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メドベージェフ氏の終末の日予告はどちらにとっての終末を意味するのか?

おそらく現実的には起こらないのだろうが「クリミア半島の橋の攻撃」と「終末兵器の使用」の可能性が取り沙汰されている。できるだけ考えたくないという人もいれば盛んに既定路線だと煽り立てているといった具合だ。

こうした予測が出るのはカディロフ首長が小型核のしようを仄めかしメドベージェフ元大統領も「クリミアへの攻撃はウクライナの終末になる」という予想を出しているからだ。

だが状況を見ていてこの終末がどちらに向かうかはわからないと思った。メドベージェフ氏は明らかに外に向かっての攻撃を意図しているのだが「自分達の足元が崩れかねない」という可能性については失念している。いわば頭に血が昇った状態にあると言える。

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タス通信の英語版は2022年7月17日の記事でメドベージェフ氏の発言を次のように伝えている。「クリミアが攻撃されれば終末に直面するだろう」というのだ。

国際社会から見れば明らかに一方的な侵攻だがロシアには好戦的な主戦派がいる。特に目立っているのはチェチェンのカディロフ首長と大統領経験者のメドベージェフ氏である。焦りと希望的観測が入り混じり言動が過激化しているようだ。頭に血が昇った状態になっていて冷静な分析はできなくなっているものと考えられる。

ロシアは黒海艦隊の司令塔となる「モスクワ」を破壊されておりスネーク島と呼ばれる南部の要衝となる島も奪われてしまっている。この上で橋が通行不可能ということになればロシアはクリミア半島のコントロール権を失ってしまうだろう。ロシア側が長年積み重ねてきたものが崩れかねないという事態に冷静でいられるはずはない。

ただしロシアが主張する「テロ説」は希望的観測に基づくものなのかもしれない。今回はトラックから火が出て隣の貨車に引火したことになっているが話が出来過ぎている。さらにトラックから出火したとするとその人は生きて戻れないと予測していたことになってしまう。果たしてそんな協力者がいるものだろうか。

だがその意図は明白だ。

Business Insider(英語版)は「プーチン大統領を個人的に屈辱している」と指摘する。旗艦モスクワに対しても言えることだがこの橋も戦略上だけでなく象徴的な意味合いが強い。ポリティコの欧州版もプーチン大統領の誕生日の次の日に起きた象徴的な出来事として「屈辱」という要素を伝えている。プーチン大統領の顔を潰すことが狙いだった可能性が高いが「誰が」についてはよく判っていない。

しかしながらロシア側は一方的に犯人を決めつけて報復を行った。

まず、日経新聞が「報復」についてまとめている。

  • 連邦保安局に橋の通行安全を確保するように大統領令が出た。
  • ザポロジェ(ザポリージャ)市の集合住宅がミサイル攻撃され17名の死者がでた。

さらにザポロジェ(ザポリージャ)原発にも攻撃があり外部電源が失われた。現在非常用電源が使われているが冷却が失われかねない危険な状態が続いていた。電源は回復したようだが今後も危険な状況が続く。原発が暴走すればその被害はロシア領にも及ぶがおそらくもうそこまでのことを考えている余裕はないのだろう。

結局ロシア側はキーウなど各地を空爆することで聖書に書かれている終末の日のようなものを演出しようとしたようだ。電力インフラに被害が及び70人以上の死傷者(死亡11・負傷60)が出たそうだ。BBCロイターなどが被害を伝えているのだが国際社会からの批判も高まっている。報復目的で民間人を無差別に狙っているのだから戦争犯罪に疑いの余地はない。また当初の予定ではキーウはできるだけ無傷で確保するつもりだったのだからここでも冷静さを失っているのは間違いがなさそうだ。

だが、ここは一度冷静になって立ち止まってみたい。

これらの見方はすべてロシア側の分析が起点になっている。つまりトラックが外から狙われてたまたま被害が大きくなったという見方である。仮にこれがそうでなかった場合には内部の反抗という可能性が高まる。つまり最初から主戦派の他に反プーチン派や戦争終結派がいるということだ。主戦派は「頭に血が昇った状態」になっていて、チェチェン紛争に伴うテロの多発があったという時代のことを忘れている。あるいは意識的に忘れようとしているようだ。

仮にこれが内部からの反乱だった場合には図式が全く変わってくる。つまりロシアの体制が終末を迎えるということになってしまうのだ。つまり終末の日は外ではなく内側に向かっているということになる。国際社会からは猛烈に反発されまた内部にも不測の事態があることになる。

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