花見ゲートが新しい展開を見せている。はっきり言ってうんざりしているので「なぜ政府はネタを提供しているのか」と腹立たしい思いもある。しかも、よりにもよって蓮舫議員に。だが、この件を追って行くと政府・内閣府が明らかにパニックに陥っていることがわかる。パニックの怖さは「やっていいことといけないことの違い」がわからなくなることである。内閣府が議員の個人情報を第三者に漏らしたとすれば大問題だが、やっていいことと悪いことの違いがわからなくなっているということだろう。政府の無政府状態こそが安倍政権の集大成と言える。あとはこの状態がいつまで続くかということである。そしてそれは国民の審判にかかっている。
それはある唐突なTweetから始まった。
知らない番号で私の携帯に着信。一昨日の夕方。
— 蓮舫・立憲民主党(りっけん) (@renho_sha) November 22, 2019
「蓮舫さんの携帯ですか?」で始まる留守電には、その方の名前と会社名と肩書に続いて「お話したいことがあります」とありました。
「桜を見る会」に飲食物を提供する業務を担う会社CEOから、でした。
私はこの方を存じません。携帯も伝えてません。
よくわからないのだが、飲食物を提供する会社のCEOから電話がかかってきたという。携帯電話の番号は伝えていないそうだ。また別のTweetからCEOの奥さんが安倍昭恵夫人と懇意にしていたということも分かった。蓮舫議員は内閣府とこの問題について協議を始めており、質問内容を知っているのは内閣府のごく限られた人たちだけだったと主張している。
Tweetからわかるのはここまでである。だが背景が全くわからない。
まず、CEOがこの問題について蓮舫議員に連絡を撮ってきたのかがわからない。「内部情報を提供」というわけでもないのだろうから「追求をやめてくれ」という話だったのかという気もしてくる。ニューオータニは炎上状態になっているのでそれを恐れたのかもしれない。協力した歌手ケイ潤子さんの元にも取材がいったようだ。過去も、安倍政権は守られても周辺の人たちはひどい目にあってきている。例えば籠池理事長夫妻なども世間からは袋叩きにあった。
一方で、蓮舫議員がなぜこの時点でこれを公にしたのかもわからない。話を聞きに行って「業者からしか取れない情報」を取っても良かったはずである。この時点で「漏洩した!」と騒いでしまっては内閣が「漏洩はなかった」という証拠固めができてしまう。このことから蓮舫さん側も「意外だ」というあまり冷静でない気持ちがあったことになる。
蓮舫さんが「気持ちが悪いな」と思った気持ちはわかる。蓮舫議員のTweetを見て行くと、そもそも蓮舫議員が求めていたのは公文書でありその公文書の先にある業者の諸事情ではない。つまり業者を追求するつもりはなかったのである。
このことから内閣府の人たちが「蓮舫さんがうるさく突いていてバレたら世間から君たちが叩かれるぞ」とほのめかしたのではないかという気もしてくる。逆に「俺たちでは内閣府の不正は言い出せないから業者発だということにしてくれないだろうか」と頼んだのかもしれない。だが、実際に何があったのかはわからないし今後それがわかることもないだろう。
これがニュースになっているのだが、Twitterなしでこれを見ても何がなんなのかさっぱりわからない。なので「なんだかよくはわからないが政府(内閣)が何か後ろ暗いことをやっているんだろうなあ」くらいの印象で終わってしまう。政府も信頼されないしかといって安倍政権が壊れることもないというとても宙ぶらりんな状況になっている。自民党が信頼されていないことは当事者にもわかっていて国民投票法案改正の先送りも決まった。
実は情報情報漏洩は事前にも起きている。森裕子議員の質問内容が漏れたとされており、地方創生大臣が「事実なら責任を取る」と明言したが結局この時もうやむやになってしまったようだ。ただこの時は「政治で飯を食っている」人が漏洩先だった。つまり玄人同士の喧嘩だったのだ。
森さんの件の背景を調べたら時事ドットコムの記事が見つかった。もともとは意味があるルールだったのだろうが形骸化が進んでいるようである。内閣の側にも説明しようという気持ちはなさそうだし、野党の側もチェックしてよりよい制度にしようという気持ちはない。国会議論は与党から見ると宗教儀式だし野党から見るとゲームなのだ。
- 事前通告は紳士協定。
- 形骸化していて直前に伝えることで失言を狙うゲームのようになっている。
- 十分な対応時間が取れないと官僚の働き過ぎにつながる。
- 質問内容が事前に漏れて世間から反発されれば野党の質問者が萎縮するだろう。
- 政府関係者から漏れたとすれば公務員の守秘義務違反になる。
時事ドットコムは書いていないが、口裏合わせの必要が増えており、また関係者も多岐にわたっている。政府関係者が安倍事務所の尻拭いのために言い訳作りに奔走させられていることもわかる。森さんの時も内閣府だった。もともと各省庁の寄せ集めだろうから「内閣府という組織に守られている」という安心感もないのかもしれない。いろいろな意味で官邸主導の弊害を感じる。もともと機動力を高めたいという気持ちで始まった官邸主導だが、日本人の持っている文化的背景(OS)ではうまく動かないのである。
戦略特区はその後ろ暗さから入念に準備をして突っ込まれないようにしていたのだろう。だが「花見くらい大目に見てもらえるだろう」という気持ちがあったのかもしれない。これも日本人が考える「晴れの日にはパッとやりたい」という文化的背景から説明ができる。だがそれは通らなかった。
いずれにせよ安倍政権に協力してくれる業者は減ってゆくだろう。何かあれば大きな災難に巻き込まれてしまうからである。そして有権者がこの政権を変えようと思わない限りこの類にパニックはしばらく続くのではないかと思われる。