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「スパイ」を拘束すれば林芳正外務大臣は血相を変えて北京にやってきてくれる。

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元々中国との太いパイプがウリになっていた林芳正外務大臣が訪中した。名目は拘束された日本人の釈放だが会談は3時間に及んだそうである。この機会に林さんにいろいろ言って聞かせようということかもしれない。尖閣諸島の問題も持ち出したようだが、逆に80時間以上も領海侵犯が行われた。ここまでされても日本は怒れないだろうということを示して見せた形である。日中友好議員連盟の会長に二階俊博元幹事長を当てる計画になっている。「それでも日本は中国とビジネスがやりたいのだろう」とおそらく中国はわかっているのだ。選べない日本の外交戦略不在によって危険に晒されるのはハイテクやバイオなどの先端技術に関わる現地の日本人だろう。

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林芳正外務大臣が訪中した。表向きの理由はスパイ容疑で拘束された日本人の解放要求だ。だが結局色良い返事はもらえず「外交ごとなのでお答えは差し控える」とのコメントするのが精一杯だったそうだ。

尖閣問題についても話し合われたようだ。だがこの時期に合わせるように中国は尖閣諸島周辺の領海に80時間を超える侵犯を行った。これは中国の常套手段だ。現在、蔡英文総統がアメリカ大陸を歴訪中だが10機の中国戦闘機が中間線を超えて見せているそうである。泰然自若の笑顔と軍事的なプレゼンスで統合的に「強気の姿勢」を見せるのが中国式なのである。日本には対抗する統合的戦略がない。

国内向けには南西諸島にミサイルを配備して台湾有事に備えるという宣伝が行われている。だが今回の尖閣諸島への80時間を超える領海侵犯事例を見る限り、中国がこれを恐れているとも思えない。アメリカの要求でミサイルを買い込むがビジネスの関係を崩したくない日本が強硬手段に出ることはないだろう。単なるハリボテと見られているのかもしれない。

南西諸島をミサイルで埋め尽くしてもおそらくこの状況は変わらないのだから兵器(防衛装備品)の量についてうんぬんするのは滑稽でしかない。結局は統合的戦略がないことが侮られているだけである。憲法9条のせいではない。

外務大臣との会合では笑顔は封印して見せている。日本人の解放を求めているのだから当然である。だが李強氏との面会では笑顔の封印が剥落しかけており「林さんの本音はどこにあるのだろうか?」と不安になる。

もともと宏池会はアメリカだけでなく中国や韓国ともうまくやってゆきましょうというバランスが移行路線である。二階俊博元幹事長が日中友好議連の会長に就任することが決まっていることからも宏池会系の岸田政権が中国を重視しているのは明らかだ。林芳正氏は元の日中友好議連の会長であり中国に太いパイプがある。だが、おそらくその人脈はビジネス上のものなのだろう。「人質外交まがいは良くない」と首脳たちを説得できるのであれば良いのだが、そのような話は一切聞かれなかった。

では、林外務大臣は河野太郎外務大臣が駐日韓国大使にやったように駐日中国大使を呼びつけて「極めて無礼である」とパフォーマンスすればよかったのか?ということになる。こちらは中国を刺激し対話通路を閉ざす結果になるだろう。

結局のところ、アメリカに従って中国を刺激するような発言に同調しつつ、やっぱりビジネスだけは引き続き行いたいというどっちつかずの態度が問題なのだといえる。

結果的に中国には多くの駐在員が危険にさらされる。

中にはバイオやハイテクなどの専門性の高い人がおり、彼らの知識は狙われている。さらに中国との友好関係を構築するために長年尽力している人たちがいる。彼らのカウンターパートが「反中国政府」の疑いをかけられた時に「親交のある日本人を落とせば何かわかるかもしれない」と期待される懸念がある。最も弱いリンクなのだ。

確かに対話のルートを閉ざすわけにはいかない。だが、「スパイ」を捕まえれば外務大臣を呼び出すことができるという実績ができてしまった。岸田政権は本音ではアジア重視路線なのだから安倍政権よりは「対話」がやりやすい。さらに宏池会系自民党が日中関係が悪化すればこれまで積み重ねてきた既得権益が損なわれると危機感を持っているのではないかと疑ってみたくなる。単に慌てているだけではまさに相手の思う壺だ。

習近平国家主席に次ナンバーツーの李強首相は「遠い親戚より近くの友人」と満足そうに述べたそうだ。確かに面倒ごとを起せば血相を変えて飛んできている上に領海侵犯しても辛抱強く話を聞いてくれる林芳正外務大臣は中国にとっては大切な「友人」なんだろうという気がする。

できれば林芳正さんには中国の便利な友人よりも日本のリーダーとしての役割を優先してもらいたいのだが、今回の訪中を見る限り、そんな期待はするだけ無駄なのかもしれない。

長年、米中の間で「なんとなく外交」をやってきた日本の戦略性のなさが悔やまれるが、即効性のある解決策は見つけられない。このまま押される一方なのかあるいはこれから一つひとつ積み上げてゆくのか。日本には二つの選択肢しかない。

参考資料

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