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【速報】韓国は独自の核兵器保有を追求せず 米韓ワシントン宣言

先ほど訪米中の尹錫悦大統領とバイデン大統領の間でワシントン宣言が発表されたと聯合ニュースが報じている。おそらく日本のメディアも報道し欧米メディアの論評の日本語記事も追随するものと見られる。

まずは聯合ニュースの内容を読み、とりあえず「こういう意味なのではないか」との考察を試みる。海外メディアが出揃えば、この「当座の考察」がどの程度正しくどの程度間違っているかが明らかになるだろう。

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  • 韓国はアメリカの拡大抑止政策を完全に信頼する。具体的にはNCG(核協議
  • グループ)を設置する。
  • アメリカは朝鮮半島で核兵器を使用する場合にはできるだけ韓国と協議する。
  • 有事の際には共同で計画を立て実行できるように協力する。

核兵器はアメリカが管理し韓国はそれを信頼するという内容だ。従来の見解を踏襲しただけであり「なぜわざわざ今こんなことを言わなければならないのだろう?」という気がする。これだけを見てもよくわからないのだが背景情報として次の記事をご紹介しておく。

実は韓国では7割の人が自前の核兵器を持つべきだと考えている。

近年その傾向は顕著だった。きっかけは2019年の米朝会談の不調である。この後北朝鮮は核兵器開発を加速させ、韓国は焦りを募らせてゆく。

韓国が自前の核兵器を持てば、日本にもそのような論調が出てくるのではないかと考える人も(アメリカ側には)現れている。その場合「アメリカはそれをコントロールすることはできないだろうしすべきでもない」という意見を産経新聞が紹介している。日本にはそれほど大きな独自核保有論議はなくせいぜいおずおずと核シェアリングについて仄めかす保守政治家がいるくらいなのだが、アメリカ人は合理的に「韓国が持ちたがるのならおそらく日本もそれを主張するだろう」と考えているのだ。

こうした背景情報を見る限り、アメリカの対北朝鮮戦略は破綻しかけていることは明らかだ。実際に北朝鮮は核開発を進めており韓国世論は苛立っている。日本より危機感が強い韓国ではすでに「自前の核兵器保有論」が出ていた。

さらにアメリカ側にもその影響が東アジア全体に波及することを懸念している人がいる。「対中国強硬政策」を前面に掲げるバイデン政権にとっては痛手になるだろう。すでに共和党の中から「バイデン政権は弱腰」という批判がある。アメリカは台湾有事の地域当事国ではなく事態に介入するためにはなんらかの地域へのとっかかりが必要である。それが民主主義の擁護である。その具体的な形の一つが「アメリカの保護によって成立する韓国」なのである。

一方で、尹錫悦大統領は現在少数与党であり総選挙に勝つ必要がある。そのためには国内経済を浮揚させる必要がある。韓国世論の中には中国ともうまくやってゆくべきだと考える人たちがいる。このワシントン宣言の背景にどのような取引があったのかは不明だが、米韓双方の思惑が一致し「韓国は独自の核兵器保有や原潜保有は追求せずアメリカを信頼してついてゆく」との宣言を出したと読み取ることができるのではないかと思う。

おそらく今後海外メディアを中心にもう少し詳細な報道や論評が出てくるものと思われる。当座は「仮置きの分析」を置きつつ詳細報道がどう今回の宣言を整理するのかを待ちたいところだ。

こうした危機感が必ずしも日本では共有されていないという点も興味深い。ワシントン宣言だけを見て唐突感を覚える人は少なくないのではないかと感じた。

韓国は米国の拡大抑止を完全に信頼し

の一節は言い換えば「アメリカが北朝鮮を絶対に止めてくれると韓国人は信じますよ」という意味になる。裏返せば「完全に信じていない人がいる」からこそこのような宣言が必要なのである。

少数与党の尹錫悦政権が国内世論を「完全に信頼」でまとめることができるのか、そのためにアメリカが何を提供するのかに注目が集まる。日本のテレビでは「とりあえず韓国が独自で持ちたがっていた原潜を韓国に派遣する」と報道しているところもあるようだ。

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