢田稚子元参議院議員を首相補佐官に任命したのもその一つの表れである。矢田氏は早速、麻生・茂木・玉木雄一郎氏と相次いで面会し何らかの「調整」を始めた。表向きは賃上げに向けた話し合いと言うことになっているが「連立に向けて動いているのではないか」などと囁かれている。
今回の件でむしろ気になるのはむしろテレビ朝日が最初に伝えていた「大人しく見える人の方が大胆なことをやるには何かと都合がいい」と言う発言に含まれた政権の油断と緩みだ。
麻生氏はこれを自分の後援者の前で堂々と発言している。後援者たちもフィクサー気分で「岸田総理に何か大胆なことをやらせたい」と思っているのだろう。
たとえ「大胆ななにか」が反発されたとしても退陣するのは岸田総理であって自分達（自民党）ではないのだし現状維持バイアスの高い国民も政権交代までは望んでいないことがわかっている。
自民党のコアな支援者たちは、有権者は表面しか見ない愚かな人たちで総理大臣が交代すれば昔あったことは忘れてしまうと考えている。おそらくこうした政権が国民のためを考えた政策を立案するのは難しいだろう。全ては選挙に受かるための手段であり有権者は所詮政策の中身までは見ないだろうと侮っているからである。