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政府は旧統一教会の解散命令を出すのか出さないのか メディアによって表現が揺れる

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旧統一教会問題について政府は対応に苦慮しているようだ。9月2日(土曜日)の朝に「旧統一教会に過料を請求するのではないか」との報道が出た。行政罰の一種で10万円以下の「過料」になる。質問は7回繰り返されたが「信教の自由」などを理由に回答されない項目が多かったのだという。ただこれだと「結局延々と質問を繰り返したのに10万円以下で済んでしまうのか」となりかねない。そこで次に出てきたのが「政府は解散命令請求を出す方針だ」という強い見出しである。だがこれは次第にトーンダウンし日曜日の夕方までに「今検討しています」「これから検討します」ということになった。いずれも情報源は不明である。政府が世論と訴訟リスクの板挟みになっていることはよくわかるが、議論の過程は全く不明で国民の知る権利に答えているとは言い難い状況である。

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まず最初に出たのは「10万円以下の過料(ペナルティ)請求」という記事だった。共同通信によればソースは「政府関係者」で主体は永岡桂子文部科学大臣だ。土曜日の朝から報道が出始めてこれがお昼過ぎまでに出揃った。

この時点で読売新聞は次のように書いている。解散のための自白を当事者である教団に求めているものの思ったような自白が得られない。だから高額献金をやっている人たちに聞き取りをやったりして「さらに証拠を集めるのではないか」ということになる。

解散命令請求に向けた調査を巡っては、法人の法令違反を立証する「証拠」の積み上げに時間がかかっている。不法行為を裏付けるには、問題となる行為の組織性、悪質性、継続性の3点が認められる証拠の収集が必須とされる

次にこれを覆す前のめりのヘッドラインを出したところがあった。朝日新聞とテレビ朝日である。

最も早いのがテレビ朝日だった。主語は「政府は」となっている。テレビ朝日は過料については最終調整に入ったとしているが解散請求については「今後検討」となっている。解散請求が先に来て過料は付属物扱いになった。

朝日新聞のヘッドラインはもっと前のめりだった。日付が変わって9月3日の未明になっている。テレビ朝日は「解散命令を検討」となっているのだが、朝日新聞は「政府方針」と言っている。方針の主語は岸田総理である。

岸田文雄首相は、請求に踏み切ることで政権として教団側と決別する姿勢を示したい考えだ。政権内での調整によっては、請求の時期が変わる可能性もある。

岸田総理は支持率回復のためには統一教会問題を片付けてしまいたい。だから「示したい考え」だ。ここで岸田総理が全面に出てきて「統一教会を解散させる」と言い切れれば良いのだろうがなんらかの理由で戸惑いがあるのだろう。そこで「請求の時期が変わる可能性もある」として予防線を張っている。ただ時期が変われば旧統一教会の抱えている問題の性質が変わるわけでもない。結局のところ「岸田総理の決断待ち」ということなのかもしれない。

積極的に情報発信することにしたと報道される岸田総理だがこの問題で前に出てくることはなかった。最終的に報道は明確な主語を欠いたまま「今後検討」で落ち着いた。

一定の目処が立てばと言っているので「まだ目処が立っていません」ということになる。過料報道が先行してしまったので「何だ長々と質問を繰り返したのに結局は10万円以下のペナルティだけか」というガッカリ感を防ぎたかったのかもしれない。だが、結局「今から検討します」という程度までしか言い切れない。時事通信はそれでも日曜日の夕方までは粘って取材をしたようだ。

また、一定のめどが立てば教団への解散命令を請求する方向で検討しているとみられ、同省は、請求の可否を判断するため、これまでの調査で収集した資料の精査など詰めの作業を行っている。

旧統一教会の解散請求検討 質問権に「回答拒否」、過料も―文科省(時事通信 
2023年9月3日17時48分)

共同通信もこれで質問を打ち切り過料を請求した上で解散請求を出す予定だと言っている。ただし政府に慎重意見があると言っている。こちらも夕方ギリギリまで粘ったが結局確証は得られなかったことになる。だがこの政府内が岸田官邸なのかあるいは別の部署(例えば法務省など)なのかなど詳細は全くわからない。

ただ政府内に慎重意見があり、証拠を精査して見極める。

旧統一教会の解散請求検討 10月にも宗教法人審議会(共同 2023年9月3日 18時21分)

よく「マスメディアは国民の知る権利を守る」と表現される。だが今回の報道をみると政府が迷っているということは伝わってくるが、一体何に迷っているのかはよくわからないし、誰が迷っていて、誰が最終判断をためらっているのかはよくわからない。

とにかく「まだ何も決まっていないが解散請求を目指してこれから頑張ります」という報道で(今の所は)終わってしまっている。

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