先日NVIDAの決算が発表され日経平均は一時1900円の上昇を見せたそうだ。日本の株式市場が日本の経済状態を反映せずアメリカ経済に従属する変数になっている事がわかる。さらに円キャリートレードの定着も気がかりである。日本の低金利が続くと日本で円を調達してドルに変えて大儲けしたあとで円を戻すという動きである。国内投資機会が先細る中で日本は単に安い資金の調達先になっている。この状態が続くと円の価値が更に下がり国民は輸入物価の高騰に苦しむことになるだろう。
先日NVIDIAの決算が発表された。好業績だったために本日のニューヨーク株式市場では195ドルまで値上がりした。ところが投資家はおそらく「これ以上は値上がりしないだろう」と利益を確定させたようである。その後売りが膨らみ181ドルまで下がっている。
背景にある事情は複雑だ。
FOMCでは12月利下げを疑問視する声が相次いだ。また新規労働者増加は市場予測を超えたものの失業率がやや上がっているという不安定な内容だった。つまり、NVIDIAが主導するAI産業には陰りは見られないもののアメリカ経済の先行きに警戒感が出ている。
ところが日本の株式市場は、アドバンテスト(半導体検査装置)・東京エレクトロン(半導体製造装置)・ソフトバンクグループ(AI投資)などの株が異常に上がる状態になっている。これは日本経済の信認によって上がっているわけではなくアメリカ経済の従属変数として上がっている。そしてそれは実体経済ではなくAI産業という将来に対する信任だ。
一方、このところ「高市総理は日銀の利上げを許容しないのではないか」との声が上がっている。片山さつき財務大臣が円安に対して目立ったシグナルを送らなかったことで円が1ドル157円まで下落した。
日銀が金融正常化に動かなければ政府はこれまで通り日銀から事実上の財政ファイナンスを受けられる。しかし安倍政権下ですでに海外投資家は「日本で金利の安いカネを調達して海外で運用すれば儲かる」と学習してしまっている。
更に高市政権の補正予算案はインフレを加速させる可能性が高い。ロジックがいささか複雑なのでGEMINIに補強させてみた。太字が補強された項目だ。
さらに政府がインフレを加速させるタイプの大規模な補正予算を組むと、「財政規律が緩んだ」とみなされ、将来のインフレ高進への懸念(期待インフレ率)が高まることになる。短期金利は低いままでも、期待インフレ率の上昇と財政リスクの増大を反映して長期金利が上昇する。しかし、この長期金利の上昇は、国内の期待インフレ率の上昇に相殺されるため、海外との実質金利差は縮まらない。結果的に円安は是正されず、輸入品の物価も上がる。
逆に高市政権が、
- インフレを抑止させるタイプの大規模な補正予算を組み
- 国の稼ぐ力を回復させる
のであれば、この懸念は当たらないということになる。
国の稼ぐ力を回復させるための方法は2つに分解される。少子高齢化を防いで労働力を増やすことと国の知的インフラを再構築して企業の稼ぐ力を後方支援することである。
しかしながら高市総理の成長戦略は憲法制約からこれまでなかなか手を付けられなかった「国防産業の支援」の色彩が強くアメリカ経済への従属を加速させる既成長産業への追加支援の色彩が強い。結果的に「日本の稼ぐ力」が回復しないため長期金利の上昇は、国内の期待インフレ率の上昇に相殺されることになる。
おそらく一番の問題点は地方の衰退に手当をしないままで「アメリカ経済への従属変数化」を進めているという点だ。おそらくそれを説明しても理解できる人は殆どいないのではないかと思う。
国民民主党はおそらく経済成長についてきちんとした見識を持っているが「共通言語」がないために自民党、立憲民主党、維新、公明党などと共通認識を作ることができてない。玉木雄一郎氏は複雑な説得を諦めてとにかく易きに流れる傾向がある。
自民党は公明党に配慮して児童手当の拡充を表明している。これは経済対策=支持基盤をつなぎ止めるためのバラマキと理解されていることを意味している。
仮にアメリカ経済が堅調であれば「アメリカ経済への従属」も悪いことではないのかもしれないが、これさえも不安定化しているのが気がかりだ。
