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マッカーシー下院議長は詰んだ状態 アメリカ連邦政府の一部封鎖まで残り2週間弱

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特に世界の終わりが来るというわけではないのだが、10月1日からアメリカ連邦政府の一部機関が閉鎖される公算が高まってきた。フリーダムコーカスと呼ばれる一部の強硬派が粘っており新しい会計年度の予算が決まっていない。交渉の目処が立っていないためマッカーシー下院議長はつなぎ予算を提案した。マッカーシー下院議長は「必ずつなぎ予算を成立させる」と言っているがその調整力はあまり期待ができそうにない。下院で共和党フリーダムコーカスとの調整ができたとしても上院の民主党を説得できないためだ。

日本ではあまり注目されることがない政治ショーについてロイター、CNN、Buisness Insiderなどの報道を読んでみた。

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アメリカの政治を観察していると「予算が通らない」というような話をしょっちゅうやっている。このため10年間で4回も政府機関が閉鎖されているという。その度に「ああこれは大変だ」と思うのだが意外とどうにかなるものだ。今回は来年度予算が決まっておらず、会計年度の終わりである9月30日までにつなぎ予算が通らないと政府が一部閉鎖される。そもそもどのプログラムの何が止まるのかはよくわかっていないという。

ロイターはマッカーシー議長に勝ち目はないと考えている。下院共和党はギリギリ共和党が過半数を占めている状態だ。強硬派4名が離反すると法案は通らない。現在の反対者は6名だそうだ。

ただこれは第一関門に過ぎない。上院は民主党が支配している。民主党は超党派での審議を継続すすべきだといっている。だが、仮に民主党との協議に応じてしまうと強硬派フリーダムコーカスに解任される可能性が高まる。マッカーシー下院議長はもはや「詰んだ」状態だ。

マッカーシー議長は賛成が得られるかどうかはよくわからないと述べた上で「最後までベストを尽くす」と言っている。

もちろん議長も何もしてこなかったわけではない。CNNによればマッカーシー下院議長は共和党のメインストリームの議員3名とフリーダムコーカス3名からなる交渉団に協議をしてもらっていた。だがフリーダムコーカス側の姿勢は頑なだ。

フリーダムコーカス側はそもそも現在の政治はなんらかの理由により民意を反映していないと考えている。このため、政府を閉鎖に追い込み現在の政治は間違っているということを証明したい。

このため、CNNも政府閉鎖を織り込み始めており「そもそもどの部門が閉鎖されるのか」ということを心配し始めている。社会保障給付などに影響が出る可能性は極めて高い。アメリカ合衆国政府は実にたくさんのプログラムを走らせているがそのうちどのプログラムに影響がでるかはよくわかっていない。

これを混乱とみるか一種の「お祭り騒ぎ」とみるかは意見が分かれるところだろう。政府は債務上限交渉問題の時から大騒ぎを続けているがアメリカ経済は極めて好調だ。特に日本人投資家にとってはFOMCの方が重大関心事かもしれない。FOMCは20日(日本時間では21日未明になる)に発表され22日の日銀で「何も変更がない」ことが決まれば一段の円安に傾きかねないという状態になっている。今は「米ドル一人勝ち」状態なのである。

フリーダムコーカスの人たちが何を要求しているのかがよくわからない。ステートメントの中に「意識高い系の政策」とか「司法省の武器化」と言う言葉を入れて「この国の民主主義は壊れている」と言うことを証明せよと言うのが彼らの主張だ。そんなことを証明して何になるのかと言う気がするが、彼らは本気だ。

Many members in the House Freedom Caucus have said they won’t vote for a continuing resolution unless it had conservative policies attached, such as language to address “woke policies” and “weaponization of the DOJ.” Others have said they won’t support any continuing resolution.

フリーダムコーカスに言わせればアメリカの民主主義は破壊されているのだから「予算審議どころではない」ということになる。しかし外から状況を見ると、そもそもアメリカの民主主義を信頼しない数名によって国家予算が振り回されていることこそがアメリカの政治が破壊されていることを示しているように思える。

興味深いことにこのニュースが日本で伝えられることはほとんどない。そもそも、日本では年度末までに予算が上がらないという異常事態はめったに起こらないし、起こったとしても政府の支給が止まることはない。さらにいえば、アメリカの政治状況がここまで混乱しているとは誰も考えない。「どうせ読まれないだろう」と思われているのだろう。ロイターは最初のパラグラフしか翻訳していない。あとは日経新聞が短く伝えているのみである。

なお「日本では滅多に起こらない」と書いたが2013年の安倍政権発足直後に50日の暫定予算が組まれていたことがある。

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