ブラジルで大統領選挙が始まる

ブラジルで大統領選挙が始まった。このところ中南米では反米左派政権が多く誕生している。ブラジルも右派のボルソナロ大統領に代わって左派のルラ氏が大統領に復帰する公算が高いそうだ。大統領選挙には12名が立候補しているが有力候補者は現職とルラ氏だけである。ただしこのルラ氏には正式には決着していない汚職疑惑がある。






今回は引用する文章が多いため参考記事は文末にまとめて記載した。

ルラ大統領は2003年から2011年まで2期8年大統領を務めた。この時代のブラジルの景気は良かったためルラ大統領時代に戻って欲しいと思う人たちが多いようだ。ペロトブラス・エレトロブラスなどの国営エネルギー企業の民営化に反対し、低所得者向けの現金給付制度「ボルサ・ファミリア」などの復活を目指している。

一方ボルソナロ氏が推し進めてきたのは年金改革など「小さな政府」政策だった。このためキリスト教福音派や軍人などの支持者が多いという。一方で少数者に対する暴言などでも知られ「南米のトランプ」などと言われることがある。さらに新型コロナが蔓延し世界経済は減速している。

ルラ氏の実績から比べると経済状態は見劣りするためボルソナロ大統領は「低所得者に優しい」政策を実行した。ロイターによるとボルソナロ大統領を応援する議会が通した法案には「自営業トラック運転手への1000レアル(185ドル)支給やタクシー運転手への給付、社会福祉費の50%増額などが含まれる」という。このため不支持率は少し下がったが「統治手法に賛成しない」という人はまだ57%もいるそうだ。ロイターがIPECの調査を紹介している。

経済的にはFTA協定の再開に注目が集まる。「南米のトランプ」であるボルソナロ氏は環境政策には非常に後ろ向きだ。EUやメルコスル(南米南部共同市場)はボルソナロ氏の反環境の姿勢に反発しておりFTA交渉は停滞している。

低所得者に優しく環境保護にも熱心というルラ大統領の復活の方が「南米のトランプ」の続投よりも好ましいことのような気がする。最も懸念されるのは中南米の社会主義ポピュリストたちに多く見られる身内びいきの姿勢である。つまり汚職体質がある。

実はルラ大統領は汚職で収監されていた。「二審で有罪になった時点で収監される」という法的解釈があったからなのだそうだ。ルラ氏が関わっていたとされるのはペトロブラスを舞台にした大規模な政界汚職だった。一審で禁錮9年6月、18年1月に二審で禁錮12年1月の有罪判決を受けていたが、最高裁判決は出ていなかった。

結局この裁判は「裁判自体が無効だった」という最高裁判所の判断でいったん「なかったこと」になっている。裁判は南部のクリチバで行われたのだが「首都ブラジリアで再審が必要である」ということになった。ただし、最高裁は「ルラ氏が無罪である」とまで言っていない。つまり裁判をひっくり返すことができないから「クリチバには管轄権がない」として最終判断を収めた可能性がある。

これもおきまりの展開だが低所得者左派に人気がある大統領の再選が予想されると金融市場が動揺し通貨が下がる。この時も最高裁判決を受けて通貨レアルは急落したという。さらにこれに対抗する右派の大統領も対抗措置としてバラマキ政策を行うと財政に対する信頼性は揺らぎ通貨がさらに下落するという傾向が生まれる。

ボルソナロ大統領は国民からの人気は高くないが経済界はおそらくボルソナロ氏の再選を望むだろう。財政再建を目指して小さな政府志向の政治を行ってきたからだ。

ルラ氏が大統領に返り咲けばそもそも疑惑のあるペトロブラスが温存される上に政府の財政状況が悪化することが予想される。ルラ氏の後継だったルセフ大統領にも汚職の疑惑があった。最終的にルセフ氏は議会から弾劾されてしまうのだがこの時の容疑は「社会保障関連予算の不正執行」だったそうだ。大統領選挙を有利に進めようとしたことが反発された。

アルゼンチンでは債務整理を行った経済担当大臣が大統領・副大統領と対立して辞任するという騒ぎも起きており先行きが不安視されている。

こうした事情はあるが、それでも左派の大統領は南米では人気がある。

参考文献

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