共同通信の世論調査が発表され高市総理に対する支持が伸びていることが確認された。支持率が伸びている理由は2つある。1つは最も安上がりとみなされている日米同盟を国民の追加負担なしで維持すると約束した点。もう1つは経済対策に対する漠然とした期待感だ。ポイントは国民は高市政権に協力するつもりはないという点にある。問題を直視することなく誰かがなんとかしてくれることを期待している。
共同通信の世論調査によると支持率は前回10月の調査より5.5ポイント上昇し69.9%だった。防衛力強化のための防衛費増額方針には60.4%が賛成している。増税はしないと言っているので「増税なしで最も安上がりとみなされている日米同盟が維持できるなら少しくらい防衛費を増やしてもいい」と考える人が多いのだろう。
また物価高対策に期待している人が69.6%いる。まだ何も出ていない段階なのにこんなに高いのかと思うが、おそらくまだ何も出ていないからこその数字なのだろう。
左派的傾向がある共同通信は政治とカネの問題への対応が遅いというネガティブな評価を冒頭に掲げている。これは立憲民主党が物価高対策とともに重点課題にしている項目である。
しかしこのネガティブな評価は支持率とは連動していない。ここから、有権者は政治とカネの問題にはさほど興味がないことがわかる。有権者は不機嫌になっている時、または追加支出に対してい漠然とした不安を持っているときにはこの問題を持ち出す。つまり政治とカネの問題は不支持を正当化するための装置としてのみ機能している。
現在、政府は物価高対策をまとめているが、最初のリアクションは「決め手にかける」という反応だった。更にその奥には物価高対策がインフレを招きかねないという構造的問題がある。
片山さつき財務大臣は当初の17兆円という金額は日に日に膨らんでいると言っている。少なくとも維新に花を持たせる必要があるため、21日にまとまるまでの間に更に経済対策が膨らむことが予想される。
そもそも日本人の負担はどれくらい増えているのだろうか。
GEMINIにざっと計算させてみせたところ普通の世帯で10万円ほどの負担増になっているそうだ。勤労世帯は賃金の上昇によって負担がカバーされているはずなのだが賃金上昇が追いついていない。また年金世帯はそもそも賃金上昇が起こらない。現在想定されている補填額は5万円程度とされておりおこめ券に代表されるクーポンは1世帯で1万円程度とされている。
仮にマスコミに登場するエコノミストたちが高市政権を支援するならばメディアで露出が増えて支持率は上がってゆくだろう。国民はなんとなく負担が増えたなとは感じているだろうがそれを言語化できているわけではない。テレビや新聞が「効果がある」といえば「ああそうなのかな?」と考えるだろう。
しかし仮に今回の経済対策を冷笑している人が多ければ「国民の負担」を可視化し「今の財政出動ではまだまだ全く足りない」という雰囲気も作られかねない。これまでの政局報道とは異なり数字で比較ができてしまう。
高市内閣の経済諮問団に入っている人たちは安倍政権のポジションで食べている人たちであるという評価もあり蚊帳の外に置かれたエコノミストたちは高い支持率のもとでの過度な批判は避けつつも「少し距離をおいた」対応を取っている。
片山財務大臣は繰り返し「責任ある積極財政」を提唱している。また高市総理大臣とその経済ブレーンたちはアベノミクス継承の観点から日銀の積極的な金融政策に期待し続けており利上げが起こりにくい環境だ。
つまり円安を通じてさらなる物価高を招きかねないという構造的な問題もある。これが「デフレ脱却」重視ならインフレ加速のリスクもの意味合いだ。
今回の台湾有事問題を通じて高市内閣に対する懸念が明らかになった。高市政権は極端な対応を望むが現実的対処能力がない支持者に囲まれている。
高市総理の発言には戦略性がなく、さらに危機管理能力もあまり高くない。このため中国が一方的に「渡航を控えるように」と状況をエスカレートさせても、対応するカードも、とりなす人脈もない。
さらに支持者たちも問題解決にはさほど興味がないようだ。このため「中国から人が来なくなって清々した、この際断交すべきだ」というような極論しか聞かれない。彼らが優先するのはあくまでも瞬間的なキモチの良さだけなのだ。
彼らが頑張って日本経済をもり立ててくれるならそれもまた一つの覚悟なのだろうが、おそらく自分たちが頑張って経済をもり立てるというような気概は持っていないだろう。
実際に彼らと話しをしていると、例えば議論を通じてコミュニティに貢献するというフレーズが通じない。コミュニティという言葉の意味もわからないし、貢献という考え方もない。一方で個人の勝ち負けや誰が強くて上なのかという比較優位性には極めて鋭敏に反応する。つまり政治をゲームとして捉える傾向が強い。
このように高市内閣は「進んで貢献してくれる人」や「主体的にコミットしてくれる」人がいない内閣になっている。このため中国の断交騒ぎも「これは結果的に日本に取っていいことなのか悪いことなのか教えてくれ」と受け身で考える人が多い。そもそも自分たちで状況を積極的に良い方向に持ってゆこうとは誰も考えないのだ。
高市総理が引き継いだのは結局のところ「政治がなんとかしてあげるからあなた達は何も変わらなくていい」というメッセージに安心していたい人だけなのだということになる。
