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和歌山県知事選挙候補者選びで世耕弘成参議院幹事長が顔を潰される。背後にはやはり二階俊博氏の影。

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和歌山県知事選挙が11月10日に行われる。自民党や保守が強い地域でありこれだけではニュースにならない。土壇場で世耕弘成参議院幹事長と県連が推していた候補が立候補を断念された。

有力候補として浮上しているのは元国民民主党議員の岸本周平氏だ。つまり自民党県連はかつての敵を応援することになりそうである。読売新聞が「二階氏の意向くんだか、和歌山知事選巡り町村会が自民に反旗…世耕氏との主導権争い背景」と伝えているが時事通信も「自民、前国民議員の推薦検討 11月の和歌山知事選」としており岸本氏一本化が既成事実化されそうだ。

民主主義とは何か考えさせられるが、調整した世耕弘成参議院幹事長の顔が潰された形になり二階俊博氏の影響が噂されている。

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最初にこのニュースを見た時「本決まり」なのではないかと思った。時事通信は「自民、前国民議員の推薦検討 11月の和歌山知事選」と伝えている。だが読売新聞の記事を読むと「いったいなぜ今このニュースが出たのだろう?」という疑問が湧く。タイトルは「二階氏の意向くんだか、和歌山知事選巡り町村会が自民に反旗…世耕氏との主導権争い背景」となっている。何となく県民世論を岸本氏一本化に持ってゆこうとしているようにも思えてしまう。

  • 世耕弘成氏が推した候補は町村会や建設業界の団体からの反対を受けて「擁立が困難になった」と9月13日に表明した。
  • 背景には二階氏と世耕氏の確執があるとされる。世耕氏は衆院へのくら替え出馬を目指すことを公言しているが、世耕氏が地盤とする県南部は二階氏の選挙区である現3区と重なる。
  • 二階氏は16日、党本部で森山裕選対委員長と会談し、今後の対応について「丁寧にやっていかないといかん」と語った。和歌山1区で自民候補を破ってきた岸本氏には県連内で反発もあるが、推薦する方向で調整が進められるとみられる。

世耕氏が顔を潰されたのは確かだが地元では二階氏の名前は出てこない。ところが党本部では「二階氏が森山選挙対策本部長と話をして」いて自民党の候補を破ってきた岸本さんで決まりそうである。読売新聞はこの党本部の会談を掴んだのかもしれない。こうなると地元県連も調整を諦めて「かつての敵」を応援せざるを得なくなる。

実は読売新聞の記事には新しい情報はあまり出ていない。すでに8月の時事通信にこんな記事が出ているからだ。知事交代で動きだす? 和歌山政界のパズル【政界Web】というタイトルになっている。随分前から二階・世耕という対立軸で語られていたようだ。

岸本氏はすでに出馬を表明していたが、かつて自民党の候補と争っていたという経緯があり自民党県連が納得していなかった。このままでは保守・保守の分裂選挙になることが予想される。この時点では二階氏と世耕氏の動向が注目される。これが8月時点での情報だ。

つまりこの後で世耕氏が県連の意向を汲み独自候補を探してきたものの「保守系が分裂するよりも勝てる候補でゆくべきだ」という二階氏の意向が勝ったものと考えられる。いかにも選挙重視の二階氏らしいと思わせる。

ただし二階氏の子息と衆議院選挙に鞍替えしたい世耕氏が「対決する」ことが予想されるため地元では二階・世耕の代理戦争だと囁かれている。県連は世耕さんがまとめていたが町村会はそうではなかったのだろう。

二人の中があまり良くない(あるいは利害が対決する)ことが知られており二階氏が世耕氏の意向を無視したことは明らかだが、表向き二階氏は何の発言もしていない。このため読売新聞は確定的な書き方は何もしておらず「意向汲んだか」となっている。今風の言い方をすれば忖度したのではないかということになる。自民党も岸本氏でゆくと決めたわけでもなければ二階氏が何らかの発言をしたわけでもないというわかりにくさがあるが、それでも「事実上岸本さんに決まり」という空気が造られてゆく。

顔を潰されたというのは大袈裟かもしれないのだが、読売新聞は「衆議院選挙を睨んで世耕氏の影響力を削いでおきたいのだろう」という観測になっている。一方二階氏サイドも「二階氏の関係者は「先に刀を抜いてきたのは世耕氏だ」と強調する。」と穏やかではない。まるで戦国時代のような言い振りだ。いずれにせよすでに実績のある岸本氏に対抗する候補を今から見つけてくるのは難しそうだ。勝者が誰かは明らかでないものの、世耕氏と県連が希望を通せなかったということだけは確かなようである。

共産党も候補者を出すようだが保守が強い和歌山県では事前情勢で事実上ほぼ知事が決まってしまったことになる。近年コロナ対策などが知事の力量で大きく左右されたところから知事をどう選ぶかはかなり重要だ。特に県民広報やITの活用などを考えると今後は若い知事の方がいいのではないかと思える。

岸本氏は現在66歳だが二階俊博氏も現在83歳だ。一方で59歳の世耕弘成氏らが推していた和歌山市出身の小谷知也氏は43歳だった。やはり年齢だけを見ると古い世代が新しい世代を潰しにかかっているなあという印象になるが和歌山県民は選ばれた候補者を信任するしかない。政策や危機対応能力による選択の機会はなさそうである。

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