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アメリカ政治の撹乱が新しい仕事になったトランプ前大統領

日本語のメディアではあまり紹介されないのでしばらく忘れていたのだがトランプ前大統領は今もアメリカの政治をかき乱し続けている。民主党側も負けずに応酬しておりこれぞ劇場型政治という風情だ。トランプさんの新しい仕事は「アメリカ政治の撹乱」になったようだ。日本で言うところの炎上系政治YouTuberという感じだろうか。

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ドナルド・トランプ前大統領が最近のインタビューで「プーチン大統領はハンター・バイデン氏の不正の証拠を開示すべきである」と主張したそうだ。英語版だけの記事になるのかなと思ったのだがしっかり日本語にも翻訳されRSSリーダーではかなりの人気を集める注目記事になっている。

トランプ氏は古くから政敵を攻撃するためにロシアやウクライナを利用してきた。2016年のヒラリー・クリントン氏が個人的なアカウントを使って電子メールのやりとりをしていた時にロシアなどと結びつけて盛んに攻撃をしていたことを記憶している人もいるだろう。今回のプーチン大統領への提案はその最新版といった風情だ。

もちろん、具体的な証拠はない。ハンター・バイデン氏はウクライナや中国などで「コンサルティング」事業を展開しており多額の報酬を受け取っていたとされるが本人は汚職に関与したことなどないと証言しており、汚職を裏付ける事実も出ていない。

トランプ大統領は2024年の大統領選挙を狙っているとされている。だがおそらくはそのキャンペーンそのものがトランプ氏の仕事になっている。つまり大統領を目指す男でいるということそのものがトランプ氏にとってはビジネスなのである。トランプ前大統領にとってバイデン大統領攻撃は演目のひとつだ。

ここにはアメリカ政治の複雑な状況がある。アメリカのような巨大な国で大統領候補になるためには金がかかる。これまではエスタブリッシュメントと呼ばれる人たちが大統領候補を支えてきたのだが格差の広がりによってエスタブリッシュメントが信頼されなくなった。そこでトランプ氏のような候補がもてはやされるわけだが彼もなんらかの手段で資金を集めなければならない。そうこうしているうちに資金集めそのものが新しい劇場型ビジネスになってしまうのである。

不動産王として知られるトランプ氏だが実際の職業はリアリティショータレントだ。最近はSNSを追い出されてしまったので自前のSNSや親トランプ派のニュースサイトを活動拠点にしているが、もしYouTubeアカウントが残っていたなら彼の職業はYouTuberといってよかったのだろう。普通のYouTuberではない。炎上系政治YouTuberだ。

トランプ氏にとって「みんなの心の大統領」でいることは彼の生業の一部になっている。心の大統領にはふさわしい乗り物が必要だ。最近、トランプフォースワンと呼ばれるプライベートジェット(ボーイング757)が故障した。その後で政治グループが「トランプ・フォース・ワンを救うための基金に寄付をしてほしい」というメールを支持者に送ったそうだ。このメールを開くと毎月最大2,500ドルの定期的な寄付を集めるページに誘導されるのだという。

これも寄付金ビジネスだ。

おそらく同じような事情はバイデン大統領にもあるのだろう。ファミリービジネスなどを持たないバイデン大統領は産業界からの支援を集めるか中流層の関心をつなぎとめて支持してもらう必要がある。この二つは両立しないのだが奇妙なバランスが取られている。そのつなぎめがトランプ氏に攻撃されていたのである。

アメリカ合衆国がだんだん貧しくなってくると様々な形で大統領特権や経験を金に変える必要が出てくる。韓国や中南米の一部の国ほどひどくはないがそれでも似たような状況になりつつあることがわかる。任期中に職権を利用するのは犯罪だがその後にビジネスを展開するのは違法ではない。さらに言えばアメリカの民主主義を失墜させてもそれは犯罪ではない。

もちろん民主主義の失墜を懸念する人はいる。アメリカの民主主義が破壊されているというわけだ。CNNはこの立場に立って「トランプさんはトランプさんなので仕方がない」という無関心がアメリカを危険な状態にしたと、発言を放置することの危険性を指摘した。英語では「That’s just Trump being Trump」という表現になるそうだがこれを放置してはいけないというのだ。

だが、おそらくトランプ氏一人を問題にしても根本的な問題は解決しない。アメリカンドリームに見放されて政治や社会に何も期待しないという人がかなりの数いるのだろう。彼らにとって唯一の望みはバイデン大統領らの活動を妨害しアメリカの民主主義をめちゃくちゃにすることである。

彼らの破壊衝動はわかりにくいのだがキレイゴトを並べて良い人のように振る舞う人に対する敵意と憎しみがトランプ願望として息づいていると考えるとわかりやすい。

近年バイデン大統領は予算案の編成やウクライナ情勢などでイライラを隠さずにプーチン大統領に当たり散らすようになった。

最近の世論調査では地方在住・非大学卒業者が強くバイデン大統領から離反している。民主党支持者の中にもバイデン大統領から離反する人がいる。すでに政治に興味をなくしトランプ劇場を囃し立てる人もいれば、なんとか踏みとどまろうとしているがバイデン大統領が信じられなくなりつつあるという人もいる。アメリカは揺れている。

民主党側も徹底抗戦の構えである。アメリカ下院にはまだ議会襲撃事件とトランプ前大統領の関与を調査する委員会が残っているそうだ。下院がトランプ元大統領が議会襲撃を首謀あるいは関与しているのではないかと捜査しているのだ。

ABCの報道を読むと当日の電話記録に午前11時から午後7時まで8時間の空白があったと報道されている。現在下院ではこの間に何があったのかを埋める調査を進めているそうだ。

この委員会でジャレッド・クシュナー氏がオンラインで証言に立つであろうという報道がなされなりゆきが注目される。イバンカ・トランプ氏と夫のクシュナー氏はトランプ前大統領と極めて近い位置にいたためにトランプ前大統領が空白の8時間に何をやっていたのかということを知っていたものと思われる。

これまで政治的な利害からトランプ前大統領に不利な証言をしてこなかったクシュナー氏だが、トランプ前大統領のインナーサークルから外れたという観測があるそうだ。トランプ前大統領は2024年の「再選」を狙っているとされているのだがクシュナー氏はそのスタッフには入っていないそうである。

このようにアメリカの劇場型政治には終息の兆しが見えない。だが最近のインフレに続き経済がリセッション入りするのではないかという噂もあるそうだ。

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