ざっくり解説 時々深掘り

「負けたくない戦略」の自民党本部と千葉市長選挙

カテゴリー:

もうすぐ千葉市長選挙がある。森田県知事退任に伴い現千葉市長が選挙戦に名乗りを上げた。千葉市長が空席になるので県知事選挙と同じ日に市長選挙もやるのだ。当初無風になるのでは?と思われていたのだが、ここに来て市内は面白い事態になっている。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






お正月頃から市内の商店などにポスターが貼られ始めた。一つは千葉市長の後継ととみなされている候補者と自民党市議が一緒に映っているポスターである。自民党演説会と書いてある。ほどなくして革新系市民団体もこの人のポスターを掲示した。千葉市は共産党を除きオール与党体制なのでこういうことが珍しくない。あまり争いを好まない気風がある。

ところがこれとは違うポスターが市内のいたるところに貼られている。1973年生まれの市議会議長経験者が若手の市議との組み合わせである。この人も対抗馬として立候補が予定されている。

告示直前ということで市内の一等地に議長経験者の陣営ができていた。桜田さんの顔写真だけが表に出ている。

自民党の市議が立候補するのだから中央政界から応援が入ってもよさそうだ。だが、どちらにも中央からの大物の応援はない。

唯一の例外が桜田義孝衆議院議員である。議長経験者の顔写真と桜田さんの顔が掲載されているポスターがあるのだ。桜田さんはどちらかと言えば失言で知られている二階派の議員である。「ああこの人千葉なんだ」と思った。千葉第8区だそうで地盤は柏市だそうだ。

現在の千葉市長は民主党の市議会議員を一期務めて市長になった。前の市長が収賄で捕まったという事情もあるのだがいわゆる「民主党旋風」が吹いていて公共工事が悪玉だと考えられていた時期の当選だった。

だが市長は国政にあったような対決型の政治は行われなかった。土地開発の問題で多額の損金を肩代わりし財政はガタガタだったのだが「ゴミ焼却施設の更新をガマンして財政再建をやりましょう」と提案し協力体制を構築した。おそらく第2区の自民党国会議員との間にも第1区の非自民系国会議員との間にもパイプがあるはずだ。

どちらも「自民党」を唄っている。だが中央からの人の顔が全く見えない。ちなみにこの他に共産党からの候補者の立候補が予定されている。

表立って語られることはないのだが、管・二階執行部は党中央が全面に出ることを避けているのではないかと思う。北九州市議の現職が6名落ちただけで「自民党の凋落」というようなことを言われた。地方の動揺はすぐに中央政界に広がる。

千葉市でも現職後継が「非自民」ということになり自民対非自民という対立構造に見えただけで「負けた感じになり格好が悪い」と思われてしまうだろう。さらに事実上は保守分裂になっている。保守分裂選挙も格好が悪い。なかなか見せ方が難しいだろうなと思う。

しかしながらこれは中央の事情である。地方の議員にとっては「自分たちの椅子を保証してくれるのが良い執行部」な訳で、いざという時に応援してくれない執行部を恨んでも当然と言えば当然であろう。さらに上の動向を忖度して「自分を応援してくれない国会議員」を次の選挙で応援したいなどと思うはずもない。

おそらく、報道に出ることはないのだろうが、今回の千葉市長選挙は後々の衆議院選挙に微妙な影を落とすのではないかと思われる。

おそらくこうしたことは各地で起きているのだろう。広島自民党では県連の会長が辞任するという騒ぎが起きているそうだ。河井克行元法務大臣の次を決める広島第3区の後継が公明党の候補者に決まったからである。参議院選挙の遺恨も残っていて「県連がバカにされた」と憤る地元の人もいるようだ。

宮沢洋一県連会長は「とても納得できない。広島県連がバカにされているのではないか。大変厳しい意見が多々でた。一度ならず二度までも県連の意志というものが党本部に覆されたということは、本当に残念なことであるし、また県連を預かるものとして自分の非力といったものを強く感じている」と話した。

自民 再選挙の候補者 1週間で決定

宮沢洋一議員は宮澤喜一元首相の甥にあたり岸田文雄元政調会長ともいとこに当たる。安倍・菅陣営はここに大金(1億5000万円)をつっこんで選挙区を撹乱した上「負けが目立つと困るから」という理由で公明党議員の要求を飲んだ。広島は党中央の意向には逆らえないが抗議の意思は示したかったのだろう。

どうやら国と地方の関係が、自民党の内部で変わり始めているようである。これまで自民党は地方選挙の応援に意識を振り向けることができたが新型コロナ対応に忙殺され会食しただけで叩かれる現在、地方にきめ細かい配慮はできない。するとたちまちこうした問題が起きてしまうことになる。こうした動きが報道で伝えられることはほとんどないが、実はイデオロギー対立よりも「普段の恩の貸し借り」と「普段のメシ」の方が選挙へのインパクトは強いのではないかと思う。

野党が「立憲主義を取り戻す」などと言っていたが実は日本の政治はイデオロギーでは動いていない。実際の日本の政治を動かしているのは小さな利害関係者の集まった村の集合体だ。中央が村の利権を保証できなくるとさまざまな問題が起こる。水面下では変化の予兆のような動きが起きているのではないかと思う。

今はまだわからないが、後になって振り返ると「コロナでメシが食えなくなったことで自民党が凋落した」ということになるのかもしれない。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です