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ギニアのクーデターと混乱し続ける西アフリカ

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ギニアでクーデターが起きた。テレビ局を制圧しクーデターを宣言するという典型的なクーデーターだった。大統領監禁動画がネットで拡散しているそうだ。2010年以来大統領だったコンデ政権が3期目を迎えていたそうである。背景にあるのは富の集中だ。ボーキサイト(アルミニウムの原料)・金・ダイヤモンンドなどが採れるそうだが70%以上を占めるとされる農民には何のメリットもない。コロナ禍で経済は行き詰まり燃料費が高騰した。だが大統領は野党の反対を押し切り強引に3期目の当選を決めている。この「腐敗した政権」を倒すために立ち上がるしかなかったと軍人たちは訴えているそうである。

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旧フランス領の西アフリカではクーデターが絶えない。マリでは2021年5月にクーデターが起きていてニジェールでは3月にクーデター未遂があった。

ギニアも西アフリカの旧フランス植民地の一つである。人口は1,200万人程度で東京都道程度である。資源は豊富だが一人当たりのGDPは世界の最貧国あたりのランクにある。

この辺りの宗教を調べて見るとイスラム教徒か現地宗教が多い。フラニ人という遊牧系の人たちが周辺国にも広がっていてフランスが入る以前にイスラム教を広めたようだ。フランスとポルトガルが入ってきてこの地域を支配するようになったが宗教までを置き換えることはなかった。フラニ人はナイジェリアでも農業系の民族との間で衝突している。

この地域は同じような言語であったとしても農業か非農業かで民族が違っていることがある。また国境を超えて遊牧系の民族が広がり(つまり言語が違う)衝突を起こすこともある。民族状況だけを見てもヨーロッパとは全く違った複雑さがある。国民は人工的に作られるものであり自然状態で成立するものではないということがわかる。

ただ諸勢力が争っていれば「そのうち成るように成る」のかもしれない。日本の戦国時代のような感じである。だがアフリカはそうではなかった。1960年代に諸国が独立しても周辺国が介入し続けた。これが状況を複雑化させている。ギニアビサウはポルトガル植民地だった。ポルトガルが植民地を手放そうとせずソ連・中国などからの介入を受けた。ギニアやセネガルなども独立勢力を支援したそうである。ナイジェリアはイギリスの植民地だったがフランスが介入して1967年にビアフラ戦争が起きている。ナイジェリアはイギリスが支援しビアフラをフランスが支援した。

ギニアはフランス支配に対する拒否反応が強かったようで早々と独立した。1958年にフランスの植民地に自治国家のステータスを与えたものをフランス共同体という。通貨・防衛・安全保障などをフランスせざるを得ないと考えた国は当初「フランス共同体」を選択したがギニアは95%が加盟を拒否した。フランスは何の面倒も見ず「はいさようなら」と撤退しギニアは混乱した。フランス共同体そのものも1961年までに形骸化しシャルル・ド・ゴール大統領が「共同体はもはや存在しない」と宣言したそうだ。フランスは自国の利益にならない国の国家建設には大して興味がなかった。これが現在まで尾を引いており難民が北上する原因になったりもしている。

このためギニアは社会主義化しその後で軍人がクーデターを起こすというおきまりのルートを辿った。その後で地下資源をめぐる私物化が起こり国民経済が発展せずにいつまでたっても豊かになれない。2019年にエコという通貨を導入するという話があったのだがコロナ禍で中止され2027年までに延期されている。現在はCFAフランと独自通貨の混合体制だが、この域内でクーデータや未遂が相次いでおきている。

  • ユーロと固定レートで連動する単一通貨CFAフラン圏:ベナン、ブルキナファソ、ギニアビサウ、コートジボワール、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴ
  • 独自通貨:カーボベルデ、ガンビア、ガーナ、ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ

JETROの記事によるとエコを導入するためには域内経済が安定する必要がある。しかし、各国はその目標を容易に満たせそうにないということだ。

もちろんフランスも援助をしようとしている。この地域の安定が自国の安定につながるからである。マクロン大統領は旧フランス語圏だけでなくアフリカとの関係を再構築しようとしていたそうだ。中東情勢にも積極的に介入しイランとサウジアラビアが参加したアフガニスタン情勢を話し合う会議にも参加しようとしたりしている。

だがマクロン大統領の足元も不確かである。一度作り出した混乱が自然に収まることはない。混乱は周辺地域に広がり今でもヨーロッパに「移民・難民」という形で脅威を与える。マクロン大統領一人で解決できそうな問題でもない。

おそらく現在のアフガニスタンも同じような状態に陥るのだろうなと思える。アフガニスタンの数十年先が西アフリカと言えるのかもしれない。

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