ざっくり解説 時々深掘り

ブーゲンビル独立投票

日本は資源のない島国だが、稲作信仰を持った単一民族化したことで西洋諸国に占領される事なく独自の国家を形成する事ができた。我々はそれを当たり前の事だと思っているが世界にはこれが当たり前でない地域もある。オセアニアに新しい独立国ができるかもしれないそうだ。場所はパプアニューギニアの外れにあるブーゲンビル島である。「新国家誕生なるか? パプアニューギニア・ブーゲンビル自治州で住民投票開始」という記事が伝えている。このブーゲンビルの事例を見ながら日本について改めて考えたい。

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有権者は20万人だそうだが800箇所の投票所で2週間かけて選挙を行うそうだ。インフラがあまり整っていないことがわかる。地理的にはソロモン諸島の一角だが島内には様々な言語がある。語族に分けただけでも4語族があるそうだ。

もともとブーゲンビル島を含むニューギニアはオランダ・ドイツ・イギリスの植民地だったが、第一次世界大戦のあとにまとめられてオーストラリアの委任統治領になった。ニューギニア島の西側はオランダ領を経てインドネシアに併合された。東側は自治州を経て1975年に独立する。ところが1988年にブーゲンビルで独立要求が起きた。ブーゲンビル島で金や銅が産出するからである。銅はニューギニアの貿易量の40%を占めていた時期もあるそうだ。この配分を巡って騒ぎが起こるのは当たり前の事である。2001年に和平協定が結ばれ自治権が拡大し続けこの度「独立投票」まで来た。

記事を探すとブーゲンビル島はソロモン諸島と結びつきが強いが銅利権を守るためにニューギニアに編入されオーストラリアが介入して独立を阻止しようとしていたという話が見つかった。20万人がこれに対抗できるはずもないのだからブーゲンビル側にも多分介入した人たちがいたのだろう。

日本は資源はないが域内に「民族的な結びつき」がありそこから産業をおこす事ができた。ところがブーゲンビル島・ニューギニアにはこうした「民族」という概念がない。にもかかわらず資源が出ることで外国の介入を招くという構造になっている。

パプアニューギニアはまだ貧しい国(レベルとしては最貧国ではない)なので自前での資源開発はできないだろう。また域内には相互に意思疎通できない多数の言語集団や民族がいて彼らの独立騒ぎに発展しかねないという懸念があるそうだ。これは主要民族が自らの言語を「国語化」してインドネシア人やマレーシア人という民族を作ろうとしたのに比べると「民族国家化の失敗」と言えるかもしれない。民族ができないという事は民族資本ができないという事でもある。そこで外国を頼る事になってしまう。

当然そこに目をつける国もある。中華人民共和国が太平洋地域に展開したがっている。太平洋にはもともと台湾(中華民国)と仲が良かった国が多いのだが、台湾からの断交も続いている。さらに中国との関わりを拒絶したツバルのような国もある。中国の戦略はインフラ開発の資金を提供し提供先の国を外交的に取り込んでゆくというものである。この地域にはそれに依存する国と警戒感を持つ国という二つのグループができているようだ。アメリカとの間に軍事協定(コンパクト)を結んでいる国があり、どうしても米中対立の最前線になってしまうのである。

太平洋地域はアメリカと中国という覇権国家同士の争いの最前線になっていると言われているのだが、それはかつてのような軍事力による対立ではない。資本・外交・軍事などを一体化させた構想になっている。世界規模の自由貿易時代にこうした旧世代型の国家総動員体制が生まれるというのも不思議な話だ。

確かに世界では覇権争いが起きているのだが、どちらかというと軍事力というより総力戦になっている。誠に残念なのだがお花見の名簿も管理できない政府では太刀打ちできないのではないかと思われる。だが一応関与を継続しようという気持ちはあるようで1億円の無償資金援助をして選挙に協力しているのだそうだ。現在の安倍政権には戦前型の国家総動員体制に憧れる人たちが大勢いて「中国に対抗したい」という意識があらわれているのかもしれない。

こうして民族なき独立国家が生まれるかもしれない。その地域にある資源を自分の影響下に収めたいと考えている国があるのだ。

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