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ラジャパクサ大統領がスリランカから脱出しラジャパクサ家支配が終焉

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経済破綻宣言をしたスリランカでは暴動が発生し大統領官邸にはデモ隊が押し入った。官邸では現金が1785万ルピー(約680万円程度)発見されたが略奪されることはなく当局に届けられた。一方、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領はドバイへと逃亡を試みた。空港では入管当局に出国を拒否されたのだが諦めずに空路でモルジブに向かったようだ。モルジブ経由でドバイに逃げるのではないかと言われているが、別のメディアはとりあえずシンガポールに向かったようだと書いている。この一連の騒ぎをロイターは(ラジャパクサ)一族支配の終焉と表現した

新しい大統領は20日に選出される予定だが経済再建の道のりは見えてこない。現在、国民の敵意は国家運営を丸投げしたかつての政治的ライバルである首相に向かっている。

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ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が国外逃亡を図るものの阻止されたというところはまではBusiness Insiderがまとめている。元になった記事はAFPのものである。

空港には大統領専用のVIPスイートがあり一般国民に襲われたり嫌がらせをされるのを避けようとした。ビジネスインサイダーは弟のバジル・ラジャパクサ元財務大臣も空港で出国を拒否されたと書いている。バジル氏が国外逃亡できたのかどうかはわかっていないが空港から慌てて逃げたそうだ。

結局、ラジャパクサ大統領は軍に頼ったようだ。軍用機での国外脱出に成功した。行き先はモルジブだった。

ワシントンポストによるとゴタバヤ・ラジャパクサ大統領はもともとアメリカ国籍を持っていたようだが外国人は大統領になれないため米国籍を放棄していた。ワシントンポストはヒンズー系の新聞を引用し「アメリカにビザを求めていたが棄却されたようである」との観測を書いている。

ゴタバヤ・ラジャパクサ氏が国外逃亡しおそらくはかなり贅沢な暮らしをしていたことがわかった。これでラジャパクサ家の権威は完全に失墜したといって良いだろう。だがなぜそもそもラジャパクサ家はここまでの権勢を誇ったのか。

ラジャパクサ家はシンハラ系仏教の家系である。シンハラ人はスリランカの人口の7割を占めるのだが、シンハラ人という民族概念はインド南部に住んでいるヒンズー系のタミル人との対立の中から生まれたという側面があるそうだ。スリランカ独立後は「外からやってきた」タミル系が差別されシンハラ人が優遇されたことから孤立して分離独立運動を起こしたという経緯がある。

スリランカでは2009年にマヒンダ・ラジャパクサ大統領のもとで内戦が終結した。2019年にもテロが起き「テロの混乱をどう解決するのか」が選挙の争点だった。アメリカから帰国したゴタバヤ・ラジャパクサ氏は「内戦を終結した兄のマヒンダ・ラジャパクサ氏以外に治安を回復させられる人はいない」と訴えて大勝したとJETROの記事は紹介する。その後、憲法の20次改定が行われ大統領は強い権限を得た。

このように強い権限を得たラジャパクサ家だったのだが、裏ではかなりの蓄財をしていたようだ。ドバイに逃げようとしたということはそこで暮らしが立つということなのだろう。

一方で、スリランカはコロナの影響による観光不振で経済がつまづき始めた。とはいえ中国への返済もしなければならない。インドにも接近するがどうもうまくゆかない。こうして次第に経済が回らなくなる。

権限が強化された大統領に敵意が向かうのは当然と言えるのかもしれない。期待が大きかった分だけ落胆も大きかったのだろう。国民が政策の中身を理解してラジャパクサ家の支持したとは思えない。今回も大統領官邸や首相官邸に押し入ることはできるものの、経済を再開させるための具体的な方策を知っているわけではない。

この2019年の大勝の影響が残っているため国会の第1党であるスリランカ人民戦線(SLPF)の党首は依然兄のマヒンダ・ラジャパクサ氏である。一時党勢が衰退していたのだがマヒンダ氏を党首に招き入れ2020年8月の国政選挙で145議席を得て大勝していたのだが、現在マヒンダ氏の消息はわからない。

一方でウィクラマシンハ氏の統一国民党(UNP)の国会議員は現在1名だけである。2015年に与党になったが2020年の選挙で大敗した。結果ウィクラマシンハ氏は造反され多くの議員が統一人民戦線(SJP)という別の政党を作っていた。

今後事態収拾を図るのは議会なのだが議会の構成はまとまりを欠くままである。かなり厳しい交渉が予想されるため国家再建の道のりは遠いとかんがえてよさそうだ。

ラジャパクサ大統領は政治的ライバルだったウィクラマシンハ首相に国を投げ出した。国民の敵意はウィクラマシンハ首相・大統領代行に向かい、今度は首相官邸が襲撃されたそうである。強い権限を持った大統領が空位のまま敵意を向けられた首相は無期限の非常事態宣言を発令した。今後この混乱が収まり、次の大統領が決まり、経済対策を立てて、IMFと交渉することになる。長い道のりになりそうである。

ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は不逮捕特権を持ったままで出国に成功した。モルジブでは警護付きの車に乗りどこかに向かったそうだ。その後の消息は不明である。ヒンデゥスタン・タイムスによるとモルジブにも大勢のスリランカ人が働いており国を捨てたラジャパクサ大統領を保護しないように抗議運動が展開されたそうだ。この新聞によるとラジャパクサ氏が向かったのはシンガポールということになっている。

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