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「ネトウヨ」は「安倍さんが連れてきた困った人たち」だった

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先日、岸田文雄前政調会長が大坂なおみ選手についてコメントしていた。BLM運動に連帯を表明した姿に共感したのだろう。この時「多様性」という言葉を使いプチ炎上したらしい。安倍さんの置き土産だなと思った。

この人たちはおそらく「自民党支持」だと思うのだが、岸田文雄さんがどういう人かはよくわかっていなかったのだと思う。おそらく興味もないのだろう。

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もともと岸信介内閣の後継になった池田勇人総理を源流とする保守本流の宏池会というグループがある。岸信介はアメリカとの同盟を背景に対等な日米関係を目指したのだが、アメリカに追従してベトナム戦争に巻き込まれることを恐れた日本国民はこれに反対した。その後に登場したのが池田勇人総理大臣だ。国民の目を経済成長に向けることでこの危機を回避した。その代償として憲法はそのまま放置されて今につながる倒錯した議論の源流にもなっている。

日本はこの後オリンピックを経験し高度経済成長に向かい、憲法や防衛の議論は放置されてしまったのだ。

池田勇人は吉田茂の「弟子」の大蔵官僚なので政策重視の姿勢がある。吉田茂らは英語に堪能だったので西洋的な思考態度が身についており政党政治化よりは政治姿勢がリベラルである。このため宏池会は今でも政策は得意だが政局には疎いなどと言われるそうである。宏池会は大平正芳・鈴木善幸・宮澤喜一という三人の総理大臣を輩出した。宮澤喜一はいまでも通訳の英語を直したという逸話で知られる。その宏池会が失速するきっかけになったのは加藤の乱である。

リベラルな背景を持つ岸田文雄が「多様性」を訴えるのは実は当たり前で「とても自民党らしい」姿なのである。だが加藤の乱以降の自民党しか知らない人たちにとってはこれが異質に見えるのだろう。

このTweetには多くのコメントがついているのだが、そのまま「今の自民党」がどんな人たちに支えられているのかということがわかる博覧会になっている。「安倍総理が連れてきた困った人たち」は7年間の間ネトウヨと呼ばれてきた。表面上は保守主義を標榜して愛国的に見えるからである。だがこのコメントを見ると保守とも愛国とも言えないようである。どういう名前をつけるといいのかと思ったのだが「安倍さんが自民党に連れてきたあの困った人たち」以上のネーミングが思い浮かばない。

彼らの中には脳内序列があるようだ。

  • 白人男性
  • 白人男性みたいな俺たち日本人
  • 女性
  • 黒人や日本に住むアジア系の人たちや日本国民=日本民族という枠に入らない人たち
  • アジアの人たち

彼らは自分たちをアメリカの白人に重ね合わせている。このためアメリカの黒人運動を無法者の運動にしておきたいのだろう。大坂なおみ選手が女性ということもありバッシングの対象になっている。女性の方が発言力が強いのも許せないのである。

安倍総理が自民党に連れてきたあの困った人たちの中には脳内序列ができていてそれに反する事実は受け入れられないのだということがわかる。多様性というのは秩序・序列が崩れた状態なので、彼らにとっては単なる混乱状態にしか見えない。だからネトウヨは多様性を恐れる。

例えば、大坂なおみ選手は日本国籍だが「日本人と黒人」は彼らにとっては別の存在なのでそれを自分たちの脳内秩序に加えられない。理解できないものは怖いので「出てゆけ」ということになる。差別しているわけではなくわからないから恐れているのである。

さて、この多様性が理解できないことがわかるもう一つのTweetを見つけた。一般人のものなので引用はしないが、在日朝鮮人は帰化するか出てゆくべきだと言っている。多様な存在が理解できないことがわかる。

そもそもこの人は在日朝鮮人が税金を支払っているということもよくわかっていないようだが面白かったのは「外国籍を持っている」ことが「何かあった時に逃げられる」と捉えている点である。裏返せば「日本人に帰化すれば日本的な義務を全て背負わせることができる」と考えていることになる。さらにここから展開すれば「日本人は相互監視されている」という前提を受け入れているのである。日本人には「逃げ場がない」という前提があるのだ。

自分たちの脳内に序列を作り自分たちを上位に置いた上で誰かを下位に置いて支配したい。あるいは優越感を得たいという気分があることになる。その背景にあるのはおそらくは閉塞感と見通しのなさなのだろう。

だが、その見通しのなさは無知に裏打ちされている。そもそも自民党がどんな人たちからなる政党であるかということにも関心はなさそうだし、アメリカの黒人運動についてもよく理解できていない。自分たちの脳内地図に合わせて都合がいい事実だけを当てはめてゆく。

この現象は日本独自のものだと思ったのだが、アメリカでも同じようなことが起きているらしい。CNNにTikTokで得た金を「アメリカの歴史教育に使うべきである」というトランプ大統領の提案を扱っていた。セキュリティ上の措置だとい理由をつけて企業を恫喝し、その売却費用を自分によこせと言っている。それを使って新しい教育プログラムを作るというのである。だがそのプログラムは黒人の教育家から反発を受けていた。キーワードは1619プロジェクトである。

Trump, reacting to reports that the 1619 projects would be taught in California schools, wrote on Twitter in early Sept., “Department of Education is looking at this. If so, they will not be funded!”

Trump wants $5 billion from TikTok deal to teach people ‘the real history’ of US

トランプは1619プロジェクトがカリフォルニアで教えられるという報告に反応して9月初旬にTwitterに「教育省がこれを見ている。もしそうなら彼らには資金を拠出すべきではない」と投稿した。

1619プロジェクトとはアメリカ合衆国が独立前から黒人奴隷を使っていたということを教えようとするプロジェクトであるという。The New York Timesが始めたプロジェクトらしいという話を読んだ。「朝日新聞の自虐史観」のアメリカ版である。おそらくこれはトランプ大統領の支持者の白人保守層から見ると受け入れがたいのだろう。彼らの脳内秩序に反する危険思想だからだ。

トランプ大統領はたんにこれを選挙に利用したいだけで、本気でアメリカ合衆国の歴史教育について考えたり議論を喚起しようという姿勢は伺えない。

そもそもTikTokがアメリカ合衆国の会社に事業を売却すればその儲けは彼らのものになるはずである。それを取り上げるのは資本主義の伝統的価値観とは著しくかけ離れている。だが中国の企業なら何を言っても何をやってもいいという歪んだ考え方がある。トランプ大統領はアメリカを取り戻すと言いながら資本主義を内側から破壊しているのである。

民主主義は無知と閉塞感によって破壊されかねないということがよくわかる。同じように日本の民主主義・資本主義が中から破壊されてしまうのか、それとも安倍総理の連れて来た困った人たち(a.k.a.ネトウヨ)が政治に興味を失うのかについては注目して見てゆきたいと思っている。

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