8月になると広島や長崎の悲惨な映像や写真を目にする機会が多くなる。こうした映像を見るたびに「アメリカはなぜ謝罪をしないのだろう」と思う。ところが、アメリカが謝らないのではなく日本が謝罪を拒否しているのだという噂がある。
以下、ウィキリークスの暴露を基にした「噂」に関する日本語と英語の情報をまとめた。
2009年4月にオバマ大統領はプラハで核廃絶を訴える演説をした。これが評価され10月にはノーベル平和賞の受賞が内定した。ウィキリークスによると、大統領は8月頃に日本政府に対して広島を訪れて謝罪する用意があると伝えていたらしい。ところが、11月の来日時には広島には行かず、鎌倉で抹茶アイスを食べた後で、天皇陛下に深々とお辞儀をしただけで帰ってしまった。
ウィキリークスによるとルース駐日米国大使はクリントン国務長官に宛てた秘密電報で「オバマ大統領の広島訪問と謝罪は時期尚早で成功の見込みがない」と報告したようだ。断ったのは薮中三十二外務事務次官だという。
薮中外務次官が政権と話をしていたかどうかは不明だが、この時期はちょうど麻生政権から鳩山政権への切り替え時期に当たる。会談が行われたのは8月28日なので麻生政権の末期に当たると指摘する人もいる。
ウィキリークスがこの件を発表した後、英字新聞のJapan Timesが伝え、アメリカでは少し話題になったそうだ。ところが、日本では朝日新聞以外は取り上げなかった。また、2014年に山田宏衆議院議員が政府に対して質問をしたが、政府は「不正に取得された外交文書なのでコメントできない」として答弁をしなかった。ABCはウィキリークス暴露に対してアメリカ当局に確認したが、当局は「アメリカが日本に謝罪する計画はなかった」として噂を否定した。
なぜ外務省が米国政府の提案を「握りつぶした」理由は定かではない。電報から読み取れる点は2つある。大統領の広島訪問が国内の反核派を高揚させる危険があることを政府は懸念していた。彼らはオバマ大統領のプラハ演説に高い期待を寄せていたからだ。さらにすでに政権交代が起こることが予想されており、政治日程が立て込んでいるという理由もあったようだ。
電報の中では薮中氏は一貫して「外務副大臣」と紹介されている。駐日大使やクリントン長官は官僚である薮中氏の意思を政治家の意思だと勘違いしていた可能性もある。
オバマ大統領の広島長崎訪問は核廃絶に向けた大きなメッセージになったはずだ。ところが、それを妨害したのは、唯一の被爆国であるはずの日本の政府だった。日本政府にとって、8月6日と9日の記念式典は単なる形式的な儀式にしか過ぎない。これは長年原爆教育を続けてきた地元の市民を裏切るものだろう。
その後、日本では福島第一原発で大きな事故が起こった。反核運動が盛り上がり、全ての原子力発電所が停止に追い込まれた。