高市総理の不用意な台湾有事の発言の影響が永続化しそうだ。背景にあるのが中国の経済状況である。脱デフレを政権目標に掲げる高市総理は日中関係を戦略的互恵関係(プラスサム)に持ち込む必要があったが、戦略的に稚拙なため失敗した。今後はゼロサムゲームが縮小均衡に陥らないようにマネージする必要があるが個人的には「高市さんのあの性格上それはムリだろう」と思う。そもそも本人が失言マシーンだからである。
当ブログはかつてゲーム理論に関心を持っていた時代があった。しかしこのときには「そのロジックが正しいのか」を検証する手段はなかった。ところがAIの登場でロジックを検証することができるようになり、政治問題への理解を深めることができると実感している。
さて、中国経済が落ち込んでいるというニュースがあった。製造業の景況指数が8ヶ月連続で50を割り込んでいたがこれがついに非製造業に及んだ。製造業はトランプ関税の修正により僅かにプラスに転じたことからトランプ関税の影響がかなり強かったことがわかる。
この問題を突き詰めてゆくと中国がいかに強く外需に依存していたのかがわかる。中国政府は中国経済を内需依存経済に転換したいがうまく行っていない。問題の背景にあるのは問題の背景にあるのは地方政府の債務問題(地方政府融資平台(LGFV)の負債爆弾)だ。1990年代に始まり、2008年のリーマン・ショック処理で常態化、さらにこれが2020年代に深刻化している。
恒大集団が破綻したのは2020年だった。このときには不動産業界が国家経済の約3分の1を占めていたそうだ。資本主義の常識で考えると中国の金融市場にはリーマンショックのような壊滅的な影響が出そうだが、中国の金融市場が破綻することはなかった。だが実はこれは幸運ではなかったということになる。経済はデフレ(つまり縮小均衡)に向かっている。
さらに中国では少子高齢化が始まっていて、日本が30年かけて経験してきたことを一気に経験しつつあるといえるだろう。よく中国の日本化などと表現される。
今回、自民党と維新の連立が成功する条件として、AIは日本はゼロサムからプラスサムに転換する必要があると指摘した。これが高市総理の成長戦略の肝である。しかしフリーライダーを温存し続けたことで転換のための初期コストを支払いたいと考える人がいない。長年の経験から初期コストがフリーライダーに転移してしまう恐れがある。過去の自民党政治の教訓からこれは「ほぼ確実」だ。
同じことを心理学的に「日本人には変わりたくない気質がある」と置くこともできるが制度的に展開したほうが解決策が導き出しやすい。
AIはこの均衡点を変えるために「維新」を評価しているが、別にこれは維新でなくても構わない。アメリカからのガイアツでもグレートリセットとしての戦争でも別にゲームルールが変化すればそれでいいわけである。
今回のニュースから今の中国が「ゼロサム状態」にあるということがわかる。しかしながら中国の権力闘争は密閉されているため表面化しにくい。こうなると中国は外に問題を作り出すことでこの圧力をかわしたいと考えるようになるだろう。つまり、日本がいくら「関係修復」を求めても中国にはその動機がないことになる。そしてこれは構造問題なのだからおそらく自然に条件が変わることはなく、ある程度状態化するだろうと予測できる。あるいは永続化してしまうのかもしれない。
高市総理の就任時の中国には日中関係を「相互的互恵=プラスサム」にする選択肢と「ゼロサムの維持」に利用するという選択肢があった。高市総理の不用意な発言(支持者たちは立憲民主党が悪いと言うだろうが)は結果的に中国に「ゼロサムの維持」の選択を強制したと言ってよい。
日本の高市支持者もまた強いゼロサムマインドセットを持っているという点は注目に値する。おそらく中国の経済がうまく行っていないというニュースは彼らのゼロサムマインドを刺激するだろう。いわゆるメシウマの感覚である。
つまり現在の不毛な日中関係はどちらも対立をゼロサムの維持に利用したいという思惑を刺激している。今後我々が注力すべきなのは「戦略的互恵関係の復活」ではなく、ゼロサム状態が縮小均衡に陥らないように損害を防ぐための努力なのかもしれない。
なお冒頭で触れたように、経済がゼロサムから少子高齢化に向かう縮小均衡中国には激しい権力闘争の動機がある。これが表面化していないのは権力闘争が中国共産党の内部で密閉されているからである。密閉されているものが徐々に壊れることはないのだから、問題は爆発的に表面化する可能性もあるだろう。
つまり日本はゼロサムが縮小均衡に陥らないようにマネージするのと同時に中国の暴発にも備えなければならないことになる。つまり本当に台湾有事が起きる可能性は僅かではあるが残されているだ。
