どうやら日本はITという面では後進国になってしまったようだ。今回はその原因を考える。日本の「老害」を排除しないとこの問題は解決しないのではないかと思った。日本が旧式のシステムで頑張っているのは例えて言えば東ドイツがトラバントで満足しているような状態である。このせいで日本の生産性は著しく毀損しているが、遅れにさえ気がつくことすらできなくなっているのではないだろうか。
まず問題をおさらいする。新型コロナの自粛に対応するために、政府は持続化給付金という仕組みを準備し5月1日から申請が開始された。フリーランスは見殺しなのかというTwitter世論に押されたという側面もあるのだろう。感染拡大防止の観点から電子申請とされた。審査にはだいたい2週間かかるという。おそらくこの時点で大勢が殺到しサーバーがダウンしたようだ。
「2週間経っても受理されない」ということになり不安を持つ人が増えた。だが二回申請してしまうと不正受給になる。そのため「審査中なのかそれとも審査に落ちたのか」という電話をした人が「どうやら経済産業省のコールセンターは状況を把握していないようだ」と気がついた。
今回特異だったのは、数が多かったという点である。おそらくこれまでもこうした不具合はあったのだろう。だが数が少ないせいで「かわいそうな人だ」と放置されてきた。
今回は数が多かったので「支払いされていない」という人や「自分は支払われた」という人がSNSで連絡を取り始めた。申請は順番通りに処理されていないようで5月1日に申し込んだ人の中に三週間待ったが支払われていないという人が大勢いるそうだ。中には情報をサイトを作って現状をまとめた人もいる。TBSの報道特集はこのサイトと同じ情報を流していたのでおそらくサイトの制作者にインタビューしたものと思われる。
この情報を読むとどうやら最初のサーバーパンクの時点で添付ファイルと申請者を結びつけるデータが破損したようである。それを後回しにしたので順番に違いが出たのだろう。おそらくシステムが回復しなかったのでやり直しをしなければならないようだ。
そもそもこんなシステムさえ作れないのは何事かとはは思うのだが、済んでしまったものを怒っても仕方がない。ここは「ファイルが壊れましたからもう一度やり直してください」とお願いするしかない。ところがそのようなお願いは行われていないようである。また問題のあるシステムも放置されているようだ。
与党にシステムに精通した人がいない限り政府がこの問題を対処することはないだろう。さらに、野党も状態を把握できないはずだ。把握できなければそもそも内容を理解していない与党の政治家に対して辞任を迫ったりして単に貴重な時間を浪費することになる。報道特集を見ていてマスコミの側もおそらく「何が起こっているのか」を理解できていないのではないかと思った。報道特集はかろうじて問題を取り上げていたがウェブサイトをなぞっていた。
おそらくコンピュータに詳しい人が経済産業省のITの担当者と話をしなければ何が起こっているのかを取材すらできない。原因はわかっているがそれが「大人の世界」に伝わらないのだ。マスコミはこれまで「政府は隠している」という前提に立っていた。つまり正解を知っているがそれをきちんとやっていないというのが前提なのだ。言い換えると政府が把握していない問題を追求できない。そういう勉強をしたり知識のある人を取材の責任者にしていないからだ。
おそらくは単純なミスなのだろう。サーバーに人が殺到して何かが壊れてしまったのだ。原因を追求したり壊れたデータを一生懸命に回復するよりも壊れている人にもう一度申請してもらったほうが早いはずである。それが本来のスピード重視だ。
だがそれも理解されないに違いない。おそらく誰も「データベースのデータ構造が壊れた」という概念が理解できないだろう。おそらく現実世界で紙が破れたというような想像しか働かないはずだ。書類と申請を結びつけるデータが破損したという概念が理解できないのだ。
これが今回言いたかった「老害」である。もちろんコンピュターシステムに慣れた高齢者もいるだろうし40代・50代の「若手」でも老害化している人はたくさんいるだろう。年齢というより紙ベースの昔ながらのシステムに慣れてきた人たちが作り出している問題だ。
不幸なことにたくさんの事業が「もう支払いができない」として事業継続を諦める25日が迫ってきている。
折しも安倍政権・自民党の支持率が下がってきているという記事が毎日新聞から上がってきた。政府は焦っている。支給の拡大に向けて調整を始めた。
山経産相は「現在進めている給付作業に影響を与えることがないように細心の注意を払いつつ、今後、具体的な制度の詳細設計や必要となるシステムの構築を進めていく」とし、6月中旬に申請受付を開始できるようにしたいと述べた。
持続化給付金、対象外だったフリーランスなども申請可能に=梶山経産相
今回の問題の総括をしていない経済産業省が「細心の注意を払う」と言ってもせいぜい業者に「ちゃんとやれよ」と注意するぐらいだろう。隠しているならまだいいのだがおそらく問題を理解できていないのではいかと思う。
10万円給付のオンライン申請は止まったところも出てきたが持続か給付金にはオフラインの窓口がないのでそれもできない。雇用調整助成金は柔軟な対応をするように通達が出ているようだがハローワークには伝わっていない。さらに持続か給付金の申請数を増やすことになれば、おそらくまた同じような(あるいはそれ以上の)問題が起こるだろう。記録をぞんざいに扱い、IT産業を下に見てきた政府もろとも中小・フリーランスが潰されようとしている。政権末期とはいえ恐ろしい話だ。政権末期というより社会全体が問題を管理できなくなっている。
時事通信にはさらっと恐ろしい事も書いてある。普通に考えると分かりそうなものだが、今の政権がこれに気がついているのかはわからない。
ただ審査に時間を要することから、申請から受給まで約2週間かかる手続き期間はさらに長くなりそうだ。
フリーランス救済へ要件緩和 新興企業も対象 持続化給付金、来月中旬から受け付け
我々は東ドイツがトラバントのような遅れた車しか作れないのを見て笑っていたような世代だ。「世界には立派な車がたくさんあるのに東ドイツはなぜトラバントなのだろう」と思っていた。だが、日本はIT分野では世界から笑われる側に回ってしまった。台湾でも韓国でも新型コロナ関連のシステムはうまく動いている。だが、日本のIT産業はトラバントのような前時代的なシステムしか作れないのだ。我々は東ドイツなみに落ちぶれてしまったのである。
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