2020年2月1日にイギリスがEUから離脱した。インターネットでライブ放送をやっていたがなぜかお祭り騒ぎだった。時を同じくしてアメリカ政府が中国に滞在していた外国人を入国させないということを決めた。湖北省に渡航歴がある人は強制的に隔離されるという。世界は分裂しつつあるのではないかと思える光景だ。
イギリスはかなり厄介な状況に陥るかもしれない。EUから脱退した国がこれまで以上に繁栄してしまえば離脱傾向が強まりかねないからである。離脱した以上は恩恵は受けられないと警告している。これから2020年の年末にかけてが移行期間なのだが交渉がスムーズに行くかどうかはわからない。さらに北アイルランド問題を棚上げしたことで「実質的な切り離しであろう」と分析する人もいる。この予想が当たればイギリス連邦は分裂に向かうだろう。もともと移民という外部からくる災厄から逃れたいという気持ちから出た行動が今度は内部分裂を引き起こすのだ。
一方、アメリカでは中国からの渡航者を受け入れないという発表をした。WHOが「そのような極端な措置は必要ない」と言っていたものを全く無視した形である。このところアメリカは単独主義を貫いていて国際機関の取り決めを無視し続けている。
日本もこれに倣ってホッとしたのか湖北省から来た人を追い返す(実際には来させない)ことに決めたようだ。前代未聞の措置などと言われていたが、結局はアメリカに倣っただけということがわかった。これについて形ばかりの力強さを演じているところが安倍劇場の絶妙なところである。安倍晋三首相は「前例にとらわれては、この前例なき危機に対応できない。柔軟かつ機動的な対応を進めてほしい」と各閣僚に指示。と伝えられている。三次感染者も出ている今何の意味もない対策だが、ああこれで安心と考える合理性のない人たちを引きつけることだろう。愚衆の王の面目躍如である。
新型ウィルスはワクチンが出来ていないので少なくとも夏頃までは拡散防止に努める必要がある。だが「東洋人お断り」というような状況も出始めているなかで、これが不必要な差別や拒絶につながるのは間違いがない。おそらく日本人は東洋人の国でありながらこうした差別や拒絶に一役買ってしまっている。イギリスもアメリカも日本も外からやってくるリスクを恐れるあまり分裂に向かっている。
これまで、環境問題を「これまでのイデオロギーに代わる新しいイデオロギーだ」などという取り上げ方をしてきたので、ある意味理想化しているのではと思われた方もいらっしゃるかもしれない。しかし、実際には豊かさを世界各地に広げようとしてきた人たちが南から登ってくる移民の集団を見て恐れおののいた結果なのだろう。「人類みな仲良く」と言えなくなった人たちが新しい理想を求めて環境問題に行き着いたということはあるのかもしれない。すると環境問題も逃避ということになってしまう。つまり、リベラルなイデオロギーというのは人々の逃避先であってそれが何かを解決に向かわせるということはなさそうだ。
そのような意味でも世界は閉じ始めているのかもしれないという気もする。
こうして世界は色々な壁を築こうとしているのだが、アメリカではメキシコ国境に急いで建設した壁が風で倒れてしまったそうである。グローバル化の波は人間が壁を作ったからといって押しとどめることはできないのではないか。
さらに日本は中国の完全な切り離しを行われなかった。安倍政権のネトウヨ的右傾化は中国という仮想敵をおくことで支持を集めるというやり方なのだが、自民党の中には「このままでは地方も特定の産業も国内では食べて行けないから中国に頼りたい」という人たちが大勢いる。おそらく地方は中国からの観光客に期待しているし建設業もオリンピックが終わったあと大きなプロジェクトが必要である。だから習近平国家主席を国賓としてもてなして中国との関係を強化しようとしているのである。おそらくは成長を期待しているわけではない。ただ生き延びたいのだ。
だから日本が右傾化して「大変なことになる」という予測は当たらないだろう。憲法第9条が掲げる平和主義が世界を救うということもない。結局は我々が蔑むことが多い欲と利権だけが世界の分裂を防いでいる。つまり、金儲けを諦めてしまった世界は分裂に向かうしかないということになる。