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アルゼンチンの大統領予備選挙で中央銀行と自国通貨の廃止を訴える極右ミレイ候補が躍進

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現在アルゼンチンは高いインフレ率に悩んでいる。国民は自国通貨アルゼンチンペソを信頼せずアメリカドルを持ちたがる。アルゼンチン政府はブラジルと組んで共通通貨を作れないか模索している最中だ。比較的安定しているブラジルと市場を一体化しようとしている。そんなアルゼンチンで大統領選挙の予備選が行われ、中央銀行の廃止と米ドルの通貨化を訴える候補が躍進した。慌てたアルゼンチン中央銀行はアルゼンチンペソのレートを固定し、政策金利を118%に引き上げた。

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経済政策に失敗したアルゼンチンでは自国通貨の下落と高いインフレが止まらない。2023年5月にはインフレ率が109%を記録し新しい紙幣が登場したがその額面は4米ドル相当にしかならないなどと報道されていた。政治の汚職もひどい。大統領経験のある副大統領は禁錮6年の判決を受けているが不逮捕特権で職務を続けている。フェルナンデス大統領は次の大統領候補としては出馬しないと言っている。もうお手上げなのだろう。

そんなアルゼンチンは大統領選挙を行う前に各政党が参加する予備選が行われるそうだ。政党間でいくら話し合っても実際に支持されるかどうかはわからないのだから「直接国民に聞いてみよう」というわけだ。この予備選の結果によって政党の組み替えなども行われるようだ。また支持を得られなかった泡沫候補は本選挙に参加できない。

そんな予備選で中央銀行の廃止と米ドルの通貨化を訴える極右の候補ハビエル・ミレイ氏がトップになった。現在は野党である保守系政党が有利とされているがそれを上回ったとして市場に驚きが広がったようだ。これまでの保守政党では同じことが繰り返されるだけなのだから思い切った策が必要だという訴えが支持を集めたようである。

ただしこれは大統領が変わればペソが紙屑になることを意味する。ロイターが「非公式レートは取引開始序盤に約10%下落し、1ドル=670ペソと過去最安値を更新した」と伝えていてる。慌てた中央銀行は2つの措置を打ち出した。

  • 自国通貨ペソを約18%切り下げる
  • 政策金利を21%ポイント引き上げ118%にする

中央銀行は今後10月の大統領選挙まで1ドル=350ペソで固定するとのことだ。

南米ではブラジルのルラ大統領がBRICSやアルゼンチンとの間で共通通貨を提案しているが、ミレイ氏は逆に自国通貨を放棄して米ドル経済圏に入ろうとしていることになる。

アルゼンチンはアメリカの食肉供給基地として繁栄した。しかし戦争が終わるとわざわざアルゼンチンから食肉を輸入する必要はなくなった。政府は新しい産業を育てることができず国民もそれまで同様の手厚い福祉を諦めきれなかった。

アルゼンチンは財政再建も成長戦略も果たせなかったかつての先進国がその後どうなるのかを示す典型的な没落事例だが、経済が破綻しても国家がなくなるわけではない。政治的なリーダーシップを持つことができなかった国はその後長い間苦しむことになってしまうのである。

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