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総理大臣が雲隠れする日本と出てきて騒ぎを起こすアメリカのどちらがより不幸なのか?

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朝からワイドショーで「安倍総理が会見してくれない」というニュースをやっている。出てこないことがニュースになるのは前代未聞だろう。今の日本では政権批判は不正解なのでテレビも政権批判はしない。「出てきて説明してくれれば安心できるのに」という言い方になっている。一瞬、日本は不幸な国だなと思った。

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ワイドショーが苛立つのも当たり前である。成長者に正解が見せられないからである。高齢化したワイドショーの視聴者たちはテレビが正解を伝えて入れるのを雛鳥のように待っている。

だが安倍総理が出てこないのも当たり前だ。安倍総理が醸し出す安心感は官僚が作る正解をマスコミのカメラの前で読んで見せることから作り出されてきた。恵俊彰は「国民は絵がみたい」と繰り返していた。本質をついた正論だとは思うのだが、テレビは偽りでもいいから安心感を与えたいというまさに亡国の理論である。マスコミと政府が共同して大本営を作り上げてきたのがこの数年の日本なのである。

政府には正解が見えない。7月に入ってから新規感染者が増え始めているのだが、7月22日からGoToトラベルキャンペーンが始まった。政府関係者は「因果関係がわからない」とか「まだ重症者が出ていない」のでキャンペーンを中止しないと言っているようだ。一方で安倍総理は二階幹事長や岸田政調会長などと会食を繰り返していると言われている。おそらく何が正解に見えるのかを話し合っているのだろうが、手品のタネはもう残っていないのではないか。少なくとも赤坂の料亭には落ちていないだろう。

こんな中、包囲網が徐々に狭まってゆく。東京都医師会はついに「このままでは日本全体がどんどんどんどん感染の火だるまに陥っていく」から法律を改正してほしいと言いだした。野党も憲法53条に基づいて国会を再開するように要請する方向だ。東京都や大阪府は自粛の要請を再開した。1日あたり1万円弱の補償をするそうだ。「これでは足りない」という話になると思うのだがそれを見越しているのだろう。「国が国会を開いてくれないから仕方がない」ということができるようになる。正解を提示するのは政府である(べきだ)という期待が膨らんでゆく。

じゃあ「出てきたらいいのか?」という話になるのだがおそらくそうではない。アメリカはもっと大変なことになっている。もうボロボロなのである。

直近のニュースでは4月から6月にかけてのGDPが32.9%下落したそうである。つまり経済の1/3がなくなってしまったことになる。非科学的で不安定な発言を繰り返しているトランプ大統領はバイデン候補に追い上げられている。

こうした不安定さはアメリカの外交に暗い影を落とす。中国攻撃に転嫁しようとして総領事館を閉めたのは記憶に新しいが、同じような手法で同盟国のドイツとも対立している。ついに「友人である同盟国の顔に平手打ちを食らわせるようなもの」として共和党の重鎮ミット・ロムニー上院議員を怒らせてしまった。

日本でも秋の総選挙が取りざたされているがまだ時間的な余裕がある。アメリカは大統領選挙が11月に迫っている。このままでは落選が確実なので、ついに選挙を遅らせたいと言いだした。ところがこれも次への布石だと疑われているという。つまり「俺が言ったように不正選挙だから選挙を認めない」と言い出すのではないかというのである。

こんなことできるはずはないと思うのだが緊急権を使えば可能になるかもしれないという。アリゾナ・ウィスコンシン・ミシガン・ペンシルベニアなどの州で選挙無効を宣言してしまえば暫くは政権に居座ることができるかもしれない。プロセス自体は合法なのでいったん行使されてしまうとなすすべがないということのようだ。

普通の大統領であればこんなことはしないだろうが人格的な危機に見舞われているトランプ大統領が何をしでかすかはわからない。会見を聞いているとこっちまで不安な気分にさせられる。ウイルスをチャイナヴァイルスと呼び、自分のやった政策はことごとくうまくいっているが、世界各地では再流行が始まっていると指摘した上で、民主党の知事がいるところでは問題が起きているというようなことを延々と言っている。こういう会見をずっとやっているのである。

もともと自我の崩壊を防ぐために自己強化した人がどんどんと自分の言ったことに閉じ込められてゆく。するとそれにしたがって反発が起きるので耳をふさぐためにどんどんと声を大きくしていっているという具合である。日本の総理は正解を見失い仲間内に閉じこもる。一方アメリカの大統領は大声で正解を叫び続け「周りの不都合な真実は聞こえない」という。これがコロナウイルスが突きつける国の姿だ。

おそらくアメリカの政治は11月近辺に大混乱するだろう。この時日本がどのような状態になっているのかはわからない。そんな中で安倍総理は年末をめどにコロナ後のあるべき姿をまとめると言っている。日本はまともな年末を迎えることができるのかが心配になるのだが、どうなったとしても現実を直視なければならないだろう。結局はわれわれが望んで作り出した絵なのである。

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