タイトルで過激な印象を与えたくないので表現を抑えたが実際には「犯罪予告」ではなく「殺人やテロの予告」だ。韓国のSNSではどういうわけか殺人予告が飛び交っているそうだ。背景にあるのは立て続けに起こった無差別犯罪である。7月から8月にかけて3件が起きているという。問題を重く見た当局が改めて捜査をしたところ59件が摘発された。大半が10代だったという報道もある。背景には孤立する若者という事情のせいで「韓国も日本に似てきた」という指摘をする新聞社もある。確かに原因には共通点もあるのだが、その対応には大きな違いがある。いかにもやってますアピールという色彩が強い。機関銃で街中を巡回したり装甲車を出動させたりしている。
TBSが「インターネット上に殺人を予告する投稿 韓国で59人を摘発」という記事を出している。韓国の社会問題は日本では「ニーズ」のある問題だ。韓国に比べて我が国はうまくいっていると実感する人が多いからだろう。
中央日報は「背景には若者の社会的な孤立がある」と指摘している。検挙された大半が10代だったので「厳罰化は解決にならないだろう」と分析している。だがその対策は少々心もとない。アプリを通じて「こんなことはするなよ」と訓育すべきだと言っている。
国家捜査本部関係者は「処罰だけがすべてではない。青少年が模倣犯罪を行わないようにすることが重要」とし「教育庁の『保護者通知アプリ』を活用して犯罪予防に関する通知文を伝えている」と話した。
韓国ならではの強い競争社会が背景にあるように思えるのだが中央日報は1990年代からの不況(日本ではバブル崩壊とか失われた数十年などと言われる)を背景にした無差別テロに似ていると指摘している。いわゆる「自己責任社会」が蔓延し他人の苦しみに対する共感が少ないという社会事情は確かに日本と似ているのかもしれない。
ただし日本との違いもある。韓国では7月末から3件の無差別殺傷事件が起きている。これに伴ってネットで若者の間で殺人予告が流行したようだ。この極端な広がり具合は日本とは違っている。日本よりも周囲に影響を受けやすくそのまま実行に移してしまう人も多いのだろうという気がする。
また政府の対応も日本とは全く違っている。機関銃を持った警察の特殊部隊が市内を巡回している。中には装甲車を出動させたという事例もあるそうだ。目に見える形で「守ってますよ」と見せなければ納得しないという国民性があるのかもしれない。ここ数日の流行りは空港に対するテロ予告だそうだが、空港の警備もわかりやすいものになった。小銃発砲でさえ問題になりかねない日本で同じことをやればおそらく過剰対応だということになるだろう。
- 韓国各地に特殊部隊配置 殺害予告が相次ぐ(産経新聞)
- 各空港への「テロ予告」相次ぐ 運営会社や航空各社が警戒強化=韓国(聯合ニュース)
- 無差別殺人と殺害予告相次ぐ韓国、各地に装甲車と警察の特殊部隊を配置(朝鮮日報)
自己責任社会で困窮した若者が孤立しがちというのは日韓両国に共通している。だが一つのケースが出るとそれを模倣する人が増え国家が過剰気味に対応して見せて盛り上がりを抑止するという解決策には日韓の違いが出ている。装甲車を出しても若者の孤立が解消することはないのだからどこか対応がチグハグだとは思うのだが、これが韓国のやり方なのかもしれない。