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日本のマスコミが伝えないアメリカの流血大統領選挙

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8月29日にオレゴン州ポートランドで一人の男が射殺された。CNNの記事によるとその男の名前はアーロン・J・ダニエルソンという。トランプ大統領の支持者でBLM抗議運動から「アメリカを守る」ためにデモに参加して何者かに撃たれたのだ。容疑者は見つかっていない。大統領選挙でついに死者が出たのである。このニュースが全く報道されていないということもないとは思うのだがほとんど注目されなかったのではないか。

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オレゴン州ポートランドは5月から始まった黒人の抗議運動が盛り上がっている地域の一つである。ジョージ・フロイドの運動が沈静化すると思われた矢先、ジェイコブ・ブレイクの銃撃事件が起こり運動が再燃した。

ところがこのブラックライフマター運動にはカウンターの動きが出ている。それがブルーライフマターである。青は警官の制服の色だ。白人中心のアメリカの秩序を警察が守っているのだから白人はそれを応援しなければならないという運動である。トランプ大統領はローアンドオーダー(法と秩序)と言ってこの運動を刺激し続けている。

実際に現場で何が起きているのかはよくわかっていないようだ。と同時にSNSでは断片的な情報が飛び交っている。さらにリベラルなテッド・ウィラーポートランド市長とトランプ大統領はこの件をめぐって言い合いを始めている。主に大統領がリベラル憎悪を利用して選挙戦を有利に進めたいものと思われる。コロナ対策で行き詰まる大統領は有権者の目を別の運動に移す必要がある。オレゴン州知事のケイト・ブラウンも加わり共和党と民主党の政争に発展している。

テッド・ウィラー市長の呼びかけは悲痛である。まず犠牲者に同情を示しているのだが、そのあとで「犠牲者の復讐のために集まってこようとする人がいるようだがどうか来ないでくれ」と言っている。政治家として集会の自由を奪うことはできない。だが来てほしくない。だがそのあとはトランプ大統領への非難の言葉が続く。民主主義と人権に攻撃をくわえて人種差別を煽ってきた4年間だったというのである。

市長は「アメリカ憲法にしたがって美しい共同体を守ろうとしているだけ」なのに却って衝突のホットスポットになっているからだろう。

トランプ大統領の主張は日に日に病的になっている。自分たちが強気になるのは自己防衛であるという論調だ。強硬に愛国的な言動を繰り返す人に多く見られるメンタリティである。このての主張は「自己防衛のためには何をしてもいい」ということになる。おそらくアメリカにはこれに共感する少数の人がいるのだろう。そしてその他大勢はこの騒ぎにうんざりしているはずだ。ただ感情に彩られた論議はお互いに癒着し最終的には制御不能になる。この状況を春先からずっと観察し続けているのだが「どうしてこうなった」のかがさっぱりわからない。

自己防衛のためなら何をやってもいいという姿勢は選挙への信頼も損いつつある。アメリカの選挙は11月に確定しないかもしれない。

民主党が支配する下院はは郵便公社長官の証人喚問をしようとしているようだ。郵便を遅らせて大統領選挙を妨害しようとしているという疑惑を持っているからである。郵便投票はアメリカでは確立された手法だがトランプ大統領は「郵便投票なんかやったら大変なことになる、ロシアなどが情報操作をする」という虚偽の情報を流し選挙を混乱させようとしている。

民主党と共和党にに代表される左派と右派が対立する中、おそらく少なくないアメリカ人がこの対立にうんざりしている。彼らは問題を解決して平和な暮らしを取り戻したいだけなのだが新型コロナの問題は解決せず遂に大統領選挙をめぐって死者が出る騒ぎになった。負けた陣営がすんなり負けを認めるかどうかはわからない。ヒラリー・クリントンさんはバイデン候補に「すぐに敗北宣言を出すべきではなく徹底抗戦すべきだ」とアドバイスしたと伝えられている。

このところネトウヨの研究をしてきたのだが日本のネトウヨは内弁慶なので社会を不安に陥れることはない。しかしアメリカのトランプ支持者はそうではない。彼らは行動するがゆえに実際の流血が引き起こされる。アメリカには自発的で組織されていない民兵のような人たちが生まれていて武器でデモに挑もうとしている。極めて局地的ではあるがSNSを使った内戦のようなものが起き始めていて、それを既存メディアが拡大して伝えるというこれまでになかった状況が生まれているのである。

アメリカは膨大な軍事費を使い自分たちの理想を守ってきた。だが皮肉なことに破壊活動は中から新色的に進んでいたのである。

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