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プリゴジン氏をめぐるプーチン大統領とルカシェンコ大統領の反応をまとめる

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プリゴジンの乱についてはさまざまな憶測が飛び交っている。ここでは切り口を少し変えて、今回の件に関するロシアのプーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領の反応を見てゆきたい。普段はルカシェンコ大統領はプーチン大統領の言いなりなどと言われている。だが「言いなり批判」を長年受けているルカシェンコ氏はおそらくそうは思ってないようだ。彼の認知歪曲能力は驚嘆に値する。一方でプーチン大統領は自分が怒っていることすら認められない。さらにプリゴジン氏を応援してきた人たちは怒りに震えている。中には現実が認められず陰謀論に逃げ込む人もいるのだという。まさに「ひきこもごも」といったところだろう。

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俗物ルカシェンコ大統領は国民に向けて大自慢大会を開催

プリゴジン氏はベラルーシに入ったようだ。だがこれはルカシェンコ氏の説明であり本人からのコメントはない。

ルカシェンコ氏は今回の件がいかに大変だったかを強調している。プリゴジン氏は半狂乱で俺がいなかったらどうなっていたかわからんと国民に向けて大自慢大会を開催した。ただ自慢しているとは思われたくなかったのだろう「今回の件で勝者はいない」と言っている。このことからもうれしくてしかたがない様子がわかる。まさに俗物中の俗物といった風情だが、こういう人は案外長生きするのかもしれない。

ベラルーシ国民には巻き込まれ不安がある。このためワグネルの徴兵拠点は置かないと言っている。だがプリゴジン氏がくれば「戦争の話を色々聞けてタメになる」とも説明している。

普段はプーチン大統領に押さえつけられていると評価されることが多いルカシェンコ大統領だが「本当は俺が支えてやっているんだ」という自意識を持っていることがわかる。持ち込まれるかもしれない問題は過小評価し「俺に任せておけば全部うまくいくんだ」という意識を持っていることもわかる。

失敗が認められないプーチン大統領

プーチン大統領サイドは「資金源」だったワグネルのオペレーションを接収しようとしている。一方で外に対しても自分に対しても失敗が認められない。失敗が認められないばかりが「失敗して怒っている様子すら見られたくない」という印象だ。

プリゴジン氏が隠していると見られる資金の捜索を行い、重装備も軍が接収した。ワグネルはアフリカから資金を吸い上げてプーチン大統領に供給する役割を担ってきたと言われているがこのオペレーションも温存する。

ただこれまで汚れ仕事をやらされてきたワグネルなしに軍事作戦が継続できるかはわからない。そもそも特別軍事作戦はすぐに終わるはずだった。プーチン大統領の判断は明らかに間違っていたがそれは認められない。

特に「今回の件でプーチン政権は弱体化した」とする海外の評価には腹を立てているようで「断固否定」の構えだ。国民に向けた演説では努めて平静を装っており「怒っているようには見えないからプリゴジン氏を許してやるのではないか」などという人もいた。だが、実際には失敗が認められないため怒っている自分を受け入れられないのではないかと思う。極めてプライドが高いのだ。

プーチン大統領は自分の資金源になっているワグネルは利用し続けたい。だが同時にそれは自身の失敗を認めることになる。このため最後までワグネルを起訴するか起訴しないのかを迷っていたようだ。結局プリゴジン氏を名指ししない形で「罪に問わない」としたところから「ワグネルを利用する」方を取った。だが「嫌いなものは口にも出さない」という傾向もあるようだ。ほとぼりがさめたら「プリゴジン氏を始末してやろう」と考えている可能性はある。なので声明の中にプリゴジン氏の名前が出てこないことが多い。

まとめ

もちろんこうした報道から「真実」がわかることはないのだが、少なくともプーチン大統領とルカシェンコ大統領が現実をどう捉え人からどう見られたがっているのかということはわかる

。特にプーチン大統領に失敗を認めるつもりがないのは明白だ。例え早い段階で「軍に騙された」ことを悟ったとしてもこの特別軍事作戦を撤回することはないのだろう。

一方で「屈服させられている」と見られているルカシェンコ大統領の認知歪曲能力は極めて興味深い。これくらいの認知変容能力がないとあの地域ではやってゆけないのかもしれない。自分は支配されているのではなく実は強力に体制を支えていると考えているようである。自慢したくて仕方ないが「自慢した」とも思われたくない。自分は謙虚で慎ましい指導者だと思われたいのだろう。

末筆になるがチェスのコマとして使われていたワグネルの人たちやワグネルの支持者たちは「自分達は切り捨てられた」と気がついたようだ。BBCがSNS上の反応をまとめているが「怒りに満ちている」という。ただ中には現実が受け入れられず「陰謀論」に逃げ込む人たちもいたそうだ。

プリゴジン氏はともかく面倒から脱出することに成功した。次のことは次でおいおい考えるのだろう。彼はおそらくこれまでもそうやってその場その場を生き延びてきたのだ。

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