ざっくり解説 時々深掘り

自民党隠しの千葉県知事・千葉市長選挙がはじまった

千葉県知事選挙と市長選挙がはじまった。今回は県知事退任に伴い千葉市長が任期を残して退任した。今度は市長の椅子を狙う若葉区選出の市議会議員が一人退任したために若葉区では玉突き・トリプル選挙になっている。

この選挙が面白いのは自民党への対決型の選挙ではないということだ。対決ではなく地元では「静かな自民党離れ」が始まっている。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






新型コロナ禍の中の選挙ということがあり選挙運動が全くと言っていいほど見えない。だから政策が聞こえてこない。代わりに「誰と誰が仲がいい」と言うようなことを示すポスターがたくさん出ている。誰か市議会議員とつながりがあれば「この人が応援しているから自動的にこの人を応援しよう」となるのだろう。誰も知り合いがいない無党派の人は一体誰を応援していいのかがわからないのではないかと思う。あとはポスターの見た目で選ぶしかなくなる。

冗談ではなく本当にそんな感じなのだ。

前千葉市長は「自民党政治をぶっ壊せ」などと言わずに県知事選挙に出ているのがもう一つの特徴だ。これがますます選挙を見えにくいものにする。与党が実績を喧伝し野党がそれを否定するという図式がないのである。2009年の民主党旋風の中で生まれてそのまま生き残った「政権」である。つまり千葉は民主党政権が失敗しなかったらどうなっていたのかがわかる稀有な土地なのである。

このため自民党の中にもこの人を応援する人がいるようだ。これが却って自民党離れを印象付ける。彼らは所属こそ自民党だがおそらく地元に利益が還元されるならば誰でもいいのだろう。

千葉県知事選挙は形式的には自民党対立憲民主党である。共産党は独自候補を出すので野党相乗りはない。だが、立憲民主党を代表して自民党を倒しますというようなメッセージングにはなっていない。だから自民党が結束しないという面白い現象が起きている。

おそらく国政選挙でも同じような戦い方ができるだろう。優秀な候補者さえ立てられれば(政策的にまとまらなくても自民党を否定しなくても)自民党に勝ててしまうのである。それくらい千葉には自民党系の人材がいない。

県知事選挙には自民党所属の県議会議員も出ている。千葉市緑区選出の弁護士だ。森田健作元県知事はこの前県議会議員を応援している。二階幹事長は一応この候補を応援するように指示を出しているようだ。だが報道を見る限り元県議会議員を応援していない自民党の議員たちもいるようである。

新聞は「与党の足並みに乱れ」と書いているが、どちらかというと自民党の地元議員たちはもはや中央の指示には興味がないようだ。自分たちが政治活動をするのに有利な人に乗って置きたいという気持ちがあるものと思われる。外から応援に入ってくるひとはいるだろうが、中の自民党国会議員は様子見を決め込んでいるように見える。

千葉市長選挙も似たような状況だ。立憲民主党系は県知事選挙で前千葉市長を応援することにしたようだ。当然市長選挙では前千葉市長の後継の前副市長を応援することになる。ところが自民党は割れている。16名の自民党議員がいるそうだが12名は前副市長を応援することに決めたのだと言う。残りの4名が元若葉区選出の市議会議員を応援する。街中のポスターを見ていると自民党の市議たちがまとまっていないことがわかる。

前若葉区選出市議はもともと桜田義孝議員の秘書をしていたそうだ。経歴を見たところ不動産会社にいた経験があるようである。桜田義孝議員も建設会社の社長さんである。ただ桜田議員は柏市選出であり千葉市とは縁がない。つまり「土建つながり」なのである。

こちらも中央の影は見えないし、もっと言えば千葉氏選出の自民党議員がどちらを応援しているのかもよくわからない。桜田さんはその意味では外の人であって、個人的なつながりでおそらく勝てないであろう候補を応援している。

千葉市の政治に詳しい人は前市長の人気を知っているので後継候補に期待を寄せているが、大阪と違い「維新」のような政党がない。あくまでも個人的なつながりによって政党にこだわらない選挙戦が繰り広げられている。自民党の人たちは党を割ってまで新しい会派を作ろうなどとは思っていない。勝った方に付けばいいのである。

これが千葉が千葉らしいところだ。表立って対立もしないのだがかといって中央にはあまり興味がない。そして外から見るととてもわかりにくい。よそ者がいても気にしないが、かと言って中にも入れてくれないし説明もしないという独特の閉鎖性がある。

千葉市は巨大な農村・漁村なのである。

県知事選挙にはかなりたくさんの候補者が出ているのだがポスターが全く貼られていない。おそらく最初から選挙運動をするつもりはないのだろう。

NHKなどで政策が取り上げられてもらえるうえでYouTubeなどでもネタにできる。日曜日になりいわゆる泡沫候補のポスターが一枚だけ加わったが中身を読んで見るとYouTubeチャンネルの宣伝になっていた。「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」を組織して出馬しているそうだ。候補者の顔はピエロのように白塗りであった。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です